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日本の暗号資産取引所が絶滅危機。販売所スプレッド広い問題に金融庁メス

2025年11月26日、金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ(第6回)」が開催されました🏦

このワーキンググループは暗号資産制度の見直しを行う有識者会議で、今回の第6回が最終回です。

最終回では、後日ワーキンググループから金融担当大臣に提出する報告書案が公開され、議論されました。

この記事では、第6回の内容と委員の意見をまとめます。

まずは配布資料を紹介します。

(資料1)セキュリティ強化に向けた取組み

日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)が作成した「セキュリティ強化の業界の取組み」をまとめた資料です。

資料1

(資料2)暗号資産業界の取組み姿勢

暗号資産業界3団体が作成した「暗号資産を安心・安全な金融資産にするための業界の取組み」をまとめた資料です。

資料2

(資料3)報告書案 最重要

金融庁が作成した「暗号資産制度見直しの審議の結果」をまとめた報告書です。

資料3

目次
Ⅰ はじめに
Ⅱ 暗号資産の取引の現状と課題
Ⅲ 求められる対応

 1.規制見直しに当たっての考え方
 2.根拠法令の見直し
 3.情報提供規制
 4.業規制
 5.暗号資産取引に係るリテラシーの向上等
 6.サイバーセキュリティに関する取組み
 7.市場開設規制
 8.不公正取引規制
Ⅳ おわりに
Ⅴ 参考資料

以下に、資料3の「Ⅱ 暗号資産の取引の現状と課題」と「Ⅲ 求められる対応」の内容を説明します。

目次

Ⅱ 暗号資産の取引の現状と課題

以下は暗号資産取引の現状です。

  • 国内取引所の口座数 1300万超
  • 口座残高 5兆円以上
  • 保有者の約7割が年収700万円未満
  • 個人の8割以上が預かり資産10万円未満
  • 暗号資産の保有率はFXや社債より高くなっている
  • 世界ではビットコインETFへの資金流入が続いている
  • 国内機関投資家も投資意欲が高まっている

一方で、金融庁の相談室には月平均350件以上の暗号資産の苦情相談等が寄せられており、暗号資産には詐欺や投資勧誘のトラブルが多く、犯罪収益の移動手段として利用されたり、ハッキングで暗号資産が流出する懸念が存在します。

そこで金融庁は、国民が安心して暗号資産を取引できるようにするために、次の5つの課題を挙げました。

① 情報提供の充実

暗号資産の正しい情報をもとに国民が投資判断できるようにします。

② 適正な取引の確保・無登録業者への対応

無登録業者による詐欺的な勧誘で、国民がお金をだまし取られれないようにします。また、個人のリスク許容度に見合った無理のない範囲で取引が行われるようにします。

③ 投資運用等に係る不適切行為への対応

悪質な投資セミナーやオンラインサロンなどの不適切行為で、国民がお金をだまし取られないようにします。

④ 価格形成・取引の公正性の確保

価格が正しく決まり、不正に操作されないようにすることで、国民が安心して取引できるようにします。

⑤ セキュリティの確保

交換業者がサイバー攻撃を受けて、国民の暗号資産が流出しないようセキュリティを高めます。

Ⅲ 求められる対応

1.規制見直しに当たっての考え方

規制見直しで気をつけるべき点として以下を挙げています。

  • 規制強化によって事業者に過度な負担が生じ、結果的に利用者の利便性が損なわれることにならないよう、利用者保護とイノベーションの両立を図る
  • 暗号資産はグローバルに取引されているので、外国の規制動向を踏まえた規制にする
  • 暗号資産の技術やビジネスは変化が速いので、柔軟性のある規制にする

なお、世界と比較した日本国内の取引量はごく一部と限られていることと、価格形成や流動性の中心はオンチェーン取引にあることから、規制で暗号資産取引のすべてを健全にすることはできず、規制しきれない領域は残ることを認識すべきであるとしています。日本だけで規制しきれない領域は、外国の規制当局と連携を図りながら対応を検討していきます。

2.根拠法令の見直し

根拠法令とは、ルールや制度の根本となる「もとになる法律」のことです。

2025年現在、暗号資産の根拠法令は主に資金決済法であり、暗号資産を利用した金融商品(例:暗号資産のデリバティブ取引)に関しては金融商品取引法(金商法)で規制されています。

今回の規制見直しによって、暗号資産の課題は金商法が対処してきた課題と親和性があるという理由から、暗号資産は金商法で規制することになりました。

これにより暗号資産は金融商品の仲間入りをし、税制は他の金融商品と同じ申告分離課税(税率一律20%)になります。

さらに、暗号資産を原資産としたETFの組成が法的に可能になり、金融庁が承認すれば日本初のビットコインETFやイーサリアムETFが誕生します。

金商法には金融商品を保護するための規制が充実していて、たとえば、情報開示義務、不公正取引の規制、未登録業者の排除、証券取引等監視委員会による監視などがあり、暗号資産にもそれらが適用されることになります。

暗号資産には収益の分配を受けるなど法的な権利は何もなく、性質が有価証券とは異なるため、金商法での暗号資産は有価証券とは異なるアセットクラスとして規制されます。

3.情報提供規制

情報提供規制は、暗号資産の発行者や交換業者に対し、投資家に必要な情報を正しく伝えることを義務付ける規制です。

暗号資産の発行者・専門家・利用者間の情報の非対称性(情報の格差)を解消するために、発行者と交換業者には、取扱い暗号資産の仕様・商品性・リスクなどの情報を分かりやすいかたちで利用者に提供する義務が課されます。また、比較しやすいようにフォーマットを統一したサマリーを提供します。

暗号資産は中央集権型と非中央集権型に分類され、ビットコインなどの非中央集権型の暗号資産の情報提供義務は交換業者が負うことになります。

中央集権型とする判断基準は、発行 or 移転 or 仕様を管理する主体が存在するかどうかです。

なお、発行者が知人や関係者などの少人数に販売する場合、相手がプロ投資家なら高度な知識があるため、情報提供義務は免除されます。ただし、少人数に販売された暗号資産が一般投資家に転売されることを防ぐため、一括譲渡以外の譲渡禁止や、プロ投資家以外への譲渡禁止といった転売制限が設けられます。

情報提供をするタイミングは、暗号資産は技術や仕様の変化が速いことから、暗号資産の取引判断に重大な影響を及ぼす事象が発生した場合には、”適時”の情報提供が義務付けられます。

一方、”定期”の情報提供は年1回です。

情報提供を実施する場所は、発行者のウェブサイト、交換業者のウェブサイト、自主規制機関のウェブサイトの3つすべて

情報は時系列に表示。フォーマットを標準化して比較可能にし、将来的に利用者がAPIを通じて情報を取得できるようにします。

中央集権型から非中央集権型に移行した暗号資産や、交換業者が取扱いを停止した暗号資産は、情報提供義務が免除されます。

情報提供の正確さ・客観性を確保するために、情報提供義務者が虚偽記載や不提供をした場合の罰則、損害賠償、課徴金制度を設けるのと、第三者によるコード監査や独立組織による審査などチェック機能を強化します。

4.業規制

業規制は、事業者の業務に対して定められる規制です。

暗号資産には第一種金融商品取引業に適用される規制と同様の規制を適用することになりました。現在、自主規制で義務付けられている規制のうち普遍性の高いものは法令レベルに引き上げられます。

以下は業規制の個別論点です。

兼業規制

暗号資産交換業者が他の事業を行う場合は、他業のリスクが本業の利用者に影響することのないよう、行政による事前チェックを行います。ただし、暗号資産交換業に付随する業務は届出なしで行うことができます。

業務管理体制の整備

現行法の業務管理体制には、犯罪の疑いがある取引を停止する体制がありますが、さらに以下の体制が追加されます。

  • 取扱う暗号資産の審査
  • 取扱っている暗号資産の情報提供
  • 顧客適合性の確認
  • 売買審査(取引監視)
  • 情報提供違反時の取扱い停止

今回特に注目されたのは、金融庁が暗号資産の販売所について、以下の指摘をしたことです。

また、交換業者の中には、『販売所』と『取引所』の2種類の形態によって暗号資産の売買等のサービスを提供する交換業者も存在するが、『取引所』形態での取引より『販売所』形態での取引の方が交換業者にとって収益性が高いため、顧客に対し『販売所』での取引を誘導しているのではないかとの懸念も指摘されている。金商法においては、最良の取引の条件で顧客の注文を執行するための方針及び方法を定めて実施する最良執行義務が設けられており、そうした観点から、交換業者においては顧客へのサービス提供が適切なものとなっているか検討されるべきである。

報告書「業務管理体制の整備」

暗号資産取引所には、ユーザー同士で売買する『取引所』と、運営会社を相手に売買する『販売所』の2種類があり、販売所はスプレッドが非常に広いことで有名です。

スプレッドとは、買い値と、売り値の差額のことで、この差額が取引所の収益になります。

例えば、ビットコインの取引所の価格が1350万円でも、販売所で買うと1400万円、売ると1300万円のようになっていて、ビットコイン1枚を買ってすぐ売ると、一瞬で100万円の損失が確定します。アルトコインのスプレッドはもっと広く、値動きが激しくなると、さらにスプレッドが拡大します。

暗号資産取引所のアプリは販売所に誘導されやすいインタフェースになっていて、初心者がよく販売所で暗号資産を購入し、あとで後悔をしています。

金商法では、業者は顧客の注文を最良の取引の条件で執行することを求める「最良執行義務」が課されており、今後、販売所のスプレッドが規制される可能性が出てきました。

初心者がカモられる心配がなくなることは喜ばしい一方で、実は交換業者にとっては死活問題です。

ブロックチェーン協会代表によると、現在29社ある交換業者のうち黒字企業はわずか2~3社で、ほぼ存続できない状況に陥っているそうです。また、交換業者の中には営業収益の7割以上を販売所の収益に依存している業者もいます。

このように、販売所スプレッドが多くの取引所の生命線になっているなか、規制強化で運営コストが大幅に増えるだけでなく、スプレッド規制が導入されれば、事業が継続できずに倒産する交換業者がバタバタ出てもおかしくはありません。

事業継続のために、取引手数料や出金手数料が大幅に引き上げられることも考えられます。

利用者財産の管理

最近の不正流出事件の手口が巧妙化していることを踏まえ、利用者財産の安全管理の義務を定め、サプライチェーン全体を含めたセキュリティ強化を行います。

具体的には、交換業者に重要システムを提供する業者に対しては、行政への事前届出とシステムの安全性確保を義務付け、必要に応じて行政が直接監督・命令を出せる権限を設けます。

責任準備金

責任準備金とは、将来発生する支払い(債務や補償)に備えて、あらかじめ積み立てておく資金のことです。

現行法では、ホットウォレットで管理している暗号資産は、ハッキングによる顧客資産の流出に備えて補償原資を確保することが義務付けられています。

一方、コールドウォレットで管理している暗号資産にはそのような義務はありませんが、流出リスクはゼロではないので、補償を適切に行うための責任準備金の積み立てを行うルールに変わります。

流出事件が発生した場合は、行政の承認を得ずに責任準備金により補償を行えるようにするのと、保険加入による補償原資の確保を認めることも検討されます。

退出時における顧客財産の適切かつ円滑な返還

交換業者が破綻した場合などに顧客財産の移管や返還が適切かつ円滑行われるように規制を整備します。

仲介業規制

暗号資産取引の仲介を行う「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」は、金商法の金融商品仲介業の対象になります。

暗号資産の借入れ

暗号資産レンディングが金商法の規制対象になります。

暗号資産レンディングは、顧客から暗号資産を借り入れて運用し、一定期間後に利息をつけて返すサービスです。

現行法では、暗号資産レンディングは交換業ではないため、交換業ではない業者もサービスを提供することができ、海外運用で年利10%以上の高利回りレンディングサービスを提供している日本企業がいますが、規制によって今までの高利回りモデルは継続が困難になる可能性があります。

以下は具体的な規制内容です。

  • 再貸付先企業の貸倒れリスクに関する管理体制の整備
  • 顧客から借入れた暗号資産のうち、自社で保管する分の安全な管理体制の整備
  • 顧客へのリスク説明と広告規制

銀行・保険会社やそのグループにおける取扱い

銀行・保険会社本体による暗号資産の発行・売買・仲介については、マネロンリスク・システムリスク・価格変動リスクや、顧客がリスクを精査せずに買ってしまう恐れなどを理由に、現時点では認めず、規制が整備されて利用者保護が充実してから対応を検討することになりました。

投資運用業は、現行法において一律に禁止されていることから禁止となりました。

一方、銀行・保険会社本体による暗号資産の保有については、「分散投資の手段を提供する観点等から、十分なリスク管理・態勢整備等が行われていることを前提に、投資目的での暗号資産の保有を認めることが考えられる」としました。

銀行・保険会社の子会社には、暗号資産の発行・売買・仲介・投資運用業・投資目的での暗号資産の保有を認めることになりました。

無登録業者への対応

無登録業者の違法な勧誘を抑止するため、以下を整備します。

  • 金商業の対象とすることで刑事罰を強化
  • 無登録業者が暗号資産交換業を表示することを禁止
  • 裁判所による緊急差止命令
  • 証券監視委員会による緊急差止命令申立権限と調査権限
  • 民事効規定を創設する

ちなみに民事効とは、行政法や刑法の違反が、民事の世界にも効力を持つことをいいます。無登録業者による違法行為があった場合に、利用者が民事で契約取消しや損害賠償を請求しやすくなります。

投資運用等に係る不適切行為への対応

暗号資産の投資運用や投資アドバイスを投資運用業および投資助言業の対象とします。

支払手段としての利用者被害の未然防止

交換業者の利用者がアンホステッドウォレットや無登録業者のウォレットに暗号資産を移転する場合に、詐欺可能性の警告、移転目的の確認、取引モニタリングを行います。新規口座には一定の熟慮期間を設けます。

海外の無登録業者への対応

現在は海外無登録業者が日本居住者向けに暗号資産の勧誘をしている場合、行政による警告、アプリストアへの削除要請を行っており、その対応を引き続き行うとともに、外国当局との調査協力の強化を行います。

現在の金商法では、外国証券会社が勧誘することなく日本居住者からの注文を受けることは認められており、暗号資産取引も同様のルールを整備します。

DEX 等への対応

現在、DEX(分散型取引所)の明確な規制方法は確立されていないので、各国の規制動向を見ながら、継続して検討を行います。

5.暗号資産取引に係るリテラシーの向上等

利用者の慎重な取引を促す方策

利用者が暗号資産のリスクと商品性を十分に理解し、リスクを許容できる範囲で取引を行うことができるように、交換業者に以下が義務付けられます。

  • 価格実績や将来予測を強調するなど、投機を誘引する表示を禁止
  • 顧客のリスク負担能力を確認する。
  • 顧客の取引開始基準や保有限度額の設定と運用を徹底する。

DEX や海外無登録業者での取引に係るリスク周知

DEXや海外無登録業者で取引を行うと不測の損害が生じるリスクがあることを行政や交換業者が周知します。

金融リテラシーの向上に向けた方策

行政、交換業者、金融経済教育推進機構(J-FLEC)が利用者に対して以下の啓発を行います。

  • 暗号資産は価格変動のリスクが大きい。
  • 取引の歴史が浅く、価格評価の手法が確立されていない。
  • 誤送金など、操作を誤ると取り戻せないリスクがある。
  • 交換業者から暗号資産が流出すると、利用者が資産を失うリスクがある。
  • リスクと商品性を十分に理解し、余裕資金で取引をすること。

6.サイバーセキュリティに関する取組み

攻撃者は常に高度化し、技術革新によって交換業者のシステムも変化することから、法令ではセキュリティ体制確保の義務付けにとどめ、具体的な技術や運用の要件はガイドラインで定めることで、環境変化に柔軟に対応できるようにします。

サイバーセキュリティ対応は、自助・共助・公助で対処すべき課題であり、金融庁はこれまで、ガイダンスの提供、モニタリングの実施や演習などの公助の取組みを進めており、今後も進めていくのと、JPCrypto-ISACなど情報共有機関が適切に機能することを後押しいていくべきとしています。

7.市場開設規制

市場開設規制は、特定の市場を開設・運営する際に、国が業者に課す許可・ルール・監督の規制です。つまり、市場を作っていいのは許可を受け事業者のみで、運営するには厳しいルールを守る必要があります。

現在、暗号資産(現物)取引には市場開設規制が存在しませんが、顧客同士の注文をマッチング(板取引)する方式を採用しており、これを市場開設規制の対象とすべきか議論がありますが、暗号資産の価格形成は対象資産の性質に依存しており、金融商品取引所のような厳格な市場開設規制を課す必要性は低いとしています。

金融商品取引所が暗号資産(現物)を上場することについては、取引所が顧客資産の流出リスクを負うことになり、有価証券やデリバティブ取引市場の運営に重大な影響が生じかねないため、慎重に考えるべきとしています。

8.不公正取引規制

不公正取引規制は、インサイダー取引や相場操縦、風説の流布など、投資家に不利益を与える不正な取引行為を禁止・制限する制度です。

インサイダー取引規制

規制の方向性

規制対象の暗号資産の重要事実に接近できる特別の立場にある人が、重要事実が公表される前に、自己の利益や損失回避を目的に対象暗号資産を売買することが禁止されます。

規制対象とすべき暗号資産

国内の交換業者で取扱われる暗号資産を規制対象とし、DEXや相対取引を含め、取引の場所を問わず規制対象となります。

取扱いが開始していなくても、取扱申請がされた段階で規制対象になります。

規制対象を明確にするために、「国内交換業者で取扱われている暗号資産」、「取扱申請があった暗号資産」の一覧を、自主規制機関が情報提供します。

重要事実

重要事実とは、投資判断に重要な影響を与えると客観的に認められる事実のことです。

具体的に、以下の3つは重要事実にあたるとし、想定外の事象にも対応できるようバスケット条項(包括規定)で補完します。

  • 中央集権型暗号資産の発行者の業務等に関する重要事実(例、発行者の破産、セキュリティリスクの発覚)
  • 交換業者における暗号資産の取扱い等に関する重要事実(例、新規上場、上場廃止、流出)
  • 大口取引に関する重要事実(例、大量売買)

規制対象者

以下の者を規制対象者として対象暗号資産の売買が禁止されます。

  • 「中央集権型暗号資産の発行者の業務等に関する重要事実」については、発行者の関係者
  • 「交換業者における暗号資産の取扱い等に関する重要事実」については、交換業者の関係者
  • 「大口取引に関する重要事実」については、大口取引を行う者の関係者

公表措置

公開措置は、重要な未公開情報を正式に公開し、投資家が公平に情報を得られる状態を作ることです。公開後はインサイダー情報ではなくなります。

公表方法は、交換業者および自主規制機関のウェブサイトに限り、自主規制機関においては、公表主体から通知された重要事実を速やかに公表できる体制を整備します。

禁止行為・適用除外

対象暗号資産の売買禁止に加えて、原始取得(新しく発行された暗号資産を発行者から最初に有償で取得する行為)も禁止となります。

適用除外については、上場有価証券等のインサイダー取引規制で規定されている適用除外のうち、暗号資産でも適用除外にすべきものを規定するのと、「重要事実を知らずに取引したことを行為者が立証した場合」を適用除外に追加します。

その他、利益を得させる目的等による未公表の重要事実の伝達・取引推奨が禁止されます。

その他の不公正取引規制

有価証券では、インサイダー取引のほか、風説の流布、偽計、相場操縦、安定操作取引などの不公正取引規制が整備されていて、暗号資産にも妥当するものは併せて整備されます。

具体例として「対価を受けてインターネットサイト等で取引判断に関する意見表示をする場合における対価を受ける旨の表示義務を暗号資産にも適用すべきである」を挙げているので、企業案件を受ける暗号資産の情報発信をしている人は影響を受けることになります。

暗号資産はグローバルに取引され、匿名性が高いため、不正行為のすべてを直ちに抑止することは限界があることを踏まえ、不公正取引の実態を継続的に把握し、追加的な対応を検討していくとしています。

課徴金制度・その他のエンフォースメント

エンフォースメント(取り締まり)の実行性を確保し、違反行為への抑止力を高めるために以下のすべきことが挙げられました。

  • インサイダー取引を含め不公正取引について課徴金制度を創設する
  • 証券監視委員会における犯則調査権限を創設し、体制の拡充を図る。
  • 交換業者による売買審査や、自主規制機関による市場監視体制について抜本的に強化する。
  • 暗号資産取引を外国規制当局との調査協力の対象とする。

資料の説明は以上です。

次に、委員の発言内容を要約します。

実際の発言全文(文字起こし)は以下のボタンから読めます。

岩下 直行委員

1.規制見直しに当たっての考え方

  • 暗号資産市場を実質的に形成しているのはグローバルかつ匿名のオンチェーン市場であって、国内で整備した箱庭のみでは全体のリスク構造を変えることはできないことを制度の前提として共有する必要がある。
  • オンチェーンとオフチェーンの重層的な取引による様々な不正取引の事象が多数確認されており、伝統的な金融機関が真摯にマネロン対策に取り組んでいることと比べて、暗号資産交換業者の対応が劣ることのないようにしっかり見ていくべき。
  • 暗号資産交換業者のプロモーションの中にはギャンブル的な投資行動を助長するものがあり、その結果、若年層を中心に投機と投資とが混同されている状態にある。この点について制度変更後の取引の監視と、制度へのフィードバックが必要である。
  • 不祥事や消費者被害が最も多く発生してきたのはICOやIEOの領域であり、リスクをしっかり考えた上で、安易に新規トークンを取扱うことを成長戦略のように考えずに、しっかりとした投資家保護の視点を持つ必要がある。
  • 規制が及ぶ範囲だけ的確に規制を課し、規制できない領域には過大な期待を与えないという姿勢こそが制度構築における最重要な原則である。
  • 今回の制度整備が「お墨付き」と誤解されるリスクは依然として大きく、報告書案の総括「制度の限界、制度外領域の残存リスク、過大な期待を与えない」という表現は引き続き堅持すべき。
  • 暗号資産市場は、制度がコントロール可能な領域と、原則的にコントロールできない領域とが明確に分かれている市場であり、構造的な実態を正直に示して、制度の限界を隠さずに公表することこそが国民に対する誠実な対応であり、今回の報告書案はその方向性を概ね踏まえている。
  • 引き続き、制度の射程と限界を過小評価することなく現実的に意味のある議論を進めていくことが大事である。

松尾 真一郎委員

1.規制見直しに当たっての考え方

  • 今回のまとまった報告書は現時点での国際的な状況を勘案しても、もちろん今後の進展には柔軟に対応できることは当たり前として妥当である。
  • もし規制上重い、業界の存続に関わるという発言が出るのであれば、それは技術やエコシステムが未成熟だと言っているのに等しい。
  • 利用者保護とイノベーションはバランスではなくて両立することが基本である。むしろ両立できてこそイノベーションであり、このことを忘れてはいけない。
  • 現状の暗号資産は相続という極めて一般的な資産的手続きが困難であり、相続できない資産が国民の資産形成に資するものかどうかは十分に考える必要がある。

6.サイバーセキュリティに関する取組み

  • NEMの流出事案での最高裁の判断(流出NEMと知って受領した者も、盗品として受領したと判断)は法制度としては合理性があるが、技術設計の観点から言うと暗号資産プロトコルが本来想定していない価値判断を後付けで持ち込んだものであり、今後の制度整備では避けて通れないものである。
  • 「トランザクションが数学的に正しいこと」と「法的に正しいこと」が一致しない場合、プロトコル設計、鍵管理、所有権の概念とどこまで整合させるのか、法律と技術の双方で議論が求められる。
  • ブロックチェーンと暗号資産が誰でも安心して使えるようにするために、我々の生活のあらゆる場面で適切な鍵管理がなされることは、サトシが姿を消して本人が中央という存在でなくなり、ビットコインが今回の類型②になって以来、我々に残された宿題である。

小川 恵子委員

4.業規制

  • 暗号資産市場の健全性を担保する一つの枠組みとして「自主規制団体の監視機能」をもって説明することになるので、当局としても自主規制団体のガバナンス、監視体制、監視機能の有効性をしっかりモニタリングすること。
  • 自主規制団体は発展していく過程にいるため、リソースや体制面で制約があり、国を含めて他方面から必要な協力、公助、共助を推進し、金融市場の発展とともに、自主規制団体の大いなる発展を期待する。

5.暗号資産取引に係るリテラシーの向上等

  • 海外かつ非上場取引のものが大半を占める現状で、今後、増加が想定される投資家に対し、暗号資産投資のリテラシーの向上、これについての絶え間ない活動は引き続き極めて重要である。国、自主規制団体含め、社会全体の課題として継続的取り組むことに期待する。

1.規制見直しに当たっての考え方

  • クロスボーダーのリスク顕在化について、国際協調をもって監視し、協力して解決する国際的枠組みの進展に期待する。

有吉 尚哉委員

8.不公正取引規制

  • 暗号資産のセキュリティ欠陥やハードフォークなどの情報は、本来インサイダー規制上の「重要事実」や適時開示の対象になり得る。しかし、その情報を知るコミュニティの構成員は多くの場合、法令上の「規制対象者」に該当せず、結果として重要事実を知った状態で取引してもインサイダー規制が適用されないケースが大半になると理解した。この問題は対応が難しく、啓発や適時の情報開示の厳格化、不正行為の一般規制で対処できる場面もあるかもしれないが、実務的な検討を深めていく必要がある。特に不正行為の一般規制で何を規制するかについては、理論面も今後深く検討すべき。

1.規制見直しに当たっての考え方

  • 今回の取りまとめが、暗号資産にお墨付きを与えるものと誤解されないよう、十分に留意すること。報告書の概要資料や、金融庁がメディアで説明する際にも、この点を強調すべきである。また、税制見直しが進んだとしても、金融庁は暗号資産に対してお墨付きを与えるものではないという立場を明確に説明し続けることが重要である。

大槻 奈那委員

8.不公正取引規制

  • 国際的な整合性について、報告書中でも繰り返し強調されているとおり、各国との調査協力体制(相互主義)作りが重要であり、G20や新興国を含めて日本がリーダーシップを取って進めていくべきである。

4.業規制

  • 銀行の保有について、バーゼルの1250%リスクウェイトの見直しの可能性が報じられている中、金融機関が暗号資産を避けては通れなくなる将来像も考るべき。銀行がどういう形の運用体制を持てば投資をしてもいいとなるのか、金融庁と現場の方々と詰める必要がある。

暗号資産ETFについて

  • 機関投資家が今後最初に考える投資手段になると考えられるため、国際的な規制との整合性、投資家のニーズと合理性について十分考慮して実態に即するものにすべき。

Ⅰ はじめに

  • 「投資家」と「利用者」の用語を使い分けている点について、脚注3にあるように、基本的には「利用者」を用い、「投資家」は限定的に使うのはそれで良いと考えている。その意味合いが重要であり、これまでの議論では、暗号資産に対して投機対象・詐欺的・テロ資金などネガティブワードが沢山登場したが、今後の規制整備を通じて環境が改善し、リスクを理解した上で伝統資産の代替となる合理的な投資対象として暗号資産が位置付けられていくことを期待する。

Ⅳ おわりに

  • 報告書案の内容を法改正・省令・ガイドライン、自主規制機関の規律として設計する際には、交換業者の実務を踏まえ、持続可能なルール作りをお願いしたい。内容は非常に多岐にわたり、すべてを一度に実現するのは難しい。大勢の利用者が財産を投じているので、制度整備と運用の完璧さを急ぐあまり、市場が縮小しては本末転倒のため、利用者保護と取引環境整備の2つの柱を軸に、優先度の高いものから段階的に制度化していくべき。
  • 報告書案には重要な課題が積み残しになっている。例えば、客観性を担保するための第三者評価。オンライン取引における適合性原則の確保。暗号資産ETFを日本ではどう考えるのか。今回の規制整備が実現したのち、速やかに検討すべき。

永沢 裕美子委員

1.規制見直しに当たっての考え方

  • 金融庁として暗号資産にお墨付きを与えるわけではないという立場を、報告書だけでなく、あらゆる場面で示すべき。

6.サイバーセキュリティに関する取組み

  • 自助・共助・公助の観点で体制整備を進めることについて、自助・共助はもちろんのこと、公助を入れていくことに当たっては、ガバナンス・運営の透明性・説明責任を十分に果たすべき

4.業規制

詐欺は無登録業者によるものが大半と考えられ、無登録業者が闇組織に資金を流している可能性も指摘されており、放置すべきではない。無登録業者への罰則は「割に合わない」ようにしていくことが大事であり、懲役10年に引き上げる厳罰化をすべき。

松井 智予委員

Ⅳ おわりに

  • 今回の規制見直しは国内交換業者の通常取引を前提としているが、暗号資産は決済手段としても使われ、匿名性が高いことからランサムウェア支払いに利用される事もある。こうした大口決済への追跡性を高めるなど、FATFの観点からの規制が今後追加され可能性もあるため、本報告書が金商法に基づく範囲での整理であるという点を注記することも考えられる。

8.不公正取引規制

  • 匿名性の高い決済需要が金融商品の価値に影響する可能性は、現時点では深く考える必要はなく、本報告書の修正も特に要らないと考える。例えば、重要事実の公表前の売買禁止について、企業が匿名で大量の暗号資産を調達して決済に使うような状況で、取引情報の公表は実務的に難しく、また価値上昇は犯罪者への利益(ウィンドフォール)にもつながり望ましくない。また決済に必要な送金であることを証明できれば、重要事実とは無関係として適用除外になり得る。このように、引き続き場面を特定した上で詳細な解釈論というものを進化していく必要がある。

松尾 健一委員

4.業規制

  • 無登録で暗号資産取引の勧誘や投資助言を行う者への取り締まりを最優先で進めるべき。非富裕層が多い暗号資産市場では、詐欺的な取引に巻き込まれるリスクが非常に高く、最優先の課題として規制取締まりをすべき。厳罰化も提案されているが、人的資源の限界もあり、報告書にある民事効で無登録業者との取引は無効にし、一般市民からの責任追及、エンフォースに期待する。

河野 康子委員

Ⅱ 暗号資産の取引の現状と課題

  • 暗号資産は一般消費者にとって、名前は聞いたことがあるが技術や仕組みなど本質を理解していない暗号資産取引を行うには、適切な取引環境と利用者保護の整備は必須である。貯蓄から投資へと政策が後押しし、国民の投資の敷居が低くなっている状況では、この取りまとめはリスク認識を促す点で意義がある。
  • 「分野の発展を阻害しないようリスクテイクすべき」との意見もあるが、取引環境を整備し、不安や不信を解消することが、暗号資産の健全な発展につながる。

8.不公正取引規制

  • 最も期待しているのは、無登録業者による悪質な勧誘・詐欺被害への対処。暗号資産に限らず不正行為は以前から数多く発生しており、罰則強化や民事効規定の創設を強く求める。
  • 「簡単に儲かる」といった勧誘に騙されないように消費者側も一定のリテラシーを備える必要があり、金融庁・消費者庁とその関連機関、地方公共団体、日本暗号資産等取引業協会、日本ブロックチェーン協会、日本暗号資産ビジネス協会、各業界団体が先頭に立って啓発と情報提供を力を入れるべき。

Ⅳ おわりに

  • 今後も国際的な規制当局間で連携を図りながら今般の規制見直しについても適切にフォローアップし、不断の規制見直しを行っていくことが重要である。

佐古 和恵委員

2.根拠法令の見直し

  • 暗号資産の多くは実体経済と結びついた基礎価値がなく、期待、需給、ストーリーに基づいて価格が変動するため、どういう情報提供をすべきか分からず、投資性と整合しているかまだ腑に落ちていないが、金商法で扱うことで詐欺被害を減らすことが一番重要である。

8.不公正取引規制

  • 外国でビットコインETF等が上場されている中で、暗号資産の価格形成や取引の公正性を確保の重要性が高まりインサイダー取引規制が導入されるが、どういうものが規制対象になり、規制されないが不公正と評価されるものはどう対応していくのか、まだまだ見えない部分があるので、場合によってQ&Aなどの形を使って明確性を確保すべき

日本ブロックチェーン協会代表 加納裕三

6.サイバーセキュリティに関する取組み

  • コモディティ化された非競争領域は業界全体で標準化、協調を進める共助・公助の仕組みを整えつつ、ブロックチェーン由来の先端セキュリティなど、競争領域では自助による投資と市場原理による高度化を図るという二重構造のアプローチが重要である。
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