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業界激怒の暗号資産市場構造法案 全278ページを解説します

暗号資産は証券なのか?商品なのか?

その長年の混乱にアメリカがルールで答えを出します。

Digital Asset Market Clarity Act

直訳して、デジタル資産市場明確化法

略して、クラリティ法案

日本では、暗号資産市場構造法案と呼ばれています。

暗号資産市場構造法案は暗号資産の地盤を整える法案であり、内容によって暗号資産の未来をポジティブな方向に押し出すか、ネガティブな方向に追いやるかの分かれ道となります。

アメリカ発のルールが、世界標準になる可能性もあります。

アメリカ最大手の暗号資産取引所であるコインベースのCEOは、法案の内容に致命的な欠陥があると激怒して、法案の支持を撤回しました。その結果、暗号資産市場構造法案の審議は延期される事態となっています。

そこでこの記事では、米上院が提出した暗号資産市場構造法案(修正案)の全278ページの内容を分かりやすく解説します。

この記事の文章は読みやすさを意識した要約文であり、原文の直訳ではありません。正確な文章を確認したい方は原文を読んで下さい。

目次

法案の目的

この法案は、2025年に下院で提出され、審議・可決された法案(H.R.3633)をベースに、上院議員が「全文を削除して新しい内容に入れ替える」全面差し替え修正案です。

下院が提出した法案の名前
「Digital Asset Market Clarity Act of 2025」

上院が提出した法案の名前
「Digital Asset Market Clarity Act」

法案の目的は以下3つです。

(目的1)規制の整備

証券取引委員会(SEC)および商品先物取引委員会(CFTC)が、民間で行われるデジタル商品の勧誘・販売を規制するための体制を整備します。

暗号資産の販売形態や性質に応じて、証券か商品かを分類するルールを定義し、SECとCFTCのどちらで管轄するのかを明確にします。

(目的2)連邦準備銀行のサービス禁止

連邦準備銀行(FRB)が特定の製品・サービスを個人に直接提供することを禁止します。

デジタル資産の取引を念頭に、中央銀行が民間銀行を通さずに個人と直接取引するそのものを制限するのが趣旨です。

(目的3)中央銀行デジタル通貨の禁止

中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、中央銀行が発行するデジタル形式の法定通貨のことです。

CBDCは決済の効率化やコスト削減が期待できる一方で、政府による国民の監視やプライバシー侵害、民間銀行の弱体化を招く恐れが指摘されています。

こうした懸念から、トランプ政権は国民の自由を守るためにCBDCを金融政策で使用することを禁止する方向で政策を進めています。

第1編 証券イノベーション

(用語1)ネットワークトークン

ネットワークトークンは「分散型台帳システムで使用されることで価値が生まれ、システム運用に不可欠なトークン」のことを指します

ネットワークトークンは連邦証券関連法において「証券」とはみなされません。州政府が証券に近い独自のルールを課すことも制限されます。

また、二次流通市場でのネットワークトークンの売買は、発行者が関わる投資契約としての販売でない限り、証券取引にも該当しません。

ただし、以下のような権利を持つトークンは、ネットワークトークンとして認められません。

  • 出資・債務: 特定の個人や法人への出資(株)や貸付(債権)を表すもの
  • 配当・利息: 特定の運営主体から利息や配当、あるいは利益の分配を直接・間接的に受け取る権利
  • 清算権: 運営主体が解散・清算する際に、残った資産を分け合う権利
  • 投資会社の持分: 投資信託のような実体への持ち分

(用語2)付随資産

『付随資産(ancillary asset)』という用語はネットワークトークンを意味し、その価値が付随的資産発行者または関係者の企業家的な、もしくは管理上の努力に依存するものを指す。

プロジェクトがネットワークトークンを発行して投資家に販売し、投資家は将来の値上がりを期待して買う場合、この取引は「証券取引」と見なされますが、トークン自体は証券ではなく「付随資産」と呼ばれます。

デフォルトでは、ネットワークトークンは「付随資産」と見なされます。

ネットワークトークンに「付随資産」のラベルを貼ったようなイメージです。

プロジェクト初期段階は開発チームの努力によってトークンの価値が大きく左右されるので、投資家保護のために付随資産の発行者には情報開示が義務付けられます。

その後、十分に分散化され、特定の誰かの努力に関係なくトークンの価値が動く成熟期に入ったとSECに認められると、付随資産のラベルが外され「デジタル・コモディティ(デジタル商品)」として扱われるようになります。

なお、付随資産に規定違反があったとしても、それだけで証券とみなされることはありません。

(用語3)付随資産発行者

以下の条件のいずれかを満たす者は、付随資産発行者として情報開示義務が課されます。

  • 付随資産を最初に勧誘・販売・配布した者
  • 最初の配布から12か月間において、配布を実質的にコントロールしている者
  • 最初の配布者と共通の支配下にある者、または関係者
  • 最初の配布から12か月間に付随資産を最も多く受け取った者

プロジェクト創設者が表に出ず、別会社に配布をさせたとしても、結局は創設者が発行者として情報開示を義務付けられるという、逃げ道のない仕組みになっています。

(用語4)外国発行者

以下の条件をすべて満たす付随資産の発行者を「外国発行者」と呼びます。

  • 米国外で法人化・組織されている
  • 勧誘・販売・配布を米国外(または米国人以外)に対してのみ行っている。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は、外国発行者として認められず、米国の規制対象になります。

  • 外国政府
  • 所有者(株主や構成員など)を持たない組織
  • 運営・資本の実態が米国にある場合:
     ⇒所有持分の50%超が米国居住者に所有されている。
     ⇒役員や取締役の過半数が米国の市民または居住者。
     ⇒事業資産の50%超が米国内にある。(または米国の者が所有)
     ⇒事業の管理・運営が主に米国内で行われている。

実態が米国にあるなら、たとえ海外法人という形をとっていても、米国の規制からは逃れられないという、いわば、抜け穴封じの条件となっています。

(用語5)無償配布

無償配布は、特定の誰かとの交渉や裁量に基づかず、公開されたプログラムやルールに従って自動・公平にトークンを配布することを指します。

以下は無償配布と見なされる条件です。

  • ステーキング活動の報酬
     セルフ・ステーキング…自分でノード運用
     非カストディ型委託…運用は第三者、資産管理は自分
     リキッド・ステーキング…ステーキングの預り証トークンを受け取る
  • プログラムによる自動配布
     透明…オープンソース、事前の個別交渉なし
     自動…ネットワークへの参加・消費・貢献に対しプログラムで自動配布
     公平…配布量が貢献量に比例する
     市場原理…トークン価値が市場原理によって決まる
     非中央集権…いかなる者も発行ルールを勝手に変更する権限を持っていない 

透明・自動・公平に無償配布されるネットワークトークンは、それ自体は証券とは見なされません。

これにより、プロジェクトはSECに登録したり、情報開示をすることなくトークンを配布できるため、負担軽減につながります。

ただし、詐欺・相場操縦に対するSECやCFTCの執行権限は一切制限されず、不正行為は引き続き取り締まる設計となっています。

(用語6)投資会社

デジタル資産関連企業が「投資会社」に該当するかどうかを判断するときは、既存の1940年投資会社法の定義をそのまま採用します。

新しい業界であっても、既存の投資信託などと同じような『お金集めと運用』をしている企業に対しては、昔ながらの厳しいルールがそのまま適用されます。

(用語7)関係者

以下のいずれかに該当する者を付随資産の関係者といいます。

  • 創設者・初期メンバー
     創設者またはそれに準ずる立場で活動している者(または過去36か月間そうだった)
     かつ、発行済み付随資産の4%以上を実質的に保有している者
  • 経営幹部・大株主
     執行役員、取締役、受託者、ゼネラル・パートナーなど
     または、発行体の株式の10%超を保有している者(または過去12か月間そうだった)
  • 大量保有者
     付随資産の総発行量の10%以上を現在保有または過去6か月間に保有していた者
  • 特定のトークン保有者
     特定のトークン(第104条で定義)を、付随資産総量の2%以上を現在保有または過去6か月間に保有していた者

付随資産発行者は、関係者のトークン保有量や売却可能性などの情報を開示する義務があります。

付随資産の情報開示義務

開示義務の発生条件

投資家保護のために、付随資産には情報開示義務が課されます。

ただし、次のいずれかに該当すれば 義務は免除されます。

  • 初回配布後12か月の資金調達総額が500万ドル以下
  • 直近期間の1日平均取引額が500万ドル以下

つまり、規模や流動性が小さい付随資産には開示義務を課さないことにして、初期段階のプロジェクトの負担を軽減する設計になっています。

開示の開始

情報開示を開始する時期は、付随資産の募集、販売、配布を行う前、または、転売可能になる前までに最初の開示を完了させる必要があります。

その後は、半年ごとの定期開示を行います。

開示の内容

付随資産発行者は、大きく分けて発行者情報と付随資産情報の2つを開示します。

発行者情報は、以下15項目が規定されています。付随資産の価値が、発行者の努力にどの程度依存しているのかが可視化されます。

  1. 付随資産の開発に関する経験
  2. 過去の付随資産の配布履歴
  3. 開示対象期間中に行った、または今後1年間に行う予定の、付随資産の利用・価値・再販売を促進する活動
  4. 上記活動に要する想定コスト、その資金を賄える流動資金の有無、不足する場合の事業運営計画
  5. 分散型台帳システムまたは関連技術の利用経験
  6. 取締役会・経営陣の氏名と専門性、および当該期間中の人事変更
  7. 財務諸表
     - 公衆向け配布総額が2,500万ドル以下:独立会計士によるレビュー
     - 2,500万ドル超:独立会計士による監査
  8. 関与している訴訟・法的手続の概要
  9. 当該付随資産に特有のリスク要因
  10. 付随資産の保有状況
     - 発行者の株式等を10%以上保有する者
     - 経営陣・取締役が合計5%以上保有している場合
  11. 発行者と関係者との間で行われた重要な付随資産取引の概要
  12. 過去4年間の付随資産取引の年次集計
  13. 発行者または関連会社による付随資産の購入・取得
  14. CFO等による継続企業に関する誠実な声明
  15. 分散型台帳システムの開発状況とロードマップ

付随資産情報は、以下12項目が規定されています。付随資産の仕様やリスクを判断するための情報です。

  1. 付随資産および関連する分散型台帳の概要
     - 平易な仕組み説明
     - 用途・機能・手数料
     - 市場の状況
     - 競合する資産・サービス
     - 総供給量または発行ペース
     - ガバナンス・コンセンサスメカニズム(検証、変更、発行・焼却方法など)
  2. 関係者・投資家・従業員等への配布状況と、再販売制限等の重要条件
  3. 無償配布や条件付き配布の概要(総供給量の5%以上を受領した者の特定)
  4. 発行者自身の付随資産保有量
  5. 今後12か月間の開発計画
     - 支援継続・停止の方針
     - ネットワーク上の役割(ユーザー、開発者、検証者など)
     - 支配・権限行使の仕組み
     - 重要な運用上の依存関係
  6. 流動性・需要・価格に重大な影響を与えるリスク要因
  7. 可能な範囲での価格情報(主要3取引所に基づく平均価格、12か月高値・安値)
  8. 外部コード監査に関する情報
  9. カストディサービスに関する情報
  10. 知的財産権に関する主張または紛争
  11. 初期配布・取引に用いられた技術、ソースコード、技術要件
  12. 取引履歴を独立して検証するための手順

開示情報の中に機密性の高い内容が含まれる場合、付随資産発行者はSECに対しそれらを「機密扱い(非公開)」とするよう申請できます。

将来予測であることを明示し、十分な注意喚起を行っている限り、将来見通しに関する記述について責任は問われません。

開示の終了

付随資産発行者はSECに「付随資産が十分に分散化されたこと」を証明できれば、情報開示義務は終了します。

SECに以下の内容の認証書を提出し、承認されれば認証は有効になります。

  1. 提出前の1年間および提出日時点で、当事者の企業家的・管理的努力が名目的(ごくわずか)なレベルにとどまり、付随資産の価値を決定する主要因になっていないこと
  2. 今後、再度の認証を提出できなくなるような努力を行う合理的な見込みがないこと
    (※規制逃れのために一時的に活動を止める行為を抑制)
  3. 付随資産の価値に寄与すると合理的に見込まれる重要な情報のほぼすべてが公開されていること

つまり、開発チームの努力がわずかで付随資産の価値の要因になっておらず、今後も価値に影響するような努力をする見込みはなく、重要な情報のほぼすべてが公開されていれば付随資産から卒業し、開示義務が終了するということです。

SECは認証書の内容に異議がある場合、認証を否認することができ、認証対象者に対して10日前の事前通知を行い、その期間中、利害関係者は意見を提出できます。

認証提出から90日以内に、SECが異議通知を発出しなかった場合、認証されたものとみなされます。

なお、SECは公益や投資家保護の観点から必要と判断すれば、付随資産発行者を開示要件から免除できます。

その他の情報開示

法施行前に販売された付随資産にも情報開示義務が課されます。最初に過去3年分の開示をし、その後は定期開示をします。

私募で販売された付随資産を一般向けに再販売する場合、再販売が証券取引に該当するか否かにかかわらず情報開示義務が課されます。

開示義務対象外の付随資産発行者も任意でSECに情報開示できます。任意で情報開示をする利点は、将来の認証に向けた説明を円滑に進めやすくなることや、投資家や取引所に対して「コンプライアンスを重視している」というメッセージを送れる点が挙げられます。

その他の留意事項

付随資産発行者や関係者の受託者責任(誠実に経営し、受益者の利益を守る義務)は一切免除されず、これまで通り厳格に適用されます。

付随資産発行者が提出書類(情報開示、認証書など)で虚偽の記載を行ったり、記載が必要な重要事実を記載しないことは違法となります。証券詐欺と同等の厳しい法的追及の対象となります。

付随資産発行者が情報開示を重要な点で提供せず、SECから是正機会を与えられても改善しない場合、その付随資産はデジタル資産仲介業者(取引所等)に上場できなくなります。

ブローカーやディーラーが個人投資家にデジタル・コモディティを勧める場合でも、従来どおり「顧客の最善の利益」を最優先する義務が適用されます。

投資助言業者がデジタル・コモディティについて助言する場合でも、証券と同様に、顧客に対する受託者責任を負います。

付随資産で資金調達の登録免除条件

暗号資産プロジェクトは、一定の条件を守れば、証券登録をせずにトークンを販売して資金調達をできるルールが作られます。

証券登録不要で資金調達できる金額は、下記①②のいずれか大きい方です。

①1年あたり5000万ドルまで(最長4年)

②募集・販売時点で流通している付随資産の総価値の10%

①と②に分けた理由は、小規模プロジェクトと大規模プロジェクトを同じルールで縛らないためです。

例えば、すでに市場に出回っているトークンの総価値が100億ドルある大規模プロジェクトの場合、10億ドルまで資金調達できます。

なお、金額は2年ごとに見直されます。

発行者は、付随資産を募集・販売する日の30日前までに開示情報をSECに提出し、その後、半年ごとの定期開示を行うことになります。

開示書類の内容について、付随資産発行者は詐欺・虚偽記載の責任を負いますが、将来予測の記述については、将来予測の旨を明示し、十分な注意喚起を行っている限り、責任を問われません。

以下に該当する者は免除されません。

  • 米国の州・準州・DCの法の下で組織されていない会社
  • 具体的事業計画のない開発段階企業、または未特定企業との合併・買収を目的とする企業
  • 投資会社
  • 他のコモディティの分割持分を発行する者
  • 直近5年以内に証券取引所法12(j)に基づくSECの停止命令を受けた者
  • Reg D(506(d))の不適格者
  • Regulation Aの不適格者
  • 直近10年以内にインサイダー取引、横領、サイバー犯罪、マネロン、テロ資金供与、金融詐欺で有罪判決

付随資産関係者の売却制限

付随資産関係者による不当な売却や市場操作を防ぐため、売却制限が定められます。

SECは、付随資産の分散型台帳システムが関係者の共通支配下にあるか否かについて、判断基準を制定します。

SECは以下を考慮して共通支配下にないと判断される明確な条件(セーフハーバー)が設けます。

  • プロトコルやソースコードがオープンソースとして公開されているか
  • 関係者が単独でシステムを制御・ルールを変更できる権限を有していないか
  • 関係者が付随資産の発行済数量の49%以上を実質保有していないか
  • システムが経済的に自立しているか

付随資産関係者は、分散型台帳システムが関係者による共通支配下にないことを記載した認証をSECに提出し、SECが承認するか、90日以内に否認しなければ認証は有効になります。

SECは認証を否認する場合、10日前に通知、ヒアリングを実施した上で否認の議決を行います。

認証の前後で、付随資産の売却条件は次のように異なります。

認証前…12か月以上保有+SECが定める上限
認証後…6か月以上保有+SECが定める上限(最低でも発行済数量の10%以上となる範囲で設定)

以下は既存トークン(法施行日前に取得)の売却条件です。

認証前…12か月以上保有
認証後…6か月以上保有

分散型台帳の支配者が付随資産の取引をする場合、SECが定める追加要件(事前通知・活動開示など)を満たす必要があります。

また、付随資産関係者の破産や倒産など重大な困難が生じた場合や、市場流動性の提供といった正当な理由がある場合には、売却制限の免除や適用除外の規則も設けられます。

付随資産関係者が売却制限に違反して得た利益は、付随資産の保有者のものとして回収可能とされ、発行者や保有者は、利益発生から2年以内に回収訴訟を起こすことができます。

付随資産は証券ではない

従来、トークンが保有者に収益を分配する仕組みを持つと、すぐに証券とみなされる傾向がありました。本条は、それがシステムの機能やガバナンスに由来する場合には、直ちに欠格事由(証券性を生む金融的利益)にはならないと明言し、Web3的なトークノミクスを容認しています。

具体的には次のような場合を含みます。

  • 分散型台帳システムの機能により、対価の収集・受領・蓄積・分配が行われる場合
  • ネットワークトークンが分散型台帳システムまたは分散型ガバナンスに関する統治(ガバナンス)権限を提供する場合
  • ネットワークトークンの価値が、当該台帳システムや分散型ガバナンスの利用状況、またはその運営・努力・財務状況に応じて上下する場合
  • ネットワークトークンが付随資産に該当する場合において、その価値が付随資産発行者や関係者の努力によって上下する場合

また、すでに法廷で「証券ではない」と判決を受けた付随資産は、1933年証券法第4B条(b)(1)に列挙されたいかなる法律上も証券とはみなされないとしています。これはリップル裁判など、過去の裁判判断が新法を用いて遡って不利益に扱われないようにするための規定と考えられます。

2026年1月1日時点で、アメリカの証券取引所に上場している上場投資商品(ETP)の裏付け資産となっているトークンは、付随資産でも証券でもないことが明示されました。つまりこれは、ビットコイン、イーサリアム、XRPは法施行日時点ですでに付随資産を卒業していることがほぼ確定したことを意味します。

SECの権限保護と制限

新法で明示的に変更された範囲を除き、SECの既存の証券法上の権限は制限されず、本条の違反に対して、SECの執行権限(法的措置)は今までどおり維持されます。

SECには、意図的な潜脱行為を管理・防止するために、実質判断で意図的回避を取り締まることができる権限が付与されます。実質判断とは、形式的なルールや書面だけでなく、契約・取引の本質や実態を重視して、その真の姿を見抜いて判断を下すことです。

付随資産の関係者による不公正な売却・移転を防ぐため、SECは必要に応じて付随資産の売却・移転の制限ルールを設けることができます。

SECは、必要かつ適切と判断される情報に限定して開示規則を設計し、その影響を費用対効果を分析する義務があります。

SECは「開示の内容」の範囲を超えた財務諸表の提出を求めてはいけません。

法施行日前の付随資産の募集・販売・配布について、証券法違反を理由とした訴訟を行うことはできません。

新法ができても、SECが元々持っている免除付与権限(ケースバイケースでルールを免除する権限)は制限や弱体化されません。

また、これまでは「規則」という全体向けのルール変更が主でしたが、特定の企業やプロジェクトに対して「個別の命令」で柔軟に免除を出せる権限が追加されます。

1933年証券法 第28条は以下のように改正されます。

(改正前)規則または規制(by rule or regulation)
(改正後)規則、規制、または命令(by rule, regulation, or order)

(末尾に追記)SECは、本条に基づく免除命令を付与するための手続きを、規則または規制により定めるものとし、また、その専属的裁量により、本条に基づく免除申請の審理自体を拒否することができる。

記録保存を近代化する

これまでの証券関連法における記録は紙や従来のデータベースを想定していましたが、これを分散型台帳(オンチェーンデータ)による記録の活用を含め、近代化させることがSECに義務付けられました。

証券規制を近代化する

既存の証券規制をデジタル資産の技術的特性に合わせて近代化することをSECに命じられました。

デジタル資産の技術的特性を踏まえて、時代遅れ、不必要、過度に負担が重い規制が修正・撤廃されます。

近代化の対象として、以下の分野が例示されています。

  • 顧客保護(デジタル資産のカストディを含む)
  • 移転代理人規則
  • 帳簿・記録および記録保存要件
  • 清算・決済規則
  • ブローカー・ディーラー、ATS、取引所規則
  • デジタル資産証券に適合させた発行者開示・継続開示要件
  • ボールト、デジタル資産レシート、ボールトトークン、流動性提供トークンの利用

以下の用語が定義されました。

デジタル資産レシート/流動性提供トークン/ボールトトークン
 ・利用者がデジタル資産を預け入れたとき、ボールトやスマートコントラクトによって発行されるもの
 ・利用者が預け入れたデジタル資産から生じた利益について比例的な持分(引き出す権利)を有するもの

ボールト
 分散型台帳システム上で動作し、利用者が資産の所有権を保持したまま運用が行われる、プログラム可能かつ自己管理型のスマートコントラクト

ネットワークトークンおよび付随資産を州法の登録規制から免除し、連邦法で一本化することが明示されました。州の既存の監督権限(反詐欺等)は維持されます。

デジタル商品はSIPCの保護対象外

1970年証券投資者保護法 第16条(14)項に次の文言が追加されます。

「証券」という用語には、デジタル・コモディティは含まれない。

SIPC(証券投資家保護公社)は証券会社が破綻した際に顧客の株式や債券を一定額まで補償する制度です。

この条文によって、デジタル・コモディティ(ビットコインなど)は、SIPCによる補償の対象外となることが確定します。

デジタル・コモディティは商品先物取引委員会(CFTC)の管轄となるため、CFTC側の規制や各プラットフォームの分別管理ルール等に依存することになります。

第2編 違法金融への対策

第201条 デジタル資産仲介業者の義務

銀行秘密法の対象にデジタル資産仲介業者(デジタルコモディティのブローカー、ディーラー、取引所)が追加されます。

デジタル資産仲介業者には、事業規模や業態に応じたマネーロンダリング防止・テロ資金供与対策(AML/CFT)が求められ、取引記録の保存、疑わしい取引の監視と報告が義務化されます。

また、米国財務省外国資産管理局(OFAC)が管轄するすべての米国制裁関連法令を遵守し、制裁逃れを防止します。

疑わしい取引の監視と報告には、必要に応じてブロックチェーン分析の活用も含まれます。

第202条 規制遵守状況を検査

財務省と規制当局が連携してリスクベースの検査基準を策定し、デジタル資産仲介業者が、銀行秘密法のマネーロンダリング防止およびテロ資金供与対策(AML/CFT)を遵守しているかを評価します。

リスクベースとは、危険度(リスク)の高低に応じて規制や検査の強さを変えることをいいます。つまり、怪しそうなところほど、厳しく見る。

第203条 政府と民間が協力し不正金融防止

対象政府機関と指定民間事業者がリアルタイムで安全な情報共有ネットワークを通じて協力し、デジタル資産を使った不正金融を検知・阻止します。

政府機関が適切と判断する範囲で、政府機関と指定民間事業者は月例会合、セキュアな電子メール・ネットワークを通じて情報を共有します。指定民間事業者は情報共有について民事責任を免除されます。

以下は想定される不正金融の種類です。

詐欺、マネーロンダリング、テロ資金供与、違法物品の売買、フェンタニル、その他違法薬物取引、制裁逃れ、資金窃取、違法活動への資金提供、児童性的虐待素材関連取引、高齢者詐欺、その他特定違法活動の収益に関わる金融取引

以下は対象政府機関です。

  • 司法省
  • 財務省
  • 国土安全保障省

以下は指定民間事業者です。メンバーは半年ごとに見直され、必要に応じて入れ替えられます。

  • 資金移動業者 10社
  • デジタル・コモディティ・ブローカー/ディーラー/取引所 10社
  • 銀行 10行

まずは財務省が不正金融の可能性・脅威・新たなリスクに焦点を当てた5年間のパイロット(試行)プログラムを設置します。

第204条 不正金融対策のワーキンググループ設立

テロ、麻薬取引および不正資金供与に対抗するため、独立金融技術ワーキンググループを設立します。本条は「金融技術保護法」と称されます。

議長は財務長官(または財務長官が指名)です。

以下の機関から、上級レベルの代表者を各1名指名します。

  • 財務省
  • テロリズム・金融情報局(TFI)
  • 内国歳入庁(IRS)
  • 司法省
  • 連邦捜査局(FBI)
  • 麻薬取締局(DEA)
  • 国土安全保障省(DHS)
  • 米国シークレットサービス
  • 国務省
  • 国家情報長官室(ODNI)

下記機関を代表する5名以上の個人を指名します。

  • デジタル資産関連企業
  • 分散型台帳分析企業
  • 金融機関
  • 研究を行う機関または組織
  • 個人のプライバシーおよび市民的自由を重視する機関または組織

ワーキンググループは、デジタル資産および関連する新興技術の不正利用について調査・研究を行います。

不正利用は以下が想定されています。

  • テロリスト、外国テロ組織、テロ支援国家、国境を超える組織犯罪集団による利用
  • マネーロンダリング、不正資金供与

これらの対策を強化するための立法案および規制案を策定します。

金融技術保護法という名称からは金融技術そのものの保護をイメージしますが、条文の実態は、金融技術を用いた不正への対抗策を検討するための枠組みです。

一方で、デジタル資産企業やプライバシー・市民的自由団体を構成員に含めている点から、本ワーキンググループは不正対策の暴走を抑止しつつ、その検討過程において金融技術そのものを守る設計を内包していると考えられます。

第205条 デジタル資産キオスクの規制強化

デジタル資産キオスクとは、暗号資産ATMのように、暗号資産の売買や送金を特定の端末で行う物理的なインターフェースを指します。

これまでは暗号資産ATMの設置場所や運営実態の把握が不透明になりがちでしたが、この条文により、米国内に設置されたデジタル資産キオスクの端末情報が政府により把握されます。

デジタル資産キオスク運営者は、法施行日から90日以内にキオスクに関する以下の情報を提出し、その後も90日に1回提出することが義務付けられます。

  • 運営者の法人名
  • 商号・屋号
  • 米国内にあるキオスクの住所
  • キオスクの運営開始日
  • キオスクの運営終了日
  • 運営者が使用するすべてのデジタル資産アドレス

運営者は顧客と取引をするときに以下を表示する必要があります。

  • 取引金額
  • 取引の種類および性質
  • 当該取引は返金不可・取消不可であるとの警告
  • 顧客が支払う手数料その他の費用
  • 消費者詐欺に関する警告
  • 典型的な詐欺手口
    ⇒ 政府職員や銀行員になりすます行為
    ⇒ 逮捕や罰金をちらつかせる脅し
    ⇒ 支払いと引き換えに仕事・報酬を提示する話、またはうますぎる取引
    ⇒ 銀行口座やクレジットカードが凍結されたという虚偽の主張
    ⇒ 慈善団体や災害救援を名目とした寄付の要求
    ⇒ 会ったことのない人物への支払い要求

運営者は新規顧客と500ドル以上の取引を行うときは、以下を確認する必要があります。

  • この取引を本人の意思で継続すること
  • この取引が詐欺的な誘導によるものではないこと

運営者は取引が完了したら、顧客に以下が記載されたレシートを提供します。

  • キオスク運営者の名称および連絡先
  • 顧客の氏名
  • 取引の種類、価格、日時、トランザクションハッシュ、デジタル資産アドレス、取引金額、手数料
  • 詐欺などの不正行為が疑われる場合には、法執行機関に連絡すべきとの注意書き
  • 適用された為替レート

その他、運営者には以下の不正防止義務が課されます。

  • 詐欺行為に関与していると認識されているデジタル資産ウォレットへの送付を防止する。
  • 詐欺やその他の不正行為を示唆する取引パターンを検知する。
  • 同一のデジタル資産ウォレットアドレスを、複数の顧客が利用することを防止する。
  • 州法により要求された場合、書面による不正防止方針を策定・維持・実施する。
  • 独立したコンプライアンス責任者をフルタイムで雇用する。
  • 新規顧客が特定のアドレス宛てにデジタル資産を送付する取引では、取引開始から72時間が経過しない限り、送付してはいけない。
  • 営業時間中に担当者が対応するライブのカスタマーサービスを提供し、電話番号を各キオスクに見やすく表示する。
  • 営業時間外には、自動チャットボット、オンライン苦情受付ポータル、その他の手段で顧客対応サービスを維持する。
  • 法執行機関、規制当局が利用可能な専用の連絡手段(電話・メール等)を設ける。

規制当局には以下の権限が与えられます。

  • FinCEN長官は、法の遵守状況を確認するため、デジタル資産キオスク運営者に対して証拠の提出を求めることができる。
  • 財務長官は取引の報告義務または制限に関する金額基準(合計額または1日あたりの入出金上限を含む)を規則により定めることができる。
  • 各州の規制当局は、本条の規定を執行するために、民事訴訟や適切な手続によって民事罰や救済措置を課すことができる。

第206条 デジタル資産の悪用実態を調査

テロなどの犯罪組織によるデジタル資産の悪用実態を政府が公式に調査し、その結果を今後の監督・執行強化に役立てます。

財務省は司法省と協議の上、外国テロ組織および国境を越える組織犯罪者が、不正活動に関連してデジタル資産をどのように利用しているかについて調査を実施し、調査完了後180日以内に議会に報告書を提出します。

報告書には、SECとCFTCが、それぞれの監督下にあるデジタル資産関連事業者について、コンプライアンスおよび執行を強化するための提言を含めます。

第3編 分散型金融イノベーション

第301条 似非の分散型DeFiを規制する

DeFi(分散型金融)を名乗っていても、裏で特定の管理者がいるDeFiは従来の金融機関と同じ規制の対象になります。

まず、以下のいずれかに該当するDeFiは「非分散型DeFi」と定義されます。

  • 特定の個人またはグループが、プロトコルの機能や運用、合意形成ルールを制御・修正する権限を持っている。
  • ソースコードに組み込まれた透明なルールのみに基づいた運用になっていない。
  • 特定の個人またはグループが、ユーザーの利用を制限・検閲する権限を持っている。

つまり、スマートコントラクトが勝手に動き、誰も止められないDeFiは「分散型DeFi」として認め、人間が介入できる余地があるものは「非分散型DeFi」として規制されます。

規制制定においては、以下が考慮されます。

  • 投資家保護、公正な市場を維持する。
  • 合衆国憲法の表現の自由にもとづき、ソフトウェアの作成・公開・利用する権利を保護すること。
  • 分散型台帳システムの開発・運用について法的明確性を提供すること。
  • SECに登録義務があると判断された者に対し、銀行秘密法に基づくマネーロンダリング防止・テロ資金供与対策(AML/CFT)を適用できるようにすること
  • 証券に関連する活動(仲介、ディーリング、取引、カストディなど)に限って適用要件を判断する。
  • 分散型台帳アプリケーションまたはソフトウェアコードそのものに、SECへの登録を求めない。
  • 分散型台帳アプリケーションの立ち上げ、配備、運用を禁止しない。
  • 分散型ガバナンス・システムの参加者は個別主体として扱う。
  • 限定的なサイバー攻撃の対応は中央管理と見なさない。

以上から、多くのDeFiプロジェクトが持っている管理権限やアップグレード権限は、内容次第で証券法適用の法的リスクとなります。

規制対象とならないためには、権限を完全に放棄するか、最初から分散型自律組織として一切の介入を不可能にする設計が求められるようになるため、米国内での分散型金融の開発は進みづらくなると考えられます。

第302条 分散型アプリレイヤーに不正金融対策義務

分散型台帳アプリケーション・レイヤー(以下、分散型アプリレイヤー)は、分散型台帳技術において、ユーザーが利用するアプリケーションやサービスが動作する最上位の層のことをいいます。DeFiの基盤やコードそのものは含まれません。

この分散型アプリレイヤーに対して、経済制裁対応・マネーロンダリング対策・テロ資金供与対策の義務が課されます。

分散型アプリレイヤーの運営者は、オンチェーン分析などを用いて制裁対象者のウォレットアドレスや活動を特定し、禁止されている取引をブロックまたは制限することが求められます。

この条文により、アメリカのDeFi運営者は、自分のサイトに接続してくるウォレットが怪しくないかを常に裏側でチェックする仕組みを導入することが不可避になります。

第303条 財務省に送金禁止権限を付与

米国外の金融機関などにおいて、デジタル資産を利用した不正金融によってマネーロンダリングの懸念がある場合、財務省は国内の銀行や暗号資産交換業者に対して、送金の禁止や条件を命じることができるようになります。

制裁とは別枠で、マネーロンダリング対策の観点から資金の流れを止める強力なツールとなります。

以下は銀行秘密法に追加される条文です。

6) 特定の資金送金に関する特別措置

米国財務省長官が、米国外の特定の法域、米国外で営業する1以上の金融機関、または米国外の法域に関連する1以上の取引類型について、デジタル資産を用いた不正金融に関連して、主要なマネーロンダリング上の懸念があると認定した場合、財務長官は、法律で認められる範囲で、命令・規則その他の方法により、国内の金融機関または国内の金融代理機関が行う特定の資金送金について、当該外国法域、金融機関、取引類型、または口座が関与する場合に送金を禁止する、または条件を課すことができる。

第304条 米国依存型ステーブルコインを定期点検

海外で発行されたステーブルコインのなかで、準備資産が米ドルや米国債、または、決済インフラを米国に依存している「オフショア・ステーブルコイン」に対して、不正金融(マネーロンダリング/テロ資金供与)や国家安全保障上のリスクになっていないかを、米国政府が定期的に点検するための制度が整備されます。

以下は報告書に含める内容です。

  • 各米国依存型オフショア・ステーブルコインの不正金融リスク評価
  • ステーブルコイン発行者が不正金融に対処するために採用している統制の評価
  • 不正金融関連に使用されているステーブルコインの取引量の情報
  • 各米国依存型オフショア・ステーブルコインと米国金融システムとの関係
  • 不正金融リスクに関連すると財務長官が判断するその他の情報

第305条 怪しいデジタル資産取引を停止可にする

ステーブルコイン発行者や暗号資産取引所などのデジタル資産事業者は、怪しいデジタル資産の取引を一時停止しても損害賠償請求を受けない法的保護が与えられます。

法定保護を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 取引が州法または連邦法違反に関連すると合理的に説明できる。または、政府機関から書面による要請を受けた。
  • 顧客に通知した(捜査を妨げると判断。または、通知しないよう当局から要請を受けた場合は不要)
  • 当局へ通知した(当局から要請を受けた場合は不要)

デジタル資産事業者は、不正の疑いがある取引・送金を最大30日間停止でき、政府機関の要請があれば150日間の延長も可能です。

取引停止の根拠を示す文書を3年間保存し、政府機関の要請に応じて提出します。

これにより、デジタル資産事業者の「止めなかったら責任」「止めたら訴えられる」という板挟みリスクが解消され、詐欺・ハッキング・マネーロンダリングの初動段階で資金が流出する前に時間を稼ぐためのセーフティネットとして機能します。

第305条 政府が安全なDeFiを認証する

米国国立標準技術研究所(NIST)主導で、DeFiの安全基準のテンプレートを作り、基準をクリアしたプロジェクトに「合格証」を与える制度が設立されます。

NISTは専門家や業界関係者からDeFiのセキュリティ標準やベストプラクティスなどの情報を集め、「DeFi向けのサイバーセキュリティ・ベストプラクティス集」を刊行します。

合格証を受けたDeFiはNISTのお墨付き(認証マーク)を表示できるので、ユーザーは安全基準を満たしているDeFiを一目で判断できるようになります。

この制度への参加は「任意」ですが、参加したほうが法的リスク管理上は有利となります。

第307条 デジタル資産ウォレットの規制必要性を評価する

デジタル資産を、マネーロンダリング法制上の「通貨性金融商品」に含めることが明文化されます。

通貨性金融商品とは、現金と同様に容易に換金や移転が可能であり、犯罪収益の隠蔽に悪用されやすい金融商品のことをいいます。

また、いままでデジタル資産のセルフホスト型ウォレット(自己管理型ウォレット)の規制や本人確認の必要性がたびたび議論になってきましたが、その議論に対する政府の基本姿勢と評価が 明文化されます。

セルフホスト型ウォレットとは以下の要件を満たすものをいいます。

  • デジタル資産を保管および移転するために使用されるもの
  • デジタル資産の所有者が第三者に依存せず、独立して管理・支配できるもの

財務省は以下の点を考慮して、セルフホスト型ウォレットのリスク評価を行います。

  • マネーロンダリングや制裁逃れ等の不正行為に利用
  • 金融機関がセルフホスト型ウォレットを使った不正行為を検知する手法の有効性と限界
  • 不正行為を助長するリスク
  • プライバシーおよび自由を向上させる利点
  • 十分な金融サービスを受けられていない人々が活用できる利点
  • 詐欺、サイバーセキュリティ、本人確認等に関するリスク
  • 国境を越える不正資金移動、脱税、資産隠匿に利用

セルフホスト型ウォレットの利点も含めたリスク評価を行うことで、規制対象にしつつも、自由とプライバシーを守る姿勢が示されています。

第308条 デジタル資産仲介業者のDeFi管理基準を作る

デジタル資産仲介業者(取引所など)がDeFiを利用してサービス提供する前に、守るべきリスク管理基準が定められます。

リスク管理基準には以下が含まれます。

  • マネーロンダリング、制裁回避、詐欺、市場操作、運用、サイバーセキュリティのリスクを分析し、軽減策を策定する
  • 上記リスクについて顧客に開示する
  • 上記リスクを検知する十分な能力を維持する
  • 上記リスクに基づいて送金の実行・拒否・停止を行うための手続を整備する


SEC、CFTC、自主規制機関は、定期検査の一部として遵守状況を確認します。

第309条 デジタル資産ミキサーを調査する

デジタル資産ミキサー(タンブラー)は、異なるユーザーの資産を混ぜて再配分するなどの方法で、取引内容を第三者が把握しにくくするスマートコントラクトのことです。

財務省は以下の内容を含めて調査し、報告書を提出します。

  • デジタル資産ミキサーのタイプと取引量
  • ミキサーの取引のうち不正金融の割合の推計
  • 中央集権型取引所や伝統的金融機関がミキサーにどの程度依存しているか
  • ミキサーに関するマネロン対策・経済制裁のコンプライアンスが十分に実施されているか
  • 不正ではないミキサーの利用可能性
  • 他国のミキサーに関する規制アプローチ
  • 将来に向けた立法・規制の選択肢

第310条 海外の暗号資産仲介業者のリスクを調査する

米議会の独立調査機関(合衆国会計検査院)は、米国居住者にサービスを提供している海外のデジタル資産仲介業者(海外取引所など)がもたらすリスクを評価し、そのリスクに対処するための規制を提案します。

独立調査機関が担当することで、中立的で包括的な視点からの評価が行われます。

第311条 敵対的外国勢力を調査する

商務長官が「敵対的外国勢力」と認定した主体(例:北朝鮮、イランなど)について、財務省と米議会の独立調査機関(合衆国会計検査院)がそれぞれ独立して調査を実施し、報告書を提出します。

報告書には以下の内容が含まれます。

  • 敵対的外国勢力に支配されているデジタル資産仲介業者
  • 敵対的外国勢力が米国人の取引データを収集しているか
  • 敵対的外国勢力がデジタル資産仲介業者の知的財産を不正利用しているか


第312条 サイバーセキュリティ基準を調査する

政府機関は以下のサイバーセキュリティ基準について調査を実施し、報告書を提出します。必要に応じて、立法の提案を含めます。

  • デジタル資産のスマートコントラクト
  • カストディ(保管)
  • 鍵管理
  • スマートコントラクトのデプロイ(展開)

第313条 DeFiが金融の安定に与えるリスクを調査

分散型金融(DeFi)とデジタル資産信用供与(レバレッジ・貸付)が、金融安定性に与えるリスクを定期的に点検する制度が設けられます。

政府機関はDeFiプロトコルに関する以下の調査を施行日から1年以内に行い、報告書を提出します。その後4年ごとに定期点検を行います。

報告書には、必要に応じて立法や規制に関する提言を含めます。

  • 金融システムにおけるDeFiの役割(機能、レバレッジや資金調達への利用、伝統的金融商品との連動性、取引量)
  • DeFiが金融の安定性、市場の公正性、金融システム全体に与えるリスク
  • 当局や利用者がDeFiのリスクを軽減するために用いている戦略
  • 現行の規制枠組みがDeFiのリスクを十分に抑制できているかどうか
  • デジタル資産を担保とした貸付延長、規制の空白が生むリスク
  • デジタル資産市場のレバレッジと伝統的金融システムとの相互接続性

第4編 銀行イノベーション

伝統的金融機関がデジタル資産を扱うためのルールを定めるセクションです。

第401条 銀行のデジタル資産使用を認める

銀行・金融持株会社・信用組合は、デジタル資産や分散型台帳システム(ブロックチェーンなど)を用いて業務を行うことが法律上、明確に認められます。

ただし、新しい業務を追加するものではなく、既存の業務にデジタル資産を用いて実施してよいという位置づけです。

対象となるデジタル資産は代替性資産(ビットコインやイーサリアムなど)を前提としており、非代替性資産(NFT)は対象外です。

また、デジタル資産を用いることによって、通常適用される規制が免除されることはありません。

以下は、法律上認められる活動です。

  • デジタル資産のカストディ(保管)
  • ステーキング、レンディング、ガバナンス参加
  • デジタル資産の売買の仲介
  • デジタル資産を担保とした融資
  • デジタル資産を用いた決済業務
  • 投資または取引目的での自己勘定によるデジタル資産の売買
  • 分散型台帳のノード運営
  • 自己管理型ウォレットアプリの提供
  • デリバティブ取引およびヘッジ取引
  • ブローカレッジ業務
  • 業務に付随する範囲での自己勘定によるデジタル資産保有
  • デジタル資産の引受、ディーリング、マーケットメイク

第402条 ポートフォリオマージンを可能にする

ポートフォリオ・マージンは、保有する複数のポジションを合算した全体リスクに基づいて証拠金を計算する手法です。

証券、先物、スワップ、デジタルコモディティなど、異なる金融商品を一つの口座でまとめて管理し、相殺効果を認めることで、必要証拠金を最適化します。

SECとCFTCはポートフォリオ・マージンを可能にするための共同規則を制定します。

規制の制定にあたっては、以下を条件を満たす必要があります。

  • 業者が破綻した場合、口座内の資産がどのように扱われるかを明確に定めること
  • 公益にかなうこと、かつ顧客保護が適切に確保されていること
  • 倒産時の資産の扱いについて、顧客への適切な情報開示を行うこと
  • パブリックコメントを通じて、公益性と投資家保護の観点から検討すること
  • 必要に応じて、FRB、FDIC、OCCなどの関係規制当局と協議すること

第403条 ネッティング契約対応の資本規制を策定する

ネッティング契約とは、複数の債権と債務を相殺し、差額のみを決済する契約です。

本条では、既に存在するネッティング契約を前提として、預託機関等に対し、相殺後のリスクを適切に反映したリスクベースおよびレバレッジの自己資本規制を策定するとしています。

第404条 ステーブルコイン保有のみに基づく利息を禁止する

デジタル資産サービス提供者は、決済用ステーブルコインを単に保有していることだけを理由として、現金・トークンその他いかなる形であっても、利息または利回りを支払ってはならないと明示されます。

ただし、以下のような活動に対する報酬やインセンティブについては禁止されません。

  • 取引、決済、送金、両替
  • ウォレット、口座、プラットフォーム、アプリ、プロトコル、ネットワークの利用
  • ロイヤルティ、プロモーション、サブスクリプション、インセンティブプログラムへの参加
  • ステーブルコインの受け入れ・決済・アクワイアリングに伴うリベートや特典
  • 流動性または担保の提供
  • ガバナンス、検証、ステーキング、その他エコシステムへの参加

ステーブルコインが「銀行預金である」「預金保険の対象である」「リスクフリーである」など、誤解を招くマーケティングは禁止されます。

銀行規制当局は、以下について調査をし、報告書を提出します。

  • デジタル資産サービス提供者による決済用ステーブルコインに関連する報酬・特典提供の実態
  • それらが銀行預金の流出(特に地域銀行からの預金流出)、消費者の信用アクセス、消費者および加盟店の決済コストに与える影響

この条文は、伝統的な銀行システム(特に中小規模の地域銀行)をデジタル資産による急激な資金流出から守るための「防波堤」として機能するように設計されたのものと考えられます。

ステーブルコイン発行会社はユーザーから預かったドルの大半を米国債などの安全資産で運用しており、制度上許されるのであれば、その運用益の一部をステーブルコイン保有者に利息として還元することが可能です。

銀行も同様に、顧客から預かったお金を貸出や運用によって収益化していますが、店舗維持費、人件費、預金保険料、規制対応コストなどを負担しているため、預金者に支払える利息は低くなりがちです。

一方、ステーブルコインは実店舗を持たず、少人数のスタッフとスマートコントラクトで運営されるため、米国債の利回りの多くをユーザーに還元できる構造を持っています。

そのため、ステーブルコイン保有者への利息支払いが広く認められた場合、銀行預金よりステーブルコイン預金の方が圧倒的に高い利回りを提示できるようになり、銀行預金から大規模な資金流出が生じる可能性があります。

第5編 規制イノベーション

第501条 サンドボックスを設立する

マイクロ・イノベーション・サンドボックスとは、金融やデジタル資産の分野において、小規模スタートアップが規制当局の監視下で安全に実証実験を行える枠組みです。
このサンドボックスは国が資金援助をする制度ではなく、国が邪魔をしない代わりに、きっちり監視するという制度です。

参加できる企業には以下の条件があります。

  • 従業員数:25人以下
  • 年商:1000万ドル以下
  • 顧客・投資家資金の合計上限:2000万ドル
  • 参加期間:最長2年

参加希望企業は、活動の内容、免除を希望する規制条項、リスク軽減策、出口目標などを記載した申請書を提出し、当局は180営業日以内に承認または却下を決定します。

参加企業は半年に一度、進捗と出口目標に向けた進捗状況を報告し、出口目標に向けて誠実に取り組んでいる場合、最大1年の延長が認められます。

第502条 米国のデジタル資産規制を国際標準にする

米国のデジタル資産規制を、米国主導で国際標準にしていくための外交条文です。

米国規制当局は以下を行います。

  • デジタル資産規制に関する国際基準の適用について、外国の規制当局や国際機関と協議する。
  • 投資家やユーザー保護のために必要と判断される場合、情報共有の枠組みを構築する。
  • 相互主義に基づき、米国のデジタル資産企業が海外でも不利な扱いを受けないよう、同等待遇を確保する。
  • 国際フォーラムにて、以下の技術中立的でオープンな国際標準の採用を主張する。
      → 分散型台帳インフラへの合法的アクセスの確保
      → ドル建てデジタル資産の利用促進
      → セルフカストディやプライバシーを含む個人の権利の保護
      → 共同での取り締まり、監督強力、共同の技術支援

また、マイクロ・イノベーション・サンドボックス(第501条)を土台に、国際規制サンドボックスを設立します。

第503条 規制対応自動化の調査

規制をコードで実装できるかを国家レベルで検証する条文です。

データ標準化、業務自動化、分散型台帳やスマートコントラクト機能を用いて、コンプライアンス義務(規制報告、情報開示、その他)を自動化できるかを調査します。

独立調査機関(GAO)は関係政府機関と協議の上、分散型台帳を用いたコンプライアンス・ツールについて、以下の調査を行います。

  • リアルタイム報告、監査ログ、マネロン対策、制裁スクリーニングに関する既存の分散型台帳ツールの調査
  • オンチェーンやコードベースの仕組みで規制義務を果たすことの実現可能性、メリット、リスク
  • 各規制当局間での自動化コンプライアンスの相互運用の実現可能性。
  • 各規制当局のデータ収集システムの現状
  • 相互運用と規制当局のアクセス確保のために、共通データ要素、標準、分類体系
  • 自動コンプライアンスを導入するために必要なパイロットプログラムや法改正の提案
  • 発行体、仲介業者、規制当局、投資家などへの影響評価と、小規模事業者への負担軽減策を検討
  • 自動化コンプライアンスに関する国際的な取組みとの比較

第504条 法律の運用状況チェック

法律を作って終わりにしないために、施行後の運用状況を議会が継続的にチェックする仕組みを構築します。

金融規制当局は、法施行日から1年以内に以下を調査して報告し、その後も3年ごとに同様の報告を行います。

  • 改正の実施状況
  • 規則やガイダンスの策定状況
  • 本法に基づく申請の承認・却下の状況
  • 改正をより効果的に実施するために必要と考えられる立法上の提言

第505条 資産トークン化の規制を整備する

トークン化とは、現実世界に存在する資産の権利・義務・利益をブロックチェーン上のトークンにすることです。

本条では、トークン化された実物資産(例:不動産、ゴールド)や金融商品(例:株式、債券)について、規制上の取扱いを明確化します。

トークン化された金融商品は、原資産の金融商品と同一の規制を受け、分散型台帳を使っていることを理由に規制が緩和・変更されることはありません。

また、有価証券はトークン化しても有価証券であり続け、非有価証券の現物資産はトークン化しただけで有価証券にはなりません。

規制当局はトークン化された資産の規制上の扱いについて調査を行い、規制を整備します

  • 実物資産をトークン化する場合の検証・保管・監査・報告の基準
  • 連邦の管轄、州法・国際規制との関係、当局間・国際協力・執行の在り方
  • 詐欺、誇大表示などの消費者保護問題
  • トークン化が州の利益(不動産・財産権など)に与える影響

技術革新は歓迎する一方で、技術を理由に規制回避することは許さないというのが、この条文の最も重要なメッセージです。

第506条 耐量子暗号への移行促進

耐量子暗号は、量子コンピュータでも解読が困難な次世代の公開鍵暗号技術のことです。

米議会は、量子コンピュータの進化が既存のデジタル資産の安全性を脅かすと認識しています。

そこで商務省は、規制による義務化ではなく、市場主導・自主的な対応を基本としつつ、産業関係者との協議を進め、以下の方法で耐量子暗号の自主的な採用・導入を促進します。

  • 量子暗号の導入を支援するためのガイダンスや資料を公表
  • 量子暗号解析攻撃のリスクが高いプロジェクトの技術支援

第507条 不正金融に対抗するための国際連携

財務省は、デジタル資産が国家安全保障上の脅威に悪用されることを防止するため、以下の国際協力を強化する取り組みを主導します。

  • 外国の関係当局と連携し、デジタル資産を用いたマネロン対策・制裁逃れ防止・テロ資金対策を推進する。
  • デジタル資産サービス提供者に対し、不正利用を防止するための規制枠組みの導入を促す。
  • 懸念国を優先順位付けし、それに対処するための協調戦略を策定する。
  • パートナー国に対し、デジタル資産の不正金融に関する監督・執行・情報共有能力を強化するための技術支援を行う。

また、国際デジタル資産不正金融に関する国家戦略を策定し、進捗を毎年議会に報告します。

  • 世界的な脆弱性とギャップの評価
  • 多国間協調のための目標と期限
  • 戦略実行に必要な人員や体制
  • 外国当局が採用すべきデジタル資産向け不正金融対策の基準

第508条 問題のある国の不正金融に是正圧力をかける

取引が多い国を対象に、世界の暗号資産取引量と不正金融対応状況を毎年調査し、問題のある国に対して是正圧力をかけます。

財務省は以下を調査して、報告書を提出します。

  • 外国のデジタル資産サービス提供者のなかで、取引量が多い上位20の国・地域を列挙する。
  • 列挙した地域が「国際デジタル資産不正金融に関する国家戦略(第507条)」の枠組みに沿って、マネロン対策、制裁逃れ防止、テロ資金対策をどの程度実施しているかを評価し、重大な欠陥がある地域を特定する。
  • 取引量が米国にとってシステム上の不正金融リスクになり得る地域を特定する。

報告書には以下の結果も含めます。

  • 特定された国・地域について、欠陥を是正するために実施された外交・規制・法執行の内容
  • 高リスクまたは非協力的な地域の特定・監視・是正に向けた措置の概要
  • 特定された地域から得られた欠陥是正に向けた約束(期限や達成基準を含む)
  • 国家戦略(第507条)実施に向けた進捗評価

第6編 ソフトウェア・イノベーション

第601条 ソフトウェア開発者を保護する

ソフトウェア開発者やノード運営者について、それだけを理由に証券規制の対象としないことが明文化されます。

これまでは、DeFiを開発・公開しただけで、未登録の証券取引所運営で訴えられそうな不安がありましたが、その境界線が明確になります。

具体的には、以下の行為のみを理由に証券取引法の適用対象にはなることはありません。

  • 取引の中継、検証など
  • 計算作業(マイニング)、ノード・オラクルの運営、通信帯域の提供
  • 分散型台帳システム、自己管理型ウォレットの開発・公開・構成

SECは、以下の行為のみを行う者が証券法の対象とならない条件を、投資家保護・表現の自由・法的明確性を確保しつつルール制定により明確化します。

  • ユーザーインターフェース提供
  • 分散型ガバナンスの運営
  • メッセージングシステムや流動性プールへの参加
  • ウォレットの配布・管理

第602条 NFTは非証券

非代替性トークン(NFT)は、原則として「証券ではない」ことが明文化されます。

これにより、アート、会員証、チケットなどのNFTが証券扱いされる心配がなくなります。

NFTとは、分散型台帳に記録されたデジタル資産の中で、以下の特徴を持つものをいいます。

  • 個別に識別可能で、他のデジタル資産と区別できる。
  • 著作物、アート、コレクティブル、会員権、アクセス権、真正性証明書、アプリ内アイテム、その他これらに類する特定のデジタルまたは物理的な商品・サービス・利益に対する所有権を表す。
  • 他のトークンやデジタル資産と1対1で交換可能ではない。
  • 対価をもって購入、販売、または移転され得る。

原則として、NFTの提供・販売・転売は「証券」や「投資契約」とはみなされません。ただし、取引の実質が投資契約に該当する場合は、証券として扱われます。

以下のNFTは証券とみなされません。

  • NFTの再販売または二次市場での移転であり、転売代金がプロモーターに渡らず、新規資金調達に使われないもの
  • NFTがコレクション、会員権、イベントチケット、アクセス権など非投資目的で利用されるもの(値上がりの可能性や制作者の評判が価値に影響することがあってもOK)

以下はセーフハーバーが適用されない条件です。

  • 実質的に同一の特徴を有し、代替可能な形で販売される大量発行シリーズ
  • NFTの分割所有
  • NFTにひもづく資産に対する受益権や経済的権利を表す持分

第603条 NFTを調査する

議会直属の独立調査機関(GAO)は、以下の調査を行い、報告書を提出します。

  • NFTの性質、規模、役割、目的および利用実態
  • NFTとデジタル・コモディティ(ステーブルコイン含む)との共通点および相違点、市場の相互関係
  • NFT発行者がどのように発行・管理し、購入者に提供しているか
  • NFT購入者は、どのように保管しているか
  • 異なる分散型台帳におけるNFTの相互運用性
  • NFTマーケットプレイスのスケーラビリティ
  • NFTの利点(デジタル所有権を含む)
  • NFTのリスク(知的財産権、サイバーセキュリティを含む)
  • 既存の伝統的市場(音楽、不動産、ゲーム、イベント、旅行など)に、NFTがどのように統合されてきたか、また今後統合され得るか
  • 上記の統合が伝統的市場にもたらし得るリスク
  • 記録の手段(文書、本人確認、契約、ライセンスなど)として、NFTがどのように利用されてきたか、また今後利用され得るか
  • NFT市場における違法行為

第604条 開発者は送金業者ではない

ユーザーの資産を直接預からない開発者やインフラ事業者は送金業者とみなされないことが明文化されます。

以下の理由のみをもって資金移動業者として扱われたり、登録義務を課されたりすることはありません。

  • 分散型台帳関連のソフトウェアを作成・公開・メンテナンスする。
  • 利用者が自身のデジタル資産を保管するためのハードウェアやソフトウェアを提供する。
  • 分散型台帳サービスを維持するためのインフラ支援を提供する。

第605条 自己管理型ウォレットは禁止しない

米政府機関は「米国民が自己管理型ウォレット(セルフホステッド型ウォレット)を用いてデジタル資産を自己管理し、合法的な目的で取引を行う能力」を禁止、制限、または損なってはならないことが明文化されます。

自己管理型ウォレットとは以下の要件を満たすものをいいます。

  • デジタル資産を安全に保管し、移転するために用いられる
  • デジタル資産の所有者が独立した管理権限を保持している

つまり、自分の暗号資産は、自分で管理して使ってよいという条文です。

ただし、マネーロンダリングや制裁違反などの取締権限は引き続き残ります。

第7編 顧客資産を保護

第701条 業者破産時の顧客資産を保護する

取引所や仲介業者が顧客のために保有しているデジタル資産を、破産手続きにおける「顧客資産」に含め、破産法上の顧客資産として保護することが定められます。

破産法において、顧客が請求できる資産の範囲は次のように変更されます。

(変更前)現金または証券
(変更後)現金、証券、補助的資産、デジタル・コモディティ

これにより、顧客が預けた補助的資産およびデジタル・コモディティは、取引所・仲介業者が破産した場合でも、顧客資産として破産法に基づき分配される対象になります。

2022年のFTX破綻で問題となった「顧客が預けていた資産が取引所の破産財団に飲み込まれ、一般債権者と同じ扱いになって全額保護されなかった」という事態への反省を踏まえた条文です。

第8編 消費者保護

第801条 教育資料を提供する

デジタル資産仲介業者は、以下を含む教育資料を一般向けに提供することが義務付けられます。

  • 分散型台帳システムがどのように機能するかの概要
  • デジタル資産に共通するリスク
  • デジタル資産市場と伝統的金融市場との違い
  • ネットワークトークンや補助的資産がついてくる取引において、発生する報告義務・開示義務の説明
  • 詐欺的スキームを見抜くための方法、不正が疑われる場合の通報方法

第802条 消費者保護当局の権限を維持する

デジタル資産関連の新ルールを作っても、既存の消費者保護当局の権限はそのまま維持されることが明文化されます。

規制の穴が生まれないようにするための安全弁です。

本法のいかなる規定や改正も、以下の事項に関して、連邦取引委員会の権限を制限または縮小するものと解釈されません。

  • NFTまたはデジタル消費者トークンの取引に関連する不公正や欺瞞的行為についての調査・執行
  • NFTまたはデジタル消費者トークンの取引に関するベストプラクティスの提示
  • 責任あるイノベーションの促進
  • 詐欺的なデジタル資産活動に関する消費者教育
  • デジタル資産産業における違法な競争制限の調査

また、本法は消費者金融保護法に基づく既存の権限を拡大も縮小もしません。

第803条 投資家の金融リテラシーを高める

デジタル資産の金融リテラシーをどのように底上げするかを政府が調査し、具体的な戦略まで作成する条文です。

SECとCFTCは以下を調査し、報告書を提出します。

  • デジタル資産利用者の金融リテラシー水準
  • 両委員会が提供するデジタル資産の金融リテラシー資料について、提供時期・内容・形式を改善する方法
  • 他機関との連携を強化し、金融リテラシー資料をより効果的に普及させる方法
  • 農村部やマイノリティ層に焦点を当てた、現在の金融リテラシー施策の有効性
  • デジタル資産の購入前に、適切な金融判断を行うために必要な、最も有用で理解しやすい情報
  • デジタル資産に関する金融リテラシー提供において、最も効果的な官民連携の形態
  • 金融リテラシー施策の後、個人の金融リテラシーが向上したかを測定するための指標
  • 金融リテラシー・教育委員会と協議の上、測定可能な目標も含めて投資家のデジタル資産に関する金融リテラシーを高めるための戦略

第804条 破綻業者に開示義務を課す

SEC登録ブローカー・ディーラーは、顧客の資産を扱う前に、破綻手続きが行われた場合の顧客資産の取扱いについて、書面による開示を行うことが義務付けられます。

その際、以下の法制度のもとで暗号資産や支払用ステーブルコインがどのように扱われるか、および、証券や現金と比べて何が違うのかを説明します。

  • ドッド=フランク法 第II編
  • 1970年証券投資者保護法(SIPA)
  • 該当する場合、米国破産法 第7章または第11章

第9編 その他

第901条 デジタル資産の諮問委員会を設立する

SECとCFTCを連携させるための、公式な調整機関(合同諮問委員会)を設立します。

いままでデジタル資産は証券(SEC管轄)なのか、商品(CFTC管轄)なのかという縄張り争いが業界の混乱を招いてきました。この対立を解消し、両当局が協力するための調整役をする委員会が設立されます。

委員会は、デジタル資産のネットワークや関連活動を評価するための手法やベストプラクティスを策定します。

必要に応じて以下を含みます。

  • 技術的特徴
  • 経済設計
  • 市場の健全性
  • 投資家保護
  • 業務継続性

委員会のメンバーには、SECとCFTCがそれぞれ任命する形で、合計最大14名の民間委員(投票権あり)が含まれます。

  • デジタル資産市場参加者または関係者:2名
  • デジタル資産関連業務に従事する者:2名
  • デジタル資産に関する学術研究者:1名
  • デジタル資産の一般利用者:2名
  • 州の証券規制当局者:1名

民間委員には出張費(旅費・日当)は支給されますが、その他は無給です。

また、アメリカ国立標準技術研究所からは、助言的立場の委員(投票権なし)として参加します。

委員長はSECとCFTCが年替わりで交代します。

第902条 SECとCFTCで情報を共有する

SECとCFTCは、覚書を締結したうえで、インサイダー取引や相場操縦などの不正行為を逃さないために、情報を共有し、次を含む協調的な監督・取り締まりを行います。

  • SECの詐欺・相場操縦防止権限(インサイダー取引を含む)
  • CFTCの市場の健全性に関する権限

それぞれの規制当局が持つ強みを持ち寄り、デジタル資産市場の不正を共同で取り締まる仕組みです。

第903条 金融犯罪捜査網に予算を割当てる

金融犯罪捜査網(FinCEN)に対し、デジタル資産に関する政策立案、IT体制整備、マネーロンダリング対策などの法執行を担うための予算と専門人材確保の裁量を与えます。

今後5年間の予算は、3000万ドル×5年=1億5000万ドル(現在レートで約234億円)

また、高度な専門性を有する人材を確保するために必要と判断した場合、職位の年間基本給与の最大20%までをインセンティブ(特別手当)として上乗せできます。

暗号資産・ブロックチェーン分野では民間の報酬水準が高いことから、こうした手当てを認めることで、政府としても専門性の高い人材を確保し、デジタル資産の不正対策や監督を実効性のあるものにしようとする姿勢がうかがえます。

第904条 パブコメを実施して規則を制定する

施行後1年以内に、各規制当局はパブリックコメント(意見募集)を実施して、本法を実施するための具体的な規則を作ることを義務付ける条文です。

第905条 この法律の施行日

この法律は、成立日から360日後(約1年後)に施行されます。

ただし、規則制定(ルールメイキング)を必要とするものについては、次のいずれか遅い方に施行されます。

  • 成立日から360日後
  • 最終規則が連邦官報に公示されてから60日後

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