ビットコインの下降トレンドが続き、最近よく聞かれるのが「マイナーのAI転換は本当に問題なのか?」という疑問です。
マイニングを支えてきた計算資源や電力がAIデータセンターに向かうことで、ハッシュレートが低下、ネットワークが弱体化し、価格に悪影響が出るのではないか?
しかし結論から言うと、マイナーAI転換は短期的な心理悪化要因にはなり得るものの、長期的には構造的な売り圧を弱める可能性があります。
この記事では、その理由を解説します。
マイナーAI転換問題とは
マイナーAI転換問題とは、ビットコインのマイナーが使っている計算インフラ(電力・土地・設備)が、AIデータセンター向けへと奪われつつある構造変化のことを指します。
AIデータセンターは、AIを動かすために特化した超高性能の計算施設のことです。
AIの普及によってAIデータセンターの需要が急拡大するなかで、マイニング事業からAI関連事業へと軸足を移しているマイナーがいます。
下表は、2026年2月現在の世界上場企業ビットコイン保有枚数ランキングです。

上記10社のうち4社がAI転換をしています。
転換といっても、マイニングを完全にやめたのではなく、電力・土地・冷却設備といった共通インフラをAI向けに再配分しています。
・MARA Holdings
社名変更「Marathon Digital Holdings」→「MARA Holdings」
マイニングから「デジタル・インフラ」企業へ転換し、AI推論用コンピューティングを提供
・Riot Platforms
AI特化型データセンターへ転換
・Hut 8
社名変更「Hut 8 Mining Corp」→「Hut 8 Corp」
AIクラウド大手やビックテック向けに高性能計算インフラを提供
・CleanSpark
AI事業に本格参入
マイナーAI転換とハッシュレート低下
ハッシュレートとは、マイナー全体の1秒あたりの計算回数のことです。
ハッシュレートの変化を見ると、世界中のマイナーがどれくらい積極的にマイニングに参加しているかが把握できます。
長期的に見ると、ビットコインとハッシュレートはともに上昇してきました。
ハッシュレートの上昇はビットコインが長期的に信頼される資産になる上で重要な土台になってきたと言えます。

こうした背景から、マイナーAI転換が進むとハッシュレートが低下し、価格に悪影響が出るのではないかと懸念する声があります。
実際、マイニングに使われていた電力や設備の一部がAI向けに振り向けられれば、短期的にはマイニングに投入される計算資源が減り、ハッシュレートに下押し圧力がかかる可能性はあります。
過去を振り返ると、2018年にハッシュ戦争の勃発をきっかけに、ハッシュレートの急落とともに価格も大きく下落しました。
2021年には、中国政府がマイニング禁止し、ハッシュレートが半分以下に急落、価格も大きく下落しています。
直近のハッシュレートを見ると、2025年10月に過去最高を記録したあと低下傾向が続き、2026年1月には過去最高の約半分まで下がりました。
この背景には、米国の天候悪化によるマイナーの一時停止や、中国政府の取り締まり強化といった要因があり、マイナーのAI転換も一因と見られます。
AI転換によるハッシュレート低下は、過去に見られた環境や規制などのトラブルを原因とする一時的な低下とは異なり、マイナーの事業構造の変化によって生じる点が大地な違いです。
ここまで読んで、「結局どう考えればいいのか」をもう一度整理したい方は、YouTube動画も参考になります。
AI転換はビットコインの本質的な問題なのか
結論から言うと、マイナーAI転換はビットコインにとって本質的な問題ではありません。
確かに短期的には、マイナーがAI向けに計算資源を振り向けることで、ハッシュレートの伸びが鈍化したり、投資家心理が悪化したりする可能性はあります。その結果、価格が不安定になる局面もあり得ます。
しかし長期的に見ると、この動きはむしろポジティブな側面を持ちます。
これまでマイナーは、電気代や運転資金を賄うために、掘ったビットコインを継続的に売却せざるを得ない「構造的な売り手」でした。
それがAI事業によって安定したドル収益を得られるようになれば、その必要性は弱まり、マイナーによる恒常的な売り圧は低下していくと考えられます。
ハッシュレート低下で懸念されるセキュリティリスクの代表例は「51%攻撃」です。
51%攻撃とは、悪意あるマイナーがネットワーク全体の計算能力の51%以上を握り、不正取引を承認させる攻撃を指します。
ビットコインでは、累積の計算量が最も大きいブロックチェーンが正しいものとして採用されます。そのため、全体の過半数の計算力を持つと、誤った取引履歴を「正しいもの」として通してしまう可能性が生じます。
ただし、デューク大学のキャンベル・ハーベイ教授の試算によれば、ビットコインに51%攻撃をしかけるためのコストは9000億円を超えています。
さらに分析機関のCoin Metricsは、たとえ資金があっても数百万台規模のマシンを揃えることは物理的に不可能と指摘しています。
現在のビットコインのハッシュレートは依然として極めて高水準であり、仮に今後の成長が緩やかになったとしても、ネットワークの安全性や信頼性が直ちに損なわれる状況ではありません。
以上から、マイナーAI転換はビットコインにとって本質的な問題ではなく、AIと暗号資産が共存していく未来に向けた計算資源の最適配分と捉えるのが妥当でしょう。

