ビットコインの Sell in May(5月に売れ)は、むしろ買えの理由
Sell in May and go away(5月に売って市場から離れろ)
株に興味がある人なら、一度は聞いたことのあるこの格言
セル・イン・メイ(5月に売れ)
言葉の意味は分かりやすいですが、結構誤解されやすい格言でもあります。
そこでこの記事では、セル・イン・メイの正確な意味を説明したあと、セル・イン・メイはビットコイン市場にも当てはまるのか?について、株式市場での実績やシミュレーション、そしてビットコインのデータと比較しながら解説します。
セル・イン・メイの誤解
「セル・イン・メイ!」と聞くと、「5月は相場が下がりやすいから売って逃げろ!」と捉えられがちですが、実際の意味は少し違います。
この格言は、19世紀のイギリスの証券業界が発祥で、ロンドンの金融街で働く人々が夏はバカンスに出て秋に戻ってくるという習慣をもとに作られました。
本来の形は以下です。
Sell in May and go away, come back on St. Leger’s Day.
(5月に売って去れ、セントレジャーデーに戻れ)
St. Leger’s Dayとは、9月中旬に行われる競馬のビッグイベント「セントレジャーステークス」の開催日のことで、英国では夏休み明けの投資家が市場に戻る象徴とされていました。
つまり、セル・イン・メイの本来の意味は、「5月に売って9月中旬まで市場から離れたほうが、パフォーマンスが良くなる傾向がある」という格言です。
つまり、5月は危ないという警告ではなく、6月〜9月の軟調な市場を避けるための戦略です。
ということは、一流投資家は皆、6月〜9月の投資を避けているのかというとそうとも限らず、たとえばウォーレン・バフェットやレイ・ダリオはセル・イン・メイ戦略に関心を示しておらず、ファンダメンタルズを重視した長期ガチホ戦略をとっています。
実際のデータを見て見ましょう
ダウ平均株価の騰落率
1992年〜2021年のダウ平均の月別平均騰落率を見ると、5月は+0.34%
実は5月はプラスであり、むしろ6〜9月の方がパフォーマンスが悪くなっています。一方、10月以降は8ヶ月連続でプラスです。
※騰落率=その月に株価がどれだけ上昇または下落したかを示すパーセンテージ

ダウ平均株価の出来高
1992年〜2021年のダウ平均株価(インデックス株)の月別平均出来高を見ると、5月〜9月は全体的に取引量が少なく、特に「夏枯れ相場」の7月・8月は1年の中で一番少なくなります。
夏枯れ相場は、投資家が夏休みやバカンスに入って市場参加者が少なくなることで取引が低調になる薄商い状態のことをいい、突発的な材料に過敏に反応して急落しやすくい側面もあります。

上昇回数
過去30年で5月は19回上昇しており、6月・8月・9月の方が下落回数が多いという事実もあります。
以上から、5月の成績は悪くなく、下落リスクが特別高い月ではないといえます。

ちなみに下表は、米国株価指数S&P500の1992年~2021年です。5月はプラス、8月、9月はマイナスなのがダウ平均と同じです。

セルインメイ戦略のシミュレーション
では実際に「セル・イン・メイ」戦略を使ったら、どれだけ効果があるのか、次の2つのパターンでシミュレーションしてみました。
条件
- 1992年1月にダウ平均株価インデックスへ1万ドル投資し、2021年12月まで投資する
- A: ガチホ戦略(常に保有)
- B: セル・イン・メイ戦略(5月初に売却 → 10月初に買い戻す)
- 税金・手数料は考慮しない
結果
2002年から2019年までは、セル・イン・メイ戦略の方がガチホ戦略よりも高いリターンを記録していました。
しかし、2020年に入ると、コロナショックによって3月に株価が急落し、その後の経済対策によって急反発が起きましたが、セル・イン・メイ戦略では5月に売却して9月末まで市場から離れていたため、この反発相場に乗ることができず、ガチホ戦略がリターンで逆転する結果となりました。
納税を考慮すると、毎年利益確定のたびに税金が発生するため、セル・イン・メイ戦略は明らかに不利になります。

ビットコインにセルインメイは通用するか?
ここからが本題。暗号資産、特にビットコイン市場でこの戦略は有効なのかを見ていきましょう。
2010年からの月別パフォーマンスを見ると、5月は上昇割合 57.1%、平均騰落率 +19.76%で、他の月と比べて悪くもなく、良くもなくという状況です。
ダウ平均の6月はマイナスなのに対し、ビットコインの6月はプラスとなっています。
8月、9月は上昇の回数や出来高が目立って少なく、平均騰落率は唯一のマイナスの月です。

ビットコインの投資シミュレーション
- 2013年1月にビットコインに1万ドルを投資し、2025年5月まで投資する
- A: ガチホ戦略(常に保有)
- B: セル・イン・メイ戦略(5月初に売却 → 10月初に買い戻す)
- 税金・手数料は考慮しない
ガチホ戦略の最終資産は7748万ドル(113億円)、セル・イン・メイ戦略の最終資産は3703万ドル(53億円)の2倍の差となりました。
さらに、暗号資産では最大55%もの税金がかかり、利益を確定時の、買い戻しの際の元手が大きく減ることで最終資産は驚くほど減少します。
どれくらい減少するのかはこの記事では割愛しますが、引くほど減ります。

下表は2017年1月に投資を開始した場合です。

まとめ
セル・イン・メイは、「5月に売って9月まで市場から離れたほうが、パフォーマンスが良くなる傾向がある」という格言で、確かに株式市場のアノマリーとしては一理ある戦略ですが、市場環境や経済政策によって効果が大きく変わり、納税などの条件を加味すると、優良銘柄に長期投資した方が成績が何倍もよくなることも多いです。
特に、過去のビットコイン市場でセル・イン・メイ戦略をとっていたら、大きな機会損失を引き起していました。
今日も世界の通貨供給量(グローバルM2)が過去最高を更新しています。
今後の世界は、法定通貨の価値低下による世界インフレの波が再び起きる可能性があり、そんな中で「5月に現金化して10月まで様子見」という戦略が有効に機能するようになることはないでしょう。
私は、8月や9月に暴落が来たらMになってドルコスト平均で買い増す戦略でいきます。
Buy in M, Stack More Sats