暗号資産を相続すると税率が110%になることがある
2025年3月現在、日本の暗号資産取引の利益にかかる税率は最大55%ですが、倍の110%が取られるケースがあります。
所得を全部持っていかれることを税率100%と言いますが、
所得を全部持っていかれるだけでなく、追加でお金を払わなければいけないのが税率100%超です。
つまり所得するほどお金が減っていく。所得が無いほうがマシというやつですね。
暗号資産の税率が110%になるケースは相続税がからんできます。
相続税とは、亡くなった人の財産を相続した際に課せられる税金です。
相続財産の合計額から基礎控除を引いた金額を課税金額として、下表から相続税の税率が決定します。
課税金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2700万円 |
6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超 | 55% | 7200万円 |
以下、控除や段階ごとの税率などの細かいところは抜きに、ざっくりとした例え話をします。
例えば、時価100億円の暗号資産を保有しているAさんが亡くなって、それを全てBさんが相続し、相続税55億円を払うために暗号資産を全部売却したとします。
Aさんは生前に1000万円で暗号資産を買ったことが分かったので、売却益は99.9億円になり、下表から所得税は45億円、住民税は10億円になりました。
課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 | 住民税率 |
---|---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 | 10% |
195万円~330万円 | 10% | 97500円 | |
330万円~695万円 | 20% | 427500円 | |
695万円~900万円 | 23% | 636000円 | |
900万円~1800万円 | 33% | 1536000円 | |
1800万円~4000万円 | 40% | 2796000円 | |
4000万円超 | 45% | 4796000円 |
相続税55億円+所得税45億円+住民税10億円=110億円
Bさんは100億円分のビットコインを相続し、110億円の税金を納めることになりました。
これが暗号資産の税率110%現象です。
財務大臣が税率110%問題について言及(2025.2.28)
2025年2月28日の国会で、財務大臣が暗号資産の税率110%現象について、国会で初めて言及しました。
加藤財務大臣(金融担当大臣)
これは売却価格が相当高額であり、かつ、暗号資産の取得価額が売却価額に比して極めて小さく、売却価格のほとんどが売却益となるような場合、例えば、10億円で取得した暗号資産が65億円以上になったようなケース、あるいは2000万で取得した暗号資産が100倍に値上がりして20億円になったケース、こういったケースに限られるということに留意する必要があるということと、これは別に暗号資産に限るわけではないということでございます
下図は、10億円で取得した暗号資産を相続し売却したときの手元に残る金額のシミュレーションです。
たしかに、暗号資産の価格が約60億円を超えてから売却すると、手元に残る金額がマイナスになります。
10億円で暗号資産買うって、、レアケースのレア度が高すぎるやろ

財務大臣「これは別に暗号資産に限るわけではない」
所得より多く税金を払うケース自体が異常事態なので、もし、暗号資産に限らず、他の資産も税率110%になるケースがあるなら直ちに税制改正に取り掛かってもいいはずです。
この問題を放置し続けている理由は、別のところにありそうですね。
ちなみに、株、不動産、金は、暗号資産と税制が異なるのと、「取得費加算の特例」があるので、税率が100%を超えることはありません。
「取得費加算の特例」は、相続財産を相続開始から3年10か月以内に売却した場合、支払った相続税の一部を「取得費」に加算できる制度です。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得価格 + 取得費加算額)− 費用
取得費加算額=相続税×(相続資産の売却金額÷相続総額)
例えば、Cさんが生前に3000万円で購入した不動産をDさんが相続し、すぐに1億円で売却した場合、通常の譲渡所得は1億円−3000万円=7000万円で、相続税は約1400万円になりますが、
取得費加算額 = 1400万円×(1億円÷1億円) = 1400万円
譲渡所得=1億円 − (3000万円+1400万円)=5600万円
譲渡所得が減り税金を減らすことができます。