2025年の日本の暗号資産税制改正まとめ

2025年4月20日

アンゴロウ

ことの始まりは、2024年12月20日に発表された税制改正大綱

3 暗号資産取引に係る課税については、一定の暗号資産を広く国民の資産形成に資する金融商品として業法の中で位置づけ、上場株式等をはじめとした課税の特例が設けられている他の金融商品と同等の投資家保護のための説明義務や適合性等の規制などの必要な法整備をするとともに、取引業者等による取引内容の税務当局への報告義務の整備等をすることを前提に、その見直しを検討する。

令和7年度税制改正大綱

「見直す」ではなく

「見直しを検討する」

つまり、暗号資産税制を見直すかどうかを検討するということです。

世界一の最大税率とっとと見直せよ。という声が広がりました。

税制改正大綱に暗号資産の課税見直しについて記載されたのは実に9年ぶりです。

(2025.1.31)まずは金融庁で検証

暗号資産の見直し検討について、国会で加藤財務大臣がこう答弁しました。

【国会中継】衆議院予算委員会(2025年1月31日)

塩崎議員
「暗号資産に関する制度の再点検を進めていると承知しておりますが、2点確認させてください。この再点検というのは、与党の税制改正大綱、この内容を踏まえた内容か、そして、この検討はいつ頃までに結論が出るものか、お答えいただければと思います。」

加藤財務大臣
「まず1点目でありますけれども、まさしく与党における税制改正大綱、これを踏まえた議論でございまして、大綱の中においては大きく必要な法整備をするということと、あるいは報告取引業者等による取引内容の税務当局への報告義務の整備等をすることを前提に、その見直しを検討すると。それを踏まえて暗号資産について議論をさせていただいておりますが、暗号資産については決済手段としての利用も見られる一方で、実際には投資目的で売買されているということが多いという指摘、また、関連する取引の市場が健全に発展するためには、利用者保護等が図られ、国民から広く信頼を得られることが不可欠であるといった指摘もあると承知をしておりまして、こうした指摘を踏まえて、金融庁においては、本年6月までを目途に暗号資産に関する制度の検証を行うこととしており、昨年秋より外部有識者による勉強会を開催しております。で、この勉強会では、現在は法令上決済手段として位置付けられている暗号資産を投資対象として整理することが適切か否かなどについて、利用者保護等との様々な観点から幅広くご意見を伺うこととしております。この勉強会における議論、また、先ほどお話がありました諸外国の状況などを参考にしながら、現在進めている検証結果に基づき、先ほど申し上げた与党税制改正大綱も踏まえて、税制も含めて必要な対応を検討していきたい、かように考えております。

要約すると、6月までに金融庁が暗号資産の検証を行い、その検証結果をもとに財務省が暗号資産税制の見直しを検討する。

(2025.4.10)金融庁が検証結果を公開

金融庁が暗号資産制度の検証結果を公開しました。

検証結果の内容は、暗号資産を利用した詐欺や犯罪等のリスクに慎重な姿勢を示しつつも、Web3の発展は社会問題解決や生産性向上に資する重要な要素であると評価し、健全な発展に向けた環境整備を進めるという前向きな内容になっています。

暗号資産の分類を2つに分けて、異なる規制にする案が記載されています。

類型①は、プロジェクトが資金調達の手段として発行した暗号資産

類型②は、類型①以外(ビットコイン、イーサリアム、ミームコインなど)

①が分散化されたら②に移行することもあると書かれています。

暗号資産を2つに分類し、それぞれ異なる規制や税制を適用することは、制度を複雑にし、利用者の利便性を損なう原因になります。この点に金融庁が気づくかどうかが、今後の制度設計のカギになりそうです

今回の検証結果で不足している点は、暗号資産税制改正の必要性について金融庁の見解を何も記載していないことです。

30ページの資料の文章に「税」という文字が一文字もない

税制を見直すかどうかを検討するのは財務省の仕事ですが、現在の税制が日本の暗号資産産業の発展にどのような影響を与えているのか、見直すことでどのような変化が期待できるのかなどの材料がないと財務省は見直し検討ができないことでしょう。

(2025.4.15)金融庁が検討宣言

金融庁の堀本善雄氏が暗号資産の申告分離課税について国会で答弁しました。

村上智信議員
「暗号資産を申告分離課税にすることも考えるのか?」

金融庁 堀本善雄総合政策局政策立案総括審議官
「税制改正のプロセスに沿って暗号資産取引に係る課税を申告分離課税とすることの適否も含めて必要な対応を検討してまいりたい」

衆院財務金融委員会(2025年4月15日)