暗号資産の新制度「暗号資産仲介業・国内保有命令」まとめ

2025年3月9日

アンゴロウ
日経新聞

暗号資産仲介業は、2024年に金融庁が検討を開始した暗号資産の新しい業種です。

不動産仲介業の暗号資産版のような存在で、暗号資産を売りたい人と、買いたい人をつなぐ役割を担います。

現在、日本で暗号資産の仲介業をするには「暗号資産交換業者」として金融庁に登録する必要がありますが、暗号資産交換業者になるには資本金要件やセキュリティ要件をはじめ、非常に厳しい基準がもうけられています。

これだと、ゲーム会社などの事業会社が自社サービスで暗号資産を扱いたいと思ってもなかなかできないので、暗号資産交換業者よりも規制が緩く、登録しやすい「暗号資産仲介業」を作ろうという流れです。

暗号資産仲介業者はユーザーの暗号資産を預からずに、暗号資産交換業者に監督されながら事業を行います。

ブロックチェーンゲームやNFT関連サービスを提供する企業自ら暗号資産仲介業者になれば、ユーザーがアイテムや暗号資産を交換する仕様を導入しやすくなり、暗号資産産業の活性化とイノベーションの促進につながることが期待できます。

ブロックチェーン理念に反する愚策?

ブロックチェーンの特徴は、仲介業者などの第三者を介さずに直接ユーザー同士で取引できることであり、世界的にはブロックチェーン技術を利用して中央集権的な仕組みを減らし、分散型システムを活用する方向に進んでいます。

なので、暗号資産仲介業という中央集権的な制度を作るのは、ブロックチェーンや暗号資産の理念に反する時代の流れに逆行した愚策に見えます。

しかし、現実的には全ての人が自己管理で暗号資産を運用するのは難しいというのが現状です。

秘密鍵をなくすと資産を失う、詐欺師やハッカーに資産を奪われるリスクがある、技術的な知識が必要などの理由から、企業や一般ユーザーが安心して暗号資産を扱える仕組みはしばらく必要と考えられます。

そのため、日本独自の環境に合わせて暗号資産の普及を促進するための仲介という意味ではナイスな政策になる可能性があります。

こうして日本の企業や一般ユーザーに暗号資産とブロックチェーンの普及が進むと、おのずと自己管理で暗号資産を運用できる人も増え、将来的に分散型システムを活用した経済活動が活発化する流れになるかもしれませんね。

2. 資産国内保有命令

資産国内保有命令は、暗号資産交換業者が破綻したときに、国内の顧客資産が海外に流出するのを防ぐための命令です。

2022年に海外取引所のFTXが破綻し出金停止になりましたが、そのときFTX子会社のFTXジャパンも出金停止になり日本人ユーザーに不安が広がりました。

そのような事態に備えて、暗号資産の国内保有命令で、破綻した暗号資産交換業者が海外に資産を逃がせないようにしようという流れです。

チェックしておきたい点は、将来、日本で金融危機が発生して政府が預金封鎖を発令するときに、暗号資産交換業者の顧客口座も封鎖するために資産国内保有命令を使えるのかです。

加藤財務大臣、新制度について語る(2025.2.12)

衆院財務金融委員会(2025.2.12)

金融庁としては、デジタル技術の進展による新たな金融サービス取引が広がる中、委員からも御指摘がありました利用者保護の観点を確保しつつ、健全な資金決済システムを構築していくとともに更なるイノベーションの促進を図る。これが重要と考えております。

今回の制度見直しによって、利用者が安心して利便性の高い送金決済サービスが利用できる環境を実現したいと考えています。

金融庁が改正案公開(2025.3.7)

金融庁が暗号資産仲介業者と国内保有命令を含む資金決済法の改正案を公表ました。

⇒金融庁「資金決済に関する法律の一部を改正する法律案(2025年3月)

国内保有命令に関しては「事業破綻の恐れがある場合に限る」などの発出の制約が記載されていません。

そのため、日本政府が預金封鎖をするときに、金融緊急措置令と合わせて国内保有命令を発出することを想定した法改正である可能性は今回の発表でも消えませんでした。

暗号資産仲介業については、説明義務や広告義務は暗号資産交換業者を同様の規制を設け、「利用者資産を預からないため、財務要件は課さない」と記載されています。

財務要件は、事業者が一定の財務的な健全性を維持するために課される基準のことです。例えば、純資産は1000万円以上とか、一定額を法務局に供託するとかです。

暗号資産仲介業者を顧客資産を預からないので、財務要件は不要と判断されました。