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金融庁が金商法で暗号資産を申告分離課税(税率20%)に向けて動き始めた

2025年6月25日、日本の金融庁が金融審議会総会にて、暗号資産制度の検証結果の結論を発表しました。そのなかで金融庁は、暗号資産の規制を現行の資金決済法から金融商品取引法(以下、金商法)に移行することを選択肢の一つとして提案しました。

この動きが何を意味するのか。そして、なぜ暗号資産に対して申告分離課税(税率20%)を導入しようとしているのか。本記事ではその背景と意味について、金融庁の発表内容をもとに解説します。

目次

暗号資産市場の現状

まずは、金融庁の暗号資産の検証結果を説明します。

口座数が急増している

2025年1月時点で国内の暗号資産口座数は1214万口座に達しており、2019年からの6年間で933万口座も増加しました。また、暗号資産交換業者がユーザーから預かっている暗号資産と法定通貨の残高は、合計で約5兆円にまで膨らんでいます。

日本の暗号資産口座数の推移(2019年~2025年)

資金流入が拡大している

海外ファンドでは、暗号資産ETFを通じた資金流入が拡大しており、ビットコインETFを保有する海外の機関投資家は1200社を超えています。これらの投資家の中には、インフレ耐性を評価してビットコインを金と同様に資産分散の一環として保有する動きも見られます。

暗号資産ファンドの資金フロー

投資家の10人に1人が保有している

日本では投資経験者のうち7.3%、ネット系金融機関を利用している層に限れば10.2%が暗号資産を保有しており、これはすでに社債やFXの保有率を上回る水準です。

詐欺が多い

金融庁の相談窓口には月平均300件を超える詐欺的な暗号資産投資に関する相談が寄せられています。相談全体の1割を暗号資産が占めています。

金融庁の相談窓口に寄せられている暗号資産に関する受付件数

価格変動が大きい

ビットコインやイーサリアムは株や金よりも価格変動(ボラティリティ)が大きく、急な価格変動によって大きな損失を受ける可能性が他の投資商品よりも高いです。

ビットコイン、イーサリアム、金、S&P500、日経平均株価の価格推移グラフ

金商法への移行を提案

今回の発表で金融庁は、暗号資産に関する4つの課題を挙げました。

金融庁が掲げる暗号資産の課題一覧

①情報開示・提供の充実
②利用者保護と無登録業者への対応
③投資運用に関する不適切行為の防止
④価格形成と取引の公正性確保

これらの課題に対して金融庁が出した結論は

前頁の諸課題は、伝統的に金商法が対処してきた問題と親和性があり、金商法の仕組みやエンフォースメントを活用することも選択肢の一つ。

つまり、金融庁は暗号資産の規制を現行の資金決済法から金商法に移行することを選択肢の1つとして提案しました。

金商法は、株や投資信託、FX、デリバティブなど、金融商品全般の健全な取引を確保するために設計された法律です。その対象に暗号資産を加えることで、法的な保護や開示ルールが強化され、市場の信頼性が向上します。

暗号資産の規制が金商法に移行されると、暗号資産が株やFXと同じ金融商品として位置づけられ、利益に対する課税も同じ申告分離課税(税率20%)に統一されることになります。

さらに、暗号資産が法律上「金融商品」と認められたことで、金融庁が暗号資産をETFの対象として判断しやすくなり、ビットコインETFの上場が制度的に可能になります。

暗号資産を2つに分類を提案

規制見直しを図る対象を検討する場合、暗号資産の性質に応じた規制とする観点や取引等の実態面にも着目し、暗号資産を以下のような2分類(類型)に区分して検討することが考えられるか。

金融庁はすべての暗号資産を一律に規制するのではなく、次の2つの類型に分類して個別に規制を設ける方針を示しました。

  • 類型1:資金調達・事業活動型(例:ICOやIEOで資金調達をした暗号資産など)
  • 類型2:非資金調達・非事業活動型(例:ビットコイン、イーサリアム、ミームコインなど)

類型1(資金調達・事業活動型)は発行体が存在し、投資的性格が強いため、開示義務を課します。一方、類型2(非資金調達・非事業活動型)は発行者が存在しない、もしくは不明確なため、交換業者に情報提供を求めます。

このように、金融庁は性質・発行体の有無などで暗号資産を分類し、分類ごとに適切な規制を構築することを考えています。

ただし、類型1(資金調達・事業活動型)の暗号資産にはベンチャー的なプロジェクトが多く、過剰な規制はイノベーションの阻害になる恐れがあるため、「多数の利用者に働きかける場合」に限定して開示義務を課すという柔軟な対応が示されました。

金融庁の提案に対する委員の意見

金融審議会では、金融庁の提案に対して反対した委員はおらず、前向きな意見が相次ぎました。

今後議論になりそうな発言をピックアップして考察します。

富裕層だけが得をしてしまう

野澤議員:
まず暗号資産についてでありますけれども、この規制のあり方を見直しをされて、金商法上の金融商品として整理できるということであれば、すでに取引をしている金融機関でETFという形で個人の方も買えるようになるということで、個人にとりましても、機関投資家にとりましても、運用する商品の選択肢が広がるということでございますので、それに伴ってマーケットも厚くなっていくということであれば、非常にいい流れが期待できるんじゃないかなというふうに考えます。

一つ気になるのはですね、実は税の面でございまして、いま暗号資産を取引をされている富裕層の方ですね、こうした方は非常に大きなボラティリティに耐えうるような余裕資金を持たれて取引をされている。こうした富裕層の方が、結果として一番得をしてしまうということにならないのか。言ってみると、税の不公平というものが促進されてしまうようなことがないのかといったようなところが気になる点でございます。

発言内容をもとに野澤委員が気にしている点の具体的内容を推測すると、おそらく、総合課税を累進課税に変えると所得再分配機能が弱まるので、それが税の不公平を強めてしまうことを懸念していると考えられます。

現在の日本の暗号資産の税制は総合課税で、所得が高くなるほど税率も段階的に上がっていく累進課税になっており、最低税率は15%、最大は55%。つまり、所得再分配機能が強く働く仕組みになっています。

それを申告分離課税の税率一律20%にすると、どの所得層も一律で同じ税率20%が適用されるため、相対的に一番得をする層は富裕層という構造になります。

そのため、「富裕層は一番得をしてはいけない」、「富裕層の税負担は高くすべき」を前提として税制を検討する場合、暗号資産の税率は一律にせずに、累進課税を採用することになります。

しかし、申告分離課税(税率一律20%)は、株、FX、投資信託など金融商品に適用されている一般的な税制であるのと、税制度の目的は、特定の所得階層を優遇・冷遇することではなく、中立性と公平性を確保することにあり、暗号資産だけ累進課税にするのは「金融商品の種類の違いによる税の不公平」という別の不公平を生み出すことになります。

よって、野澤委員が望む、富裕層が一番得をしない税制にするには、株、FX、投資信託などの他の金融商品に適用している申告分離課税の税制自体を改正しなければ筋が通りません。

例えばアメリカでは、1年以上保有したあと売却した金融商品の利益にかかる税率は、所得水準に応じて0%、15%、20%の3段階課税になっています。低所得者は0%で資産形成のチャンスを広げ、高所得者の税率は高いけど、最高税率を20%に抑えることで、資本の国外流出を防ぎ、国民全体が投資に参加できるよう配慮しています。

ビットコインとイーサリアムはそのまま

岩下委員:
今回の議論の対象というのはこうしたビットコインやイーサリアムといった、メインストリームの暗号資産の取り扱いは基本的にそのままにして、いわゆるICOであるとかIEOであるとかですね。企業の資金調達のために暗号資産を使おうという動きがあって日本国内でもIEOが昨年数件出ているんでしたかね。そういう取引を日本国内でやるときに、やはり金商法的な規制を全く除いてしまうことのリスクの方が大きいのではないかと、そういう議論かと私は理解しています。

この発言は一見、類型1(資金調達・事業活動型)の暗号資産を金商法の対象とし、類型2(非資金調達・非事業活動型)の暗号資産は金商法の対象としない認識を示しているように読み取れます。

もしそうだとしたら、ビットコインやイーサリアムなどの類型2の暗号資産は法律上の金融商品にならずに雑所得の総合課税(税率最大55%)のままで、類型1の暗号資産だけ一律20%になんていう事態が発生し、税金計算が今よりさらに複雑になり、海外から笑いものになるのは想像に難くありません。

類型2コインの税率を下げるために、類型2コインをラップする類型1コインが登場しそうですね。

類型1コインを金商法の対象にするなら、類型2コインも同様に金商法の対象にするのが自然と考えられます。

申告分離課税(税率20%)は実現する

現在の日本の暗号資産の税率最大55%は世界一の税率であり、他の先進国ではキャピタルゲイン課税(おおむね20%前後)が主流です。世界では暗号資産を推進する国が増えており、こうした国際的な流れを見ても、日本がこのまま現行制度を維持するのは、もはや不可能です。

金融庁は今後、森下哲朗氏を座長とするワーキンググループを立ち上げ、制度設計の具体的な議論を進める予定です。

もし、今年2025年12月に発表される税制改正大綱に「暗号資産を申告分離課税に変更する方針」が明記された場合、早ければ2026年、遅くとも2027年には適用される可能性が高いと見られています。

なお、過去の店頭FXが総合課税から申告分離課税に変更されたときは、

  • 2010年12月に税制改正大綱に方針が盛り込まれ、
  • 2011年に法案審議
  • 2012年1月から新制度が適用されました。

まとめ

以上のように、金融庁は暗号資産の検証結果の結論を発表し、暗号資産が急速に普及している現状と課題をもとに、規制を金商法に移行する提案をしました。

現在、日本の暗号資産取引は世界的に見ても税率が高く、税制や規制が成長の足かせとなっていました。しかし、今回の金融庁の方針は「規制強化」ではなく「制度整備」であり、適正な枠組みを構築することで市場の透明性と成長を両立させるものです。

日本はGDP世界第4位、法定通貨の時価総額も世界第4位という経済規模を持っています。その日本が、暗号資産の税制を投資促進型に見直せば、世界の投資家からの注目が集まり、ビットコインをはじめ暗号資産市場に強い追い風が吹くでしょう。

日本は暗号資産の税率最大55%を維持するのはもはや不可能の状況であることから、申告分離課税(税率20%)は実現し、ビットコインETFが上場、日本に追い風、世界が注目、ビットコイン爆上げです。

ムーン🌕

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • 申告分離課税20%!!
    待ち遠しくて待ち遠しくて(๑•̀ㅂ•́)و✧

    わたしま〜つ〜わ♪̊̈
    いつまでも〜ま〜つ〜わ♬.*゚

    あ、いつまでも待てないわw
    2026か2027に実現してほしいです

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