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金融庁が「銀行と暗号資産の暗号資産保有」を認める提案を発表

2025年10月22日、金融庁「暗号資産制度に関するワーキング・グループ(第4回)」が開催されました。🏦

暗号資産制度の見直しを検討する有識者会議👓

この会議に日本の未来がかかっています。

まずは配布資料を紹介します。

資料1「メンバー名簿」

ワーキンググループのメンバー名簿です。

第3回での岩下委員の要望を受けて、今回から消費者庁がオブザーバーとして参加することになりました。

資料1

資料2「サイバーセキュリティに関する取組み」

金融機関と暗号資産交換業者のサイバーセキュリティ対策の現状と方針を説明した資料です。

資料2

資料3「第4回暗号資産制度に関するWG説明資料」

日本暗号資産取引業協会(JVCEA)における暗号資産情報の確認体制、体制強化の取り組みをまとめた資料です。

資料3

資料4「暗号資産に係る規制の見直しについて」最重要

金融庁が暗号資産に関する制度・規制の見直し方針を説明した文書です。

資料4

以下は資料4のテーマです。

① 業規制
  (A)基本的な方向性
  (B)兼業規制
  (C)利用者財産の管理
  (D)責任準備金
  (E)業務管理体制
  (F)退出時における顧客財産の返還
  (G)仲介業規制
  (H)銀行・保険会社による暗号資産取扱い
② 無登録業者への対応
③ 海外業者・DEXの取扱い
④ 不公正取引規制
⑤ 金融リテラシーの向上

以下に、資料4の内容をテーマごとに軽く説明します。

①業規制(A. 基本的な方向性)

業規制は、事業者の業務に対して定められる法的ルールです。

前回までに決まった暗号資産規制の基本的な方向性は、暗号資産交換業には証券会社(第一種金融商品取引業)と同様の規制を適用することです。

また、自主規制団体が定めているルールのうち、重要で普遍的なものは法律レベルに引き上げることになりました。

つまり、暗号資産交換業と金融商品取引業の規制をミックスした規制を作ることになりました。

①業規制(B. 兼業規制)

兼業規制は、本業以外の事業を行うときに適用される法的ルールです。

本業以外の事業の失敗が本業に悪影響を及ぼさないようにするために存在し、証券会社にはすでに適用されています。

金融庁は暗号資産交換業にも証券会社と同様の兼業規制を導入することを提案しました。

①業規制(C. 利用者財産の管理)

現在の暗号資産交換業者は、顧客資産をコールドウォレットで管理し、顧客資産と会社資産を分別管理することが義務付けられています。

ホットウォレットで管理する顧客資産は、流出時に補填できるよう同量の暗号資産を保持することも義務付けられています。

金融庁は引き続き上記の義務を課すのに加え、利用者財産の安全管理義務を定め、サプライチェーン全体を含めたより包括的なセキュリティ対策の強化を求めることを提案しました。

①業規制(D. 責任準備金)

責任準備金は、顧客に損害が発生したときに支払うための「備えの資金」です。

金融庁は、第一種金商業者と同様に、暗号資産交換業にも責任準備金の積立てを義務付けることを提案しました。

ただし、顧客資産の流出発生時に迅速な顧客対応が行えるよう、規制当局の承認を得ずに責任準備金による補償ができるようにすることと、保険加入による補償原資の確保を認める提案をしました。

①業規制(E. 業務管理体制)

業務管理体制は、会社が安全かつ公正に事業を行うための内部管理の仕組みです。

現在、暗号資産交換業者は、犯罪行為の疑いがある取引を停止するなど、利用者保護と業務の適正な運営を確保する措置を講じる義務が課されています。

金融庁は暗号資産交換業者に金商法と同様の業務管理体制の整備を義務付けるのに加えて、以下を義務付けることを提案しました。

  • 取扱う暗号資産の審査
  • 顧客のリスク確認
  • 売買監視
  • 違反発行者の暗号資産の排除

①業規制(F. 退出時における顧客財産の返還)

業者が事業をやめるときに、顧客の資産を確実に返すためのルールです。

現在、銀行や保険会社は経営悪化時に第三者の管理人を選任し、顧客に資産を返還する制度がありますが、金融商品取引業にはそのような制度はないため、同様の仕組みの導入が検討されています。

金融庁は、暗号資産交換業者もこのような仕組みの適用対象とすることを提案しました。

①業規制(G. 仲介業)

仲介業規制は、取引当事者の間に立って媒介や取次ぎを行う事業者に対するルールです。

今年新たに「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」が創設され、暗号資産交換業者でなくても取引を仲介できるようになり、参入障壁が下がりました。

金融庁は、暗号資産仲介業を金商法上の仲介業規制の対象にすることを提案しました。

①業規制(H. 銀行・保険会社による暗号資産の取扱い)

現行法では、銀行や保険会社が暗号資産を保有・取引することは禁止されていませんが、金融庁の監督指針において「暗号資産の取得・保有は必要最小限度の範囲に留め、投資目的での保有は禁止」となっています。

金融庁は、銀行と保険会社本体による暗号資産の発行・売買・仲介については「慎重な検討が必要」として許可しない方向を示しました。

一方、投資目的での暗号資産の保有については「銀行・保険会社に分散投資の手段を提供する観点から、投資目的での暗号資産の保有を認めることとしてはどうか」という提案をしました。

②無登録業者への対応

無登録業者とは、金融庁に登録せずに日本居住者相手に暗号資産交換業をしている業者のことです。

無登録業者は顧客資産の管理が不十分だったり、高利回りをうたう詐欺的な勧誘を行ったりするケースがあり、横行すると健全な市場取引が損なわれます。

金融庁は、無登録業者による違法な勧誘を抑止するため、刑事罰を強化することを提案しました。

また、以下の提案も行いました。

  • 裁判所や証券取引等監視委員会による無登録業者に対する緊急差止命令と調査権限を整備
  • 民事効規定を創設する
  • 投資運用や助言も投資運用業・投資助言業の対象とする
  • 顧客がアンホステッドウォレットや無登録業者に送金するときに、警告・目的確認・モニタリングを行い、新規送金先には熟慮期間を設けることを義務付ける

③海外業者・DEXの取扱い

海外業者が日本居住者を相手に暗号資産交換業をするときは、原則として金融庁への登録が必要であり、海外の未登録業者がインターネットに日本語ホームページを開設し、投資勧誘をしていることが確認された場合、金融庁は警告・公表・アプリストアへの削除要請などを行っています。

金融庁は、引き続き上記の対応を行うとともに、外国規制当局との調査・協力の強化を講じることを提案しました。

一方、DEX(分散型取引所)については、現在、一定のDEXは規制対象外になっていますが、各国の規制も注視しながら、DEXの規制のあり方について継続検討するとしました。

④不公正取引規制

不公正取引規制は、市場の公正性と投資家保護を目的に、インサイダー取引や相場操縦、風説の流布など、投資家に不利益を与える不正な取引行為を禁止・制限する制度です。

前回WGで議論され、指摘事項を反映した見直し案が報告されました。

以下は、不公正取引規制について金融庁が提案した内容です。たくさんあるね。

  • インサイダー取引規制は、有価証券の規制をベースに暗号資産の性質に合わせて調整する
  • 規制対象の暗号資産は「国内の暗号資産交換業者で取扱われる暗号資産」とし、DEXやP2Pでの取引も規制対象とする
  • 取扱い申請がされた段階の暗号資産も規制対象とする
  • 重要事実に接近できる者が、特別な立場によって内部情報を知った場合を規制対象とする
  • 重要事実に当たる具体的な事例を列挙したうえで、想定外の事象にも対応できるようバスケット条項(包括規定)で補完する
  • 規制対象者は「類型①発行者の関係者」「暗号資産交換業者の関係者」「大口取引者の関係者」でどうか
  • 有価証券と同様に、重要事実に応じた公表主体(類型①発行者、暗号資産交換業者、大口取引者)を定め、暗号資産交換業者やJVCEAで公表する
  • 暗号資産の原始取得(新しく発行された暗号資産を発行者から最初に有償で取得する行為)は禁止行為にすべきか
  • どの暗号資産が国内取引所で取扱われているかJVCEAが一覧を提供する
  • 取引者が「重要事実を知らなかった」と立証した場合は規制の適用除外にするのはどうか
  • 未公表の重要事実の伝達・取引推奨を禁止する
  • 罰則は、有価証券の罰則と合わせて「五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金」
  • 禁止規定への違反について、証券取引等監視委員会による犯則調査の対象とし、課徴金規定を設ける
  • 暗号資産の相場操縦行為も今後整備する
  • 暗号資産特有の不正行為については既存の法律(不正行為の一般禁止、偽計取引の禁止)で対応し、新たな不正行為が生じたら、必要に応じて新たな規制を検討
  • 暗号資産に課徴金制度を創設することが適当ではないか。その際、P2PやDEXなど暗号資産の特徴を踏まえた制度設計が必要
  • 実効的なエンフォースメントのため、暗号資産交換業者による売買審査、自主規制機関(JVCEA)による市場監視体制の抜本的強化が必要
  • 不公正取引規制の実効性を確保し、違反行為への抑止力を高めるために、犯則調査権限・課徴金制度の創設と調査権限を設けることが適当
  • 暗号資産は国境を越えて取引されやすく、海外投資家による不公正取引への対応には外国当局との協力が不可欠である。金商法第189条に基づき、暗号資産取引も相互主義の下で外国規制当局への調査協力対象とすべき

⑤金融リテラシーの向上

金融リテラシーは、お金に関する知識や判断力のことです

金融庁は投資家がリスクと投資商品を十分に理解し、リスクを許容できる範囲で投資できるようにするため、暗号資産交換業者に対し、投機的な取引を誘う表示の禁止やリスク周知の徹底を求めることを提案しました。

また、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の教材を活用・改訂し、詐欺的な暗号資産勧誘や金融トラブルを防止する教育を強化することを提案しました。

資料4の説明は以上です。

次に、委員の発言内容を要約します。

実際の発言全文(文字起こし)は以下のボタンから読めます。

目次

永沢 裕美子委員

①業規制(D. 責任準備金)

  • 過去の流出事件で、顧客の泣き寝入りに終わった残念な事件を踏まえると、流出事案への速やかな対応は大変重要である。
  • 保険加入の義務付けについては、保険が実際に成り立ち得るのか課題はあるが、保険の仕組みを作って対応することは必要

①業規制(H. 銀行・保険会社の暗号資産取扱い)

  • 世の中で起きている色々な事件を考えると、銀行・保険というところが揺らぐようなことがあってはならないため、金融庁の提案に賛成

②無登録業者への対応

  • 刑事罰の強化について、懲役「5年」ではなく「10年」にならないか。5年では執行猶予になって結局そのままということが多い。
  • 民事効の創設について、この分野の被害は未公開株詐欺にも勝るとも劣らない状況のため、被害トラブルからの早期に関わっている気の毒な方を解放するために意味がある。
  • 市場参加者を保護するために、より良い取り組みをしている団体を名前リストを公表するなどして応援し、市場をより良いものにすべき

⑤金融リテラシーの向上

  • 「需給関係によって決まる傾向が強い」という文言について強い違和感がある。暗号資産は基本的に需給関係によって決まる。
  • この分野は教育より啓発。自己責任が全うできない人が入らないようにすることや無登録業者への注意喚起を考え、J-FLECや金融教育に関わっている人々と協議をして実効性のある教材の開発が必要
  • 暗号資産のテレビ広告やつり革広告は、なんとなく良さそうみたいな感じで自己責任を全うできるとは言えないような人を広く誘うような広告だと思う。

河野 康子委員

セキュリティ

  • ブロックチェーン技術は安心の源であると同時にリスク要因でもある。流出事案対策である「3線管理」の徹底など、ガイドラインでの注意喚起と個別の対策強化を着地点とすることが妥当

①業規制(H. 銀行・保険会社の暗号資産取扱い)

  • 暗号資産の従前からのリスクは変わらず存在しており危惧は残っている。海外の無登録事業者やDEXなどと比べ、銀行・保険グループは相対的に社会からの信用度が高い。参入にあたっては財務内容や既存の金融システムとしての社会への影響を十分に考慮し、一定の規制をかけつつ健全な体制整備を行うべき

⑤金融リテラシーの向上

  • スマホ1台で簡単に取引が成立する暗号資産に対しては、その特性に留意しての啓発をしっかりと進めるべき
  • 金融経済教育推進機構の取り組みに留まらず、消費者庁や国民生活センター、銀行や保険会社などの金融サービス業者、暗号資産決済を導入している大手デジタルプラットフォームにも協力を仰ぎ、他方面からのアプローチをすべき

有吉 尚哉委員

①業規制(A. 基本的な方向性)

  • 金商品取引業と資金決済法を合算して規制する方向性は賛成だが、暗号資産交換業特有の状況もあると思うので、そういった部分をよく反映する必要がある。
  • 規制を足し合わせた結果、重複が生じて過剰規制にならないようにする必要がある。
  • 宣伝広告のあり方も証券会社とは違う方向でされているので、これまでの広告のあり方がどうなのかも含め、暗号資産業界の特殊性を考慮して検討すべき

②無登録業者への対応

  • あらためて、海外の業者を含めて無登録業者による暗号資産の販売が違法行為であるということは強く周知をすべき。
  • SNSや書籍を通して無登録業者からしか入手できない暗号資産の紹介をする行為が「違法行為の片棒を担ぐ不適切な行為」であることの認識が世の中に広まることを期待する。

③海外業者・DEXの取扱い

  • 現時点では制度的な手当ては行わないと理解したが、継続検討していくべき論点である。
  • DEX開発者・設置者・DEXにつなぐ業者などの行為が暗号資産交換業に該当する場合もないわけではないので、取りまとめの報告では「DEXについて現在の規制が全く及ばない」というニュアンスにならないよう表現に注意すること

④不公正取引規制

  • 「取扱い申請段階の暗号資産もインサイダー取引規制の対象に含める」方針について、取引者は業者が取り扱っていない暗号資産が、取扱い申請がされているのかを確認することは事実上不可能であり、インサイダー取引規制の対象なのか判明できない事態が生じかねない
  • インサイダー取引の重要事実について、暗号資産が定義上、決済手段の性質があることも意識して重要事実を考える必要がある
  • 例えば、サービスの決済にだけ使われる暗号資産の場合、サービス廃止やアップグレードが暗号資産の価格に大きな影響を与え得るが、そういった情報も重要事実として取り扱うべき

⑤金融リテラシーの向上

  • 暗号資産に関する啓発活動はぜひ進めてほしいが、貯蓄から投資への流れの中で投資商品の一つとして暗号資産投資を促すということでは全くなく、基本的にはトラブル防止、自己責任の観点から説明されるべき
  • 「暗号資産が投資信託などの伝統的金融商品と同等のもので、リスクを理解した上で積極的に投資してほしい」、このような誤ったニュアンスにならないようにすること

セキュリティ

  • 自助と共助のバランスを取って対応していくことが重要であり、規制当局と自治体団体にリーダーシップを発揮していただき、業界全体としてうまく進むように取り組んでいただきたい

小川 恵子委員

①業規制(D. 責任準備金)

  • 暗号資産の場合、伝統的な証券とは異なる非常に多岐にわたる、また拡大性がすごく大きいといった特質があるので、積み立て比率をいくつにするのかの議論は非常に重要である。
  • 過度に積み立てると経営を圧迫するので、実態調査、実効性を踏まえ、流動性・安全性・運用性の観点からきっちりと定義づけ、何パーセントにするのかをガイドライン等で明確にすべき
  • 責任準備金の各業者での社内の資金留保は一定の限界が出てくるので、サイバー等保険は積極的に活用すべきといった記載も必要である

①業規制(F. 退出時における顧客財産の返還)

  • 暗号資産の特性を十分に織り込んだ制度設計というのはかなり多くの論点があると想定される。
  • 金融商品取引法の投資者保護基金について、この制度自身は企業の破綻・倒産に生じるリスクを想定しているが、ハッキング・不正流出・サイバーアタック・システム障害こういったものもどこまで保護対象とするか、十分議論をすべき
  • ボラテリティが非常に大きな暗号資産が対象なので、どの時点を保証額の評価確定基準日とするのか。
  • 暗号資産業者自身に過失が明らかに認められるような場合でのハッキング流出の場合に、どこまで共通基盤で補填するのか

①業規制(E. 業務管理体制)

  • 「顧客がリスク負担能力の範囲内で取引を行うことを確保するための確認体制」とあるが、金融リテラシーの向上と合わせて、暗号資産の特性を踏まえてより実効性ある具体的な制度整備の検討が必要
  • 暗号資産のように影響の拡大が速いデジタルトランザクションの統制は、有効な予防統制の実装が極めて重要。
  • 例えば、日時取引のキャップ、レバレッジの上限、短期頻度取引による過剰損失発生、深夜連続アクセス等のリスクトリガーと連動した制御機能の実装または自己排除機能実装など、デジタルリスクの特性を踏まえて一定のリスク制御機能の実装を求める必要がある
  • イギリスなどが導入しているクールオフ機能(一定期間内であれば理由を問わず契約キャンセル可)は、投資の自己責任もしくは市場効率・機会損失・金融の国際競争力こういった阻害を担ってもならない

①業規制(銀行・保険会社の暗号資産取扱い)

  • G-SIFIs(国際的に重要な金融機関)などの動向を踏まえると、ステーブルコインとトークンの経済化における銀行・証券・信託といった業態を超えたデジタル統合金融サービスの議論がすでに始まっていることも考えるべき
  • デジタル決済手段としてステーブルコインが今後一気に広まると、同時にオンラインのデジタル上で全ての金融サービスが完結し、スピーディー・安く・利便性が高い金融サービスの新規創出。これは国際的にも競争が加速していく。我が国としてもビジネス競争でどういった形でサポートしていくのかも同時に考えていく必要がある
  • リアルワールドアセットのブロックチェーンでのトークン化は日々金融サービスでの開発が進められている。トークンに多種多様な価値が乗っていく暗号資産は何を指すのか明確に議論をしながら分析を進めていく必要がある。
  • セキュリティトークンは今回の暗号資産の定義で類型①に該当すると考えられる。銀行法の業務範囲規制・利益相反規制・資本規制こういった元の銀行法・証券法・取引規範などの背景から既存の銀行証券の間のファイアウォールの観点は矛盾なく守るべき
  • デジタル統合基盤の議論はもうすでに避けられない状況。金融グループでの分業モデル、信託モデル。グループ共有の金融プラットフォーム型のビジネス開発など、金融サービス発展の観点からも、制度的に各種明確に整備していく必要がある
  • デジタルトークン市場での統合監督体制これも新たに新設するなどの検討も考える必要が出てくる
  • リテールビジネス(一般の個人向け)と、コーポレートビジネス(企業向け)ではリスクが大きく異なる。海外では新規ビジネスはまずリテールには手が届いておらずコーポレートから始まっている。リテールとコーポレートビジネスを一体で考えるより分けて、リスクの許容度も含めて規制も整備していく必要がある

大槻 奈那委員

①業規制(A. 基本的な方向性)

  • 暗号資産市場はある程度確立しているところであって、そもそも過度な負担を業者にかけることで減衰させるってことがこの議論のスタート時点ではない。市場の健全な発展と利用者保護。この両方を目指すということであった
  • 国際競争力の維持向上という点にも配慮しつつ議論を進めていくべき

①業規制(B. 兼業規制)

  • 他業界が暗号資産分野に参入する場合は、その業界の管轄である省庁と連携するべき。

①業規制(D. 責任準備金)

  • 投資家保護に加え、補償の整備は業者の差別化にもつながるため、推進は双方に有益である。ただし、銀行のように補償上限の設定など、適正レベルを議論する必要がある。
  • 短期で流動性を確保する運用が重要である。

①業規制(H. 銀行・保険会社の暗号資産取扱い)

  • 銀行・保険会社の子会社による暗号資産仲介には賛成。ただし、連結上のオペレーショナルリスクへの対応次第では銀行の負担が増す可能性があるため、指針の検討を求める。

③海外業者・DEXの取扱い

  • 海外との調査協力の強化は重要だが、相対で各国との取引交渉では限界があり、新興国も対象になるので、国際的な組織化、対話が必要

④不公正取引規制

  • 実効性確保について、人的リソース、設備など、キャパシティについてはよく考えるべき
  • 投資セミナーやオンラインサロンが投資運用助言業務に当たるかどうか、ガイドラインを設けるとともに調査権限の付与によってエンフォースメントを確保すべき

⑤金融リテラシーの向上

  • 先ほどの広告の話について、個人的に今の時点で過度なものになっているとは思えない。日本は、株式以外、個人が投資する対象が他の国に比べても先進国の中だと少なくなってしまっている中で、それの行き先が暗号資産かどうかはもちろん議論はあるが、より広い投資機会を与えるという観点も重要である
  • この業界の特徴は市場の経験値が非常に低いのでボラティビティが高い。2013年のボラティリティと比べれば相当小さくなってはきている。市場が若い、経験値が低いことに伴うリスク面もあわせて啓蒙すべき

松尾 真一郎委員

①業規制(A. 基本的な方向性)

  • 事務局資料では、情報提供は暗号資産交換事業者やJVCEAが行うとしているが、現状十分なセキュリティやガバナンス体制があるのか確信を持てる証拠が示されていないため、事務局の全体の方向性に賛同できる状況ではない。

①業規制(H. 銀行・保険会社の暗号資産取扱い)

  • 銀行が暗号資産を保有した場合、バーゼル規制により1250%のリスクウェイトが課されることを考えると、銀行にとって保有するインセンティブはほとんどない。

④不公正取引規制

  • なぜ私が「類型①②を分けず横断的規制にすべき」、「情報提供主体の中立性・独立性」を再三再始申し上げてきたのか。この危機感が事務局に伝わっていない。
  • 類型①と②に分けると、規制のすき間(アービトラージ)が生まれ、不正利用の余地が生じる。暗号資産は類型が動的に変化し得るため、分類によって価格変動や利害関係が発生し、判断権限を持つ者が新たなインサイダー的立場となるおそれがある。そのため、分けずに横断的に規制すべきである。
  • 現在の事務局案では、その判断にJVCEAが大きく依存する。前述した理由により、JVCEAが関与するのであれば、その理事、役員そして役員を送り込んでいる企業の役員は、暗号資産の保有の禁止や制限そして売買の禁止を課すことが必要
  • JVCEAに依存するガバナンスを構築するなら、関連企業との利益相反を完全に排除すべきで、それができないなら、私が第2回で提案した中立で独立した情報提供機関を作る必要がある
  • JVCEA関係者が暗号資産を保有していれば、価格への影響を意識し、情報提供にバイアスがかかる可能性がある
  • 交換業者やJVCEAのウェブサイトを重要なツールとして考えていることに、委員として認められない。残念ながら実際にそのようなサイトの情報はほとんどの人が見ていない。利用者保護上クリティカルな情報提供においても、このようなウェブサイトを作るという考えが引き継がれるようなことはあってはいけない。

セキュリティ

  • JVCEA資料のこれまでの取り組みとしてチェックリスト化があるが、ISO/IEC 27000シリーズのフレームワークを学んだ普通のセキュリティエキスパートであれば、このような画一的なチェックリストでは目的を十分に果たせないことは常識である
  • JVCEA資料「JP Crypto ISACの連携」に「意識も含めた基盤強化」とあるが、それよりも広範囲で実践的なものであり、前回の私の発表を正しく理解していなかったことがわかる
  • 前回の私のプレゼン資料(P3)の内容をどう実装し、実現するかがセキュリティ確保のために重要なことであり、他の業界は当たり前にやっていることだ
  • 世の中で売られているハードウェアウォレットはセキュリティレベルが確認済みだと思っているかもしれないが、それは事実ではない。ISO/IEC 15408やFIPS 140-3が認証の仕組みにあたるが、セキュリティ評価に必要な基準の定義STPPがウォレットによってはまだ定義されていない。

その他

  • 暗号資産交換業者には取引所と販売所があり、販売所のほうがスプレッドが大きい。アプリで販売所にアクセスしやすい設計になっていると、利用者が無意識に不利な取引誘導され、金商法の投資家保護規定の問題になる。
  • 1週間前に米国の関税政策をきっかけに暗号資産が急落した。暗号資産の世界は24時間動くため、日本人の就寝中に発生したら日本人がより多くの損を被ることになる。必要な情報は津波警報のようなものが必要。事務局案が単なるウェブサイトでの通知に留まるなら反対を表明する。

松井 智予委員

①業規制(H. 銀行・保険会社の暗号資産取扱い)

  • 暗号資産を銀行が扱う場合、「銀行の健全性リスク(暗号資産価格の変動によって銀行自身の経営が不安定になるリスク)」と「社会的リスク(銀行がやっているなら安心だと誤解して、一般の人が安易に暗号資産を買ってしまうリスク)」の2種類のリスクがある。社会的リスクの対策はできても、健全性リスクは残る。
  • 健全性リスクが解決不能であるとなってしまえば、銀行が暗号資産を取り扱う余地がないということになりそうなので、リスクごとにどのような資産を持ち、どのような管理体制を整えるべきかを検討する必要がある
  • マネロン関与、システム不具合、悪評など、企業全体に影響するリスクは現在の銀行の損失リスクとして扱われる。暗号資産の不確実要因や被害の大きさといった特殊性から従来の体制では損失を吸収できないないのであれば大きな障壁になるが、マネロンリスク等の水準が経時的に見極められてコントロールできるようになった場合は、懸念点は解消できる
  • 暗号資産が類型①②のどちらに当たるのかによって重要事実が変わる点や、規制の適用範囲が利用者から見えにくいなどの課題がある。情報提供に際して、規制の対象となるかどうかに加え、発行数・分散性・流動性・性格の情報提供もあるといい

岩下 直行委員

①業規制(H. 銀行・保険会社の暗号資産取扱い)

  • 従来、暗号資産は伝統的金融からは隔離されてきて、これを伝統的金融に段階的に統合していこうという提案だと思うが、暗号資産の構造的リスクを考えれば、全面的な制度統合というのはもっと慎重に考えた方がいい
  • 伝統的金融が暗号資産に深くコミットしようとするインセンティブはそんなにないように私は思う
  • 何となく今回の事務局提案自体が本当に完全に統合して良いものかという、ためらいを感じる。制度として構成しながら、業務的には実際に距離を置くという、さじ加減の難しさというのがあるかなと思う
  • 現代の政策は暗号資産の構造的リスクを前提としつつ、伝統的システムが汚染されないよう防御線を引いている。伝統金融の立場からすると、暗号資産ビジネスに慎重な姿勢を取っているのは割と当然なことであり、そういう取り組みと矛盾する方向に誘導することは適切ではない

④不公正取引規制

  • 暗号資産の価格形成はグローバルかつ匿名的に行われる以上、国内法制だけでインサイダー取引や価格操縦などの不公正取引を完全に防ぐことは不可能である。現実的に国内法で対応できるのは、国内で発行・売買されるICOトークンなどの一部に限られるだろう
  • 対策を講じることには一定の抑止効果があるので、講じること自体は反対ではない
  • 報告書では「これによって根絶できます」みたいな誤解を与えないようにすべき

セキュリティ

  • マネーロンダリングやテロ資金などのリスクについて、JVCEAから「対策を講じている」と説明があったが、現実にはその対策はほぼ機能しておらず、実際に世の中で大量の交換業者を通じた不正送金が行われ、後手に回る形で規制されているのが実態
  • 暗号資産交換業は従来の金融機関とは比較にならないほど高いサイバーリスクを内包しているので、軽々しく「これは安全だ」というメッセージを規制当局が発することはあまりいいことではない
  • 暗号資産の構造的リスクを完全に制御することはできないので、制度で制御する領域と、制度では制御できない領域を明確に区別し、それを透明性を持って説明していくことが不可欠である
  • 制度の限界を正直に示し、そのリスクと責任の所在を明確にする透明性こそが、今後の暗号資産という不安定な領域における健全な政策運営の礎になるだろう

松尾 健一委員

①業規制(H. 銀行・保険会社の暗号資産取扱い)

  • 金融商法はすでにデリバティブ取引も規制対象としており、デリバティブの中には金融資産を原資産としないものもある。銀行や保険会社がポートフォリオのリスクコントロールの観点から暗号資産の保有を望むのであればそれを禁止することはない
  • 仲介については、銀行や銀行の関連会社が扱うことになると、消費者がそれを安全だと誤認するというリスクは本体でなくても残る
  • ある程度資力のある業者が、銀行・保険会社の子会社として仲介のところに入ってくるのであれば、自主規制機関の基盤の強化や消費者の保護につながる点もあるので、そのあたりのバランスだ

③海外業者・DEXの取扱い

  • 海外取引所につなぐアプリを提供する行為は勧誘には当たらないのか。当たらないとしても暗号資産特有のものとして独自の規制対象にする必要があるのではないか。そういったアプリ提供を国内業者がしていれば、そこに規制を課すことで間接的に止められる可能性がある

④不公正取引規制

  • 一旦暗号資産を全部発行して特定の人に割り当て、その人が徐々に市場に出していくケースがある。この行為は「発行に準じた重要事実」として扱うべき

河村 賢治委員

④不公正取引規制

  • 不正行為を一般規定とガイドラインの組み合わせで明確化し、暗号資産市場の変化に迅速対応しつつ、形式違反ではなく悪質な行為を刑事罰の対象にすべき。
  • 課徴金については形式違反的な要件で対応するのかもしれないが、日本の法制度では難しい。
  • 欧州のインサイダー取引規制には、発行者に関係しなくても暗号資産そのものに関連するのであれば内部情報になり得るとある。そうなると、暗号資産の機能変更、供給量、取引状況、利用状況、国の政策なども内部情報に含まれる可能性があり、それらはインサイダー取引の重要事実に含まれるのかを確認したい
  • 欧州のインサイダー取引の規制対象者には、マイナーやバリデータのような業者ではない技術関係者も含まれると解釈できる条文がある。金融庁案の規制対象者には、そうした人も含まれるのか説明が求められる

伊藤 亜紀委員

①業規制(H. 銀行・保険会社の暗号資産取扱い)

  • 国がお墨付きを与えたというような誤解を招いてはいけないが、今回の改正によって暗号資産を分散投資先にしたい機関投資家が現れることが想定される。公共性を有する機関投資家。例えばGPIFが暗号資産投資に踏み出すかどうかという議論にも波及し得る。銀行や保険会社に関する制度設計は、他の機関投資家へのメッセージになり得る点を意識して検討すべき

佐古 和恵委員

①業規制(A. 基本的な方向性)

  • この資料からは、どういう人を守ろうとしているのかがあまり見えてこず、具体的にちゃんと守られているかどうかを個人で判断するのが難しい。
  • 実際に本当に困られている人。私たちが保護しなければいけない人たちの声を聞き、将来同じような人たちを生まないように、どういう不正の発見ができ、どういう対策ができるのかを考えていくべき

日本ブロックチェーン協会 加納裕三代表理事

  • 共助(互いに協力して助け合う)の概念でサイバーセキュリティを防ぐことには賛成だが、共助と言いながら機密情報が強制的に競合他社に流れるような仕組みには反対する。
  • 反対する理由は、機密情報の共有を強制するような社会主義的な組織・社会では技術発展はなく、セキュリティエンジニアの努力をむげにし、セキュリティ対策は発展しないから
  • 一般的なコモディティ化(共通・標準化)されたセキュリティを共有するという部分に関しては賛成する。
  • 警察組織JC3や金融ISACなど、中立的な組織と連携し、国家レベルで暗号資産分野のサイバーセキュリティを向上することが求められている。

まとめと感想

今回の第4回ワーキング・グループでは、暗号資産交換業を中心とした制度全体の見直しについて議論が行われました。

委員の多くは慎重姿勢を保ちつつも、金融システムの信頼性を損なわずにデジタル資産を制度の中に取り込む方向性に理解を示しました。

注目を集めたのは「銀行・保険会社による投資目的での暗号資産保有を認める」という、これまでの金融常識を大きく揺さぶる提案です。

実現すれば、日本における暗号資産が「投機対象」から「資産クラス」へと昇格する、大きな転換点になり得ます。

一方で、銀行が暗号資産を保有するとバーゼル規制(国際的な銀行規制)でリスクウェイト1250%が適用されるため、保有するインセンティブは乏しく、制度的に認められても、実際には銀行は保有に踏み切らない可能性が高いとの指摘もあります。

大槻委員は市場の健全な発展と利用者保護の両立を強調し、過度な規制で成長を阻害すべきではないと指摘。また、国際競争力の維持・向上の重要性にも触れ、過度な慎重論が日本を世界の潮流から取り残すリスクを警告しました。

小川委員は、グローバルな金融構造の変化に着目し、国際機関で進む「デジタル統合金融サービス」の流れを踏まえて、今後ステーブルコインを中心としたトークン経済が急拡大し、金融・証券・信託の枠を超えた統合が進むと指摘しました。

「スピーディーで安く、利便性が高い金融サービス」を国際的に競争する時代に突入しており、日本もビジネス競争力をどう確保するかを同時に考える必要があるという見解は、非常に示唆的です。

一方で、松尾真一郎委員や岩下直行委員からは、ガバナンス体制・リスク管理・セキュリティの脆弱さに関する警鐘が鳴らされました。

制度整備を進めるうえで「安全性と発展性の両立」をどう実現するかが今後の焦点となります。

下表は、暗号資産の産業を発展させるために必要な制度見直しの一覧です。

第4回までの賛否状況
① 金商法への移行賛成:7名
ICO/IEOを金商法で規制に反対:1名
② 申告分離課税の導入発言なし
③ 損失繰越控除の導入発言なし
④ 暗号資産同士の交換を非課税化発言なし
⑤ 寄付の非課税特例発言なし
⑥ 少額決済の非課税化発言なし
⑦ 相続税「110%問題」の解消発言なし
⑧ 暗号資産ETFの制度化発言なし
⑨ レバレッジ倍率規制の見直し発言なし
⑩ ステーブルコインの普及促進発言なし
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