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暗号資産税率20%に現実味!金融審議会で金商法移行に前向きな意見相次ぐ

2025年7月31日、金融庁で「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」の第1回会合が開催されました。この会合では、暗号資産規制を金融商品取引法(以下、金商法)に移行することについて、前向きな意見が相次ぎ、「賛同する」と明言した委員もいました。

暗号資産が金商法のもとで規制されることになれば、税制も株やFXと同様に申告分離課税(税率20%)へと統一される可能性が高まります。

そこでこの記事では、暗号資産制度で変更が必要とされる10のポイントを説明し、そのポイントについて第1回会合で出た発言内容をまとめます。

目次

暗号資産制度に関するワーキング・グループとは

暗号資産制度に関するワーキング・グループは、税制の見直しを含めて暗号資産に関する法制度を見直すために、金融庁が設立したグループです。背景には、日本の暗号資産制度が世界一高い税率をはじめ、様々な課題を抱えており、暗号資産関連産業の成長を阻害しているとの問題意識があります。

そこで、日本政府は2024年の税制改正大綱に「暗号資産取引に係る課税については、その見直しを検討する」と明記。2025年6月までに金融庁が実態を検証したうえで、このワーキング・グループを発足し、制度設計に向けた本格的な議論が始まりました。

暗号資産制度で変更が必要とされる10のポイント

暗号資産産業を活性化させ、日本の国際競争力を高めるために必要とされる制度改正の代表的な10項目を以下に紹介します。

① 金商法への移行

金商法は、証券取引やデリバティブ取引などの金融商品に関する公正な取引を確保し、投資家を保護するための法律です。現在、暗号資産は資金決済法で規制されていますが、資金決済法はもともと電子マネーなどの決済手段を想定した法律であり、投資性や価格変動リスクを前提にしていないため、投資家保護の枠組みが不十分です。

暗号資産は実質的に投資性商品として取引されており、金商法に移行することで株や債券と同様の情報開示義務や業者規制が適用され、投資家保護の強化と市場の健全化につながります。

② 申告分離課税の導入

申告分離課税は、株やFXの売却益など、特定の所得について他の所得とは分離して一定の税率で課税する方式のことです。現在の暗号資産の税制は総合課税となっており、所得税と住民税を合わせて最大55%もの税率がかかります。

金商法に移行されれば、暗号資産も株やFXと同じ金融商品として位置づけられ、税制も同じ申告分離課税(一律20%)が適用されることが期待されます。

ただし、国内取引所以外(例:海外暗号資産取引所、分散型取引所、ウォレット)での取引や、主要コイン(例:ビットコイン、イーサリアム)以外の課税方式は申告分離課税にしないみたいな、ややこしい課税方式を考え始めるのではないかと心配する声があります。

③ 損失繰越控除の導入

損失繰越控除は、ある年に発生した損失を、翌年以降の利益から差し引いて課税所得を減らせる制度です。これにより損失を無駄にせず、将来の税負担を軽減することができます。

現在の暗号資産では損失繰越控除が使えず、これが投資リスクを高める一因となっており、申告分離課税とあわせて、損失繰越控除の導入が強く求められています。

④ 暗号資産同士の交換は非課税

現在の日本の税制では、暗号資産同士を交換(例:BTC→ETH)した場合も利確と見なされ、取得時と交換時のコイン価格差をもとに損益計算し、利益が出れば課税対象になります。

現金を得ていないにもかかわらず納税義務が発生し、頻繁なトレードやDeFiの利用者にとって膨大な損益計算が必要になるため、法定通貨に換金したタイミングで課税する方式への見直しが求められています。

⑤ 寄付の非課税特例

現在の日本の税制では、暗号資産を寄付した場合も利確と見なされ、取得時と寄附時の価格差をもとに損益計算し、利益が出れば課税対象になります。

これは寄付行為を妨げる不合理な税制であり、公益目的の寄附については非課税とすることが求められています。

⑥ 少額決済は非課税

現在の日本の税制では、暗号資産で買い物の決済をした場合も利確と見なされ、取得時と決済時の価格差もとに損益計算し、利益が出れば課税対象になります。

コーヒー代など日常的な少額支払いでも、取引ごとに利益を計算する必要があり、日常的な暗号資産決済の普及に対する大きなハードルになっています。

トランプ政権は、600ドル(約9万円)以下の暗号資産決済にかかる譲渡益の免税措置を支持し、実現方法を模索すると明言しています。

暗号資産の普及を促進するためには、日本でも同様の制度が必要です。

⑦ 相続税「110%問題」の解消

暗号資産を相続した際、税額が実際の資産評価を上回り、最大税率が110%に達するケースが報告されています。株や不動産には「取得費加算の特例」があるため、こうした極端な課税は回避されていますが、暗号資産には適用されておらず、制度の見直しが必要です。

⑧ 暗号資産ETFの制度化

暗号資産ETFは、ビットコインなどの暗号資産の価格に連動する金融商品で、証券取引所で株のように売買できます。

暗号資産規制が金商法に移行されると、金融庁が暗号資産をETFの対象として判断しやすくなり、ビットコインETFの上場が制度的に可能になります。

⑨ レバレッジ倍率の見直し

レバレッジ取引とは、証拠金を担保に数倍の取引を行える仕組みです。

例えば、証拠金10万円で5倍のレバレッジをかければ、10万円×5倍=50万円分のビットコインを取引できます。

日本ではかつて最大25倍のレバレッジ取引ができましたが、法改正により現在は2倍に制限されています。この規制強化により取引量は激減し、短期売買の投資家は海外取引所に流出し、日本の暗号資産市場は衰退しました。

国内市場の活性化と資本流出防止のため、上限引き上げが求められています。

⑩ 日本円ステーブルコインの普及促進

2023年に日本はステーブルコインに関する包括的法制度を整備し、円建てステーブルコインの合法的発行ルートを確立しました。

アメリカでは中央銀行デジタル通貨(CBDC)を禁止し、民間によるステーブルコインの活用を後押ししています。日本政府がこの潮流にどう対応するのかが注目されています。

委員の意見まとめ

上記①~⑩に関する各委員の発言を以下にまとめます。

松井智予委員

①金商法
暗号資産の業者及び決済の保護という視点から、整備を今まで金融庁では行ってきているというふうに承知しておりまして、あと、その資産の中身や取引の大きなイベントについて、利用者に必要な範囲で伝え、取引所の不正を監督するという観点から、金商法上の規制を含め、必要な手当をするということが考えられます

具体的に、基本的には資料でご示しいただいた通り、情報開示、業費規制、市場開設規制及びインサイダーもしくは一般的な不正行為に関する取引規制ということが考えられると思います。
 ②申告分離課税
言及なし
 ③損失繰越控除
言及なし
④課税タイミング
言及なし
⑤寄付非課税
言及なし
少額決済非課税
言及なし
相続税110%問題
言及なし
⑧暗号資産ETF
言及なし
レバレッジ倍率
言及なし
⑩ステーブルコイン
言及なし

有吉 尚哉委員

①~⑩について、すべて言及なし

伊藤 亜紀委員

①金商法
暗号資産の規制を資金決済法から金商法に規定し直そうという大きな枠組みについては、賛同いたします。規制法というのは、目的と手段が合っているというのが非常に重要でして、暗号資産は当初期待された決済手段ではなくて、今は主に投資の対象となっている現状を踏まえると、金商法の中で規制していくのが目的に照らして妥当であると考えております。

今回、暗号資産を金商法に規定し直す場合に、従来期待されていた決済機能というのをどのように捉えるかというのは、一つ確認しておく必要があると思っています。

事務局資料によりますと、ステーブルコインというのは資金決済法に残る方向というのを理解いたしました。他方で、暗号資産については、現状ビットコインなどが通常の決済利用というのもなされているケースが実際にあるように聞いておりまして、検討の前提として、規模感であるとか、今後のニーズ、トレンドみたいなものは調べていただいて、ご確認いただいて、検討していきたいなと思っている次第です。

金商法に移ったからといって、決済利用が特に制限されるわけではないのに、なぜこのようなことを申し上げているかといいますと、ディスカッションペーパーにもありますとおり、ブロックチェーン技術というのは、低コストかつ迅速な送金が可能であったり、改ざんが非常に困難なシステムであったり、スマートコントラクトも可能になるような、ということで、決済インフラとしての非常に可能性があるものだと理解しておりますので、金商法に移ることは、先ほど申し上げたとおり賛成なんですが、こうした決済インフラの可能性というのは残したというか、閉ざさないような形での法制度というのを希望いたします。
ステーブルコイン
事務局資料によりますと、ステーブルコインというのは資金決済法に残る方向というのを理解いたしました。

岩下 直行委員

①金商法
暗号資産というのはですね、実質的に、文言は別として、実質的にはブロックチェーンという技術によって区分されています。ブロックチェーンを利用するものが暗号資産であるというふうな定義の仕方を多くのところでされるわけですが、これは金融取引の区分としては、実は非常に不自然なことだと私は思います。

例えば銀行預金というものがあります。これはかつては、今でも使われていますけれども、通帳とハンコで取引されていました。ATMから預金を引き出すということに移り、今ではネットで取引されています。でも、いつでも銀行預金であり、銀行法で規制されています。技術とは関係ないです。株式だって、株券があった時代と、ほふりが登録している時代とで、金商法とか、かつては証取法が、法律が変わったかというと変わっていないわけでありまして、技術ではなくて、やっぱり実質が金融の場合は問題。誰がどういう権利義務を持っているかというのが問題なんです。

ところが、暗号資産だけは技術で着目されて、別枠の規制になります。なぜでしょうか。こんな区分が必要なのは、実は暗号資産が何も表象していないからです。銀行預金は銀行の負債、株式は会社の持ち分権を表象します。暗号資産はそれらと違い、誰かの負債でも会社の持ち分権とかでもなく、何だかわからないんです。だからこそ規制のしようがなかったというのが出発点でした。

永沢 裕美子委員

①~⑩について、すべて言及なし

小川 恵子

 ②申告分離課税
暗号資産については、諸外国の動き、あと先ほどお話がありました、既にビジネス実態、こういったものを鑑みますと、今は我が国としても非常に喫緊な課題、議論すべき重要な課題というふうに認識しております。

暗号資産は、特にデジタルネイティブ、先ほどお話がありましたけれども、すでに若い世代に非常に手軽な投資手段として拡散をしているといった状況、また20%の分離課税等々といったところの話になってきますと、より流通量が大幅に拍車がかかってくるということを想定しています。一方で、有価証券と議論ありましたけれども、暗号資産が本質的に異なる部分、これは経済実態、それから主体、そういった意味で多くあるというふうに考えております。

加藤 貴仁委員

①金商法
暗号資産取引の特徴としては、P2P取引が可能になっているということであると思います。ただ、こういった特徴はあるのですけれども、実態としては暗号資産交換業者やバーチャルサービスアセットプロバイダーなどの仲介機関を介して、様々な人が暗号資産にポジションを取っている場合の方が多いという点も、やはり忘れてはならず、これは岩下先生がおっしゃった二重構造というものが、暗号資産や暗号資産取引の特徴であると思います。

こういった二重構造に対して、これまでは暗号資産交換業者の規制を通じて、間接的に暗号資産の世界に働きかけを行ってきたのであろうと思います。一方、資金決済法の枠組みの中では、暗号資産の発行者に関する規制というものが欠けておりましたので、この点を解決するという点で、今回のその金商法の枠組みに入れるということには、一定の意義が認められるのではないかなと思っております。

ただその一方で、暗号資産交換業者の暗号資産市場における重要性というものも変わりませんので、やはり暗号資産発行者に関する規制を入れた上で、暗号資産交換業者の皆さんに、どういったことを、いわば暗号資産市場の健全化のために、非常に重要な役割があるということを忘れてはならないのだろうと思います。

松尾真一郎

①金商法
先般のディスカッションペーパー及び本日の事務局資料では、必ずしもセキュリティというのは主要な論点ではなかったというふうに見ています。ただし、金商法の議論の素性に上るには、利用者にとって十分なセキュリティ対策を取られることは大前提です。スタートポイントです。これがないと始まりはないと思います。今回の規制監督において、セキュリティ確保のための官民の対策がどのようになるべきかということを十分に議論する必要があります。

河野 康子委員

①~⑩について、すべて言及なし

松尾 健一委員

①金商法
金商法を研究している人間からしますと、今回の資料を申し上げたいところを2点から申し上げます。暗号資産の分類ですけれども、1と2に分類することについては、規制の構築をしていく上で、大変重要な視点だと思います。

①については、暗号資産を広く売り出す際に、売り出しの価格の公正性を担保する仕組みを構築する。こういうことが最低限必要になるとともに、また調達した資金の使途についてモニタリングをする。こういった仕組みも必要かと思います。

②の類型については、業者規制といいますか業規制、勧誘規制も含めてですけれども、そういったものを実効性ある形で構築する。これが非常に重要なことになるのではないかと考えております。

河村 賢治委員

①~⑩について、すべて言及なし

まとめ

ワーキング・グループの委員は全13名で、そのうち11名が発言しました。

このうち6名が金商法に関する発言を行い、伊藤亜紀委員は暗号資産の規制を金商法に移行することに「賛同する」と明言しました。

また、②申告分離課税、⑩ステーブルコインに関する発言もありましたが、いずれも制度改正に直接関わる意見ではありませんでした。

今回は初回ということもあり、制度改正に関する本格的な議論は展開されませんでした。第2回以降の議論の深まりに、今後ますます注目が集まりそうです。

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