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日本の成長戦略からWeb3・暗号資産が消滅|サナエトークンの影響か?

日本の成長戦略からWeb3(暗号資産・ブロックチェーン・NFT)の記述が完全に消えました。

2022年、Web3は日本の国家戦略として位置付けられ、政府文書には毎年必ず登場していました。ところが2026年、高市政権の「日本成長戦略会議」の資料では、137ページに及ぶ詳細資料を含めてWeb3の記述がただの一度も登場しません。

なぜ日本政府は突如としてWeb3を成長戦略から排除したのか?

この記事では、これまでの政府文書の流れを確認しながら、日本の成長戦略からWeb3が消えた原因を深掘りするとともに、サナエトークン問題との関係、そして日本の暗号資産産業に与える影響について解説します。

この記事の内容は動画でも解説しています。

目次

Web3とは何か

Web3とは、ブロックチェーン技術を基盤とした分散型インターネットの概念です。

従来のインターネット(Web2)は、巨大IT企業が提供するプラットフォームにデータや権限が集中する中央集権型の構造でした。

それがWeb3では、ブロックチェーンを利用することで特定の組織に依存せずに、ユーザー自身がデータを管理できるのが大きな特徴です。

また、暗号資産やNFTを用いることで、仲介者を介さずに価値や権利を直接やり取りできる、新しい経済圏としての側面も持っています。

このような背景から、世界各国はWeb3関連企業や人材を自国に呼び込み、次世代のデジタル産業として育成しようとしのぎを削っています。

Web3の育成に成功した国は、金融、ゲーム、コンテンツなど幅広い分野で新しい産業を生み出し、国際競争力を飛躍的に高める可能性があると考えられています。

成長戦略におけるWeb3

2022年、日本政府はWeb3を国家戦略の一つとして位置付けました。

国家戦略とは、国全体の長期的な方向性を示す重要な政策であり、Web3がその対象に含まれたことはデジタル社会に向けた大きな一歩です。

Web3に関する自由民主党文書では、NFTを中心に国家戦略を推進し、規制整備・税制見直し・人材育成・DAO制度などを整えることで、ブロックチェーン産業の成長と健全なエコシステムの構築を目指す方針が示されました。

自民党がWeb3を国家戦略に位置付けた2022年の文書

岸田首相の基調講演でも、ブロックチェーン・NFT・メタバースなどを含め、Web3推進のための環境整備を進め、新たなサービスが生まれやすい社会を実現すると述べています。

岸田首相がWeb3推進の環境整備に言及した基調講演

ちなみに同年2022年5月には、自民党青年局(LDP Youth Division)がNFT、通称「岸田トークン」を発行して話題になりました。

自民党青年局が発行したNFT「岸田トークン」のロゴ

同年2022年の成長戦略会議(新しい資本主義実現会議)の配布資料にも、Web3の推進に向けた環境整備について、検討を進める方針を記述しています。

2022年の日本の成長戦略資料に記載されたWeb3の内容

2023年の成長戦略でも、Web3の推進に向けた環境整備を行う方針が記載されました。

さらに、デジタル技術の人材を国内で育成するとともに、海外人材が日本で活躍できる環境整備を行うことが示されました。

2023年の日本の成長戦略資料に記載されたWeb3の内容

2024年の成長戦略でも、Web3の推進に向けた環境整備を行う方針が記載されています。

2024年の日本の成長戦略資料に記載されたWeb3の内容

2025年の成長戦略でも、Web3の推進に向けた環境整備を行う方針が記述されました。

さらに、暗号資産は資産形成のための分散投資の対象となる可能性や、分離課税の導入を含めた税制見直しの検討を行う方針が示されました。

2025年の日本の成長戦略資料に記載されたWeb3の内容

このように2022年以降、Web3は日本のデジタル政策において重要なテーマとして位置づけられ、成長戦略では毎年のようにWeb3が取り上げられてきました。

2026年の成長戦略の内容

2026年3月、高市政権のもとで日本成長戦略会議が開催され、官民投資を優先的に支援することが必要な製品・技術の17分野が発表されました。

AI、量子コンピューティング、海洋ドローン、空飛ぶクルマなど、歴史の浅い最先端テクノロジーが幅広く盛り込まれています。

【成長戦略の17分野】
①AI・半導体
②デジタル・サイバーセキュリティ
③情報通信
④量子
⑤防衛産業
⑥航空・宇宙
⑦海洋
⑧造船
⑨マテリアル(重要鉱物・部素材)
⑩合成生物学・バイオ
⑪創薬・先端医療
⑫資源・エネルギー・安全保障・GX
⑬フュージョンエネルギー
⑭フードテック
⑮防災・国土強靭化
⑯港湾ロジスティクス
⑰コンテンツ

また、「コンテンツ」ではゲームが重点分野とされ、ゲーム開発者の確保・育成を進めることで、2033年までに海外売上12兆円を目指すという具体的な数値目標が掲げられました。

日本の成長戦略におけるコンテンツの製品・技術・方向性

成長戦略からWeb3が消えた

しかし、2026年の成長戦略にはWeb3に関する記述が一切ありません。

目立たないだけではなく、完全に消えています。

概要資料だけでなく、137ページに及ぶ詳細資料を確認しても、Web3、暗号資産、ブロックチェーン、NFTといった関連用語は一度も登場しません。

2022年から続いてきた国家戦略の流れを考えれば、この変化は極めて異例の事態です。

今回の成長戦略には、AIや量子コンピューティングなどの歴史の浅い最先端技術が幅広く盛り込まれています。そのため「新しい技術が除外された」のではなく、Web3だけが意図的に、選択的に外された可能性が高いと考えられます。

いままでWeb3政策の旗振り役を務めてきたのは、主にデジタル庁でした。

2026年の成長戦略でデジタル庁が担当する分野は「デジタル・サイバーセキュリティ」「創薬・先端医療」です。

デジタル・サイバーセキュリティの記述(17分野の②)は、国が一元的に管理する中央集権型のクラウド基盤の整備を中心としており、ブロックチェーンのような分散型技術を取り入れる姿勢は微塵も感じられません。

日本の成長戦略におけるデジタル・サイバーセキュリティ分野の製品・技術

サナエトークン問題の影響か?

なぜ日本の成長戦略からWeb3が消えたのか?

考えられる理由の1つは、前政権の色が強いキーワードが排除された可能性です。

岸田政権の看板政策は「新しい資本主義」。資本が一部の巨大IT企業に集中するWeb2の課題を解決する手段として、分散型のWeb3を国家戦略としました。

デジタル田園都市国家構想など、新しい経済の形に比較的寛容なスタンスをとっていました。

一方、高市政権の看板政策は「責任のある積極財政」。経済成長を止める財政再建よりも、国債発行を含めた戦略的な投資を優先します。

積極財政で投資する先を絞り込む際に、輸出や雇用の増加など実体経済への寄与が見えやすい分野が優先され、寄与が見えにくいWeb3は後回しにされやすいと考えられます。

また、世界的な技術トレンドも変化しています。2023年前後はWeb3が注目されていましたが、現在はAIや半導体が中心テーマとなっています。

高市政権は経済安全保障を重視しているため、Web3の優先順位が下がって除外対象になった可能性があります。

もう1つの理由として考えられるのが、サナエトークン問題です。

サナエトークンは2026年2月に発行された日本の暗号資産です。ユーザーの声を政策立案者に届けるシステムを開発し、すでに高市首相側とコミュニケーションを取っていると宣伝して注目を集めました。

しかしその後、高市首相本人が関与を全面否定し、高市首相の名前や肖像を無断で使用していたことが明らかとなり、トークン価格は暴落しました。

サナエトークン問題は、資金決済法違反や詐欺の疑いも指摘され、国会での議論や金融庁の調査にまで発展する騒動となりました。

政府文書はスキャンダルとの関連を避ける傾向があるため、サナエトークン問題がトドメとなり、Web3関連のキーワードを成長戦略から排除された可能性も考えられます。

サナエトークンの公式サイト

暗号資産産業への深刻な影響

日本の成長戦略からWeb3が消えたことは、暗号資産産業にとって無視できない変化です。

政府の成長戦略の中で継続的に推進されてきた流れが途切れたことで、今後は政策面での後押しが弱まる可能性があります。

懸念されるのが、規制整備や税制改正への影響です。

昨年実施された金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ(全6回)」で、規制見直しにあたって利用者の利便性が損なわれることにならないよう、利用者保護とイノベーションの両立を図る必要性が示され、産業を伸ばすための環境整備という側面も少しはあったといえます。

しかし、成長戦略からWeb3が除外され、かつサナエトークン問題のようなスキャンダルが起きたことで、当局の姿勢は「国民を被害から守るための規制」へと一気にシフトするでしょう。

規制が厳格化し、罰則が強化されるほど、イノベーションが生まれにくい土壌になることは避けられません。

その結果、日本国内での投資環境が相対的に不利となり、資金や人材が海外へ流出するリスクも高まります。

実際に、暗号資産やWeb3の分野では、規制や税制の整った国に企業や開発者が集まる傾向があります。

自民党文書に暗号資産税制を申告分離課税20%にする目標が盛り込まれたのは、Web3が国家戦略に位置付けられた2022年です。

「Web3は国家戦略だから税制改正」という大義名分がなくなったことが、暗号資産の規制や税制の見直しにどんな影響を及ぼすのかは、今後の注目ポイントです。

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