韓国が、暗号資産への課税を撤廃する方向で動き始めました。
今まで何度も延期されてきた暗号資産の課税ですが、今回は先送りではなく「廃止」という大きな転換です。
つまり、韓国は暗号資産の税率をずっと0%にするという、衝撃的な一歩を踏み出そうとしています。
一方、日本の暗号資産の税率は最大55%
この圧倒的な差は、隣の芝生は青いどころの話ではありません。
なぜ韓国は、国家として税金を取らないという極端な選択ができるのか?
日本はこのままでデジタル国際社会で生き残れるのか?
この記事では、韓国の暗号資産税0%の背景とその結果、そして日本との決定的な違いについて解説します。
まず全体像を動画で把握したい方は、こちらをご覧下さい。
韓国が暗号資産税を撤廃へ|法案の具体的な内容
2026年3月、韓国の政党「国民の力」が「所得税法一部改正法律案」提出しました。
この法案の最大の特徴は、暗号資産課税を先送りすることではなく、課税そのものを削除する点です。
具体的には「暗号資産を譲渡または貸与することで発生する所得」を所得税法上の課税対象として定めていた条文を丸ごと削除します。
さらに、「250万ウォン(約26万円)控除後に20%を課す」などの税率・控除ルール、取得価格の計算ルール、必要経費の算定、非居住者への課税、取引データ提出義務、源泉徴収の仕組み、これらもすべて削除します。
これにより、暗号資産の売却益が課税対象から外れるだけでなく、暗号資産の課税制度全体がリセットされます。
法案には、暗号資産の課税を撤廃する理由も明記されています。
1つは、二重課税の矛盾を解消するためです。
米国では暗号資産を証券ではなく商品と見る流れが強まっており、韓国でも暗号資産をすでに商品として分類し、付加価値税を適用している以上、そこにさらに所得税を課すのは二重課税にあたり不適切だと指摘しています。
なお現在、韓国の投資家は暗号資産の売買代金に対して付加価値税(日本の消費税にあたるもの)を一切払っていません。
法案の言う付加価値税は、取引所がユーザーから徴収する売買手数料にかかる付加価値税(10%)のことを指していると考えられます。
会計上は「手数料にかかる消費税」と「利益にかかる所得税」は別の税目なので、これを二重課税と呼ぶのは強引な論理ですが、多少強引でも税率を0%にし、自国のWeb3市場を勝たせる韓国政府の執念がここに表れています。
もう1つの理由は、株投資との公平性です。
韓国では現在、資本市場の発展を目的として、株投資にかかる金融投資所得税が廃止されています。
株投資への税金がゼロで、暗号資産にだけ所得税を課すことは公平性と一貫性の面で問題があると指摘しています。
なぜ0%が続いたのか?これまでの経緯と変遷
実は、韓国の暗号資産税が0%のままである理由は、最初から非課税を決めていたからではありません。
2010年代の韓国では、暗号資産は通貨でも株でも商品でもない曖昧な存在でした。
明確な法律の定義がなかったため、税制上も扱いが難しく、課税されない状態が続いていました。
転機になったのは、2017年の仮想通貨バブルです。
投機熱が一気に高まり、韓国政府も暗号資産を無視できなくなりました。そこで政府は、暗号資産を制度の中に組み込むため、規制の検討と監視体制の整備に動き始めます。
2021年、韓国は暗号資産を「バーチャルアセット」として法的に定義し、課税の準備を進め、当初は2021年10月から課税を始める予定でした。
しかし、ここから前代未聞の延期ループが始まります。
・延期ループ
1度目(2021年10月→2022年1月):業界の準備不足
2度目(2022年1月→2023年1月):大統領選を控え、若年層の票を意識
3度目(2023年1月→2025年1月):投資家保護の仕組みが先決
4度目(2025年1月→2027年1月):市場低迷や制度整備への配慮
そして2026年3月、延期ではなく、撤廃の法案が提出されました。
このように、韓国の暗号資産税0%は最初から設計された理想形ではなく、課税しようとしても導入できず、制度未整備、投資家の影響力、市場競争力への配慮の3つが重なり、延期を繰り返した末にたどり着いた結論です。
非課税を続けた結果、韓国市場に起きた異常事態
韓国のGDPは世界12位で、韓国よりGDPが高い国の中で、暗号資産を完全非課税にしている国はありません。
その韓国が暗号資産の非課税を続けた結果、市場ではとんでもない異常事態が起きました。
それは、韓国ウォン建ての暗号資産取引の規模が世界トップクラスに膨らんだことです。
2025年の法定通貨建て暗号資産取引金額ランキングでは、韓国ウォン建ての取引額は6630億ドルに達し、世界2位になりました。

米ドルの使用人口は数十億人、ユーロ加盟国の人口は3.5億人、韓国の人口は5100万人
韓国ウォンは韓国のみで使われているローカル通貨であり、使用人口はドルやユーロより圧倒的に少ないにも関わらず、取引金額はユーロの3倍以上となっています。
しかも、これは一時的な急増ではなく、2020年から2025年までは米ドル建てのシェア45%、韓国ウォン建てのシェア35%だったと分析されています。
つまり、韓国ウォンはドルに次ぐ主要な暗号資産取引通貨としての存在感を持つようになりました。
さらに投資人口も凄まじいことになっており、韓国の主要取引所のユーザー数は2025年に1600万人を突破し、約3人に1人が暗号資産を保有している計算になります。
成人に限定すると、何と2人に1人が投資経験ありというアンケート結果
2024年の韓国ウォン建ての年間取引額は韓国株式市場の取引規模を上回りました。
韓国メディアは、大統領選で政党が1600万人の暗号資産投資家を意識して公約を打ち出していると報じていることからも、暗号資産投資家が無視できない政治勢力になっている様子が伺えます。
もちろん、非課税だけでここまで市場が大きくなったわけではありませんが、利益に税金がかからない状態が長く続いたことが、市場への資金流入を後押しする強力なアクセルになったことは間違いないでしょう。
投資天国の裏にある韓国Web3の弱点
ここまで読むと、韓国は暗号資産にとって世界最強のユートピアだと思うかもしれません。
しかし、法制度をさらに深堀りすると、実は明確な弱点が存在します。
それは、個人の投資は超活発だが、Web3ビジネスそのものはそこまで活発ではないという点です。
最大の理由は、韓国では2017年以降、ICOによる資金調達が全面的に禁止されているからです。
企業が独自トークンを発行して資金調達をしようとしても、証券として扱われるリスクが高く、ビジネスモデルとして成立しません。
たとえ無料でトークンを配ったしたとしても、その後の取引所上場を想定している場合、実質的に投資商品と見なされてしまい、やはりアウトになります。
さらに、法人による国内取引所での暗号資産投資も制度上できない状態が続いてきました。
このがんじがらめの規制の結果、韓国を代表する巨大プロジェクトが次々と、規制が緩く税制も有利な中東などの海外へ拠点を移すことになりました。
つまり、現在の韓国は「個人投資家にとっては税金0%の天国だが、Web3事業者にとっては規制だらけの厳しい国」という、いびつな構造があります。
しかし、近年の韓国では、この弱点を修正する以下のような動きが出始めています。
・法人による暗号資産投資の禁止を解除
・デジタル資産基本法による暗号資産ETFの解禁
・ステーブルコインの制度化
・暗号資産関連企業のベンチャー認定再開(税制優遇・公的融資の道が開通)
日本の税率55%との比較|日本はこのままでいいのか?
韓国が暗号資産の課税を撤廃する方向に動き始めた一方で、日本の暗号資産税は非常に重いままです。
現在の日本では、暗号資産の利益は雑所得に区分され、最大55%という世界で最も厳しい税金が課されています。
両国の差は0% vs 最大55%という絶望的な開きになっています。
「でも、日本は2028年から一律20%になるから大丈夫」
と安心している方は注意が必要です。
2025年12月に発表された税制改正大綱を読み解くと、税率20%が適用されるのは「国内の暗号資産交換業者(国内取引所)での取引のみ」となる見通しです。
つまり、以下のようなケースは今までどおり最大55%のままになる可能性が高いです。
・海外取引所やDEX(分散型取引所)での売買
・個人ウォレット間の取引
・サービス利用や買い物での決済
今までどおり暗号資産を使うたびに税金計算が求められ、取引場所によって20%と55%に分断されることで、ただでさえ複雑な暗号資産の税金計算がさらに複雑化します。
このままでは、国民が税金を恐れてWeb3を使わなくなり、日本はWeb3先進国を掲げながら、誰もWeb3を使わない国になり、暗号資産はただ国内取引所に眠らせておくだけの存在になります。
さらに懸念すべき事実があります。
日本政府は2022年以降、Web3を国家戦略として掲げてきましたが、今年2026年の成長戦略からはWeb3に関する用語が完全に消滅しました。
背景には「サナエトークン問題」などの政治的影響もある可能性がありますが、これにより、規制のさらなる厳格化や、分離課税20%への移行が遠のくことが懸念されています。
このまま韓国が税率0%という劇薬で市場拡大を維持し、次々と新しい法制度を整えていけば、デジタル国際社会の勝ち組になる可能性は日本よりずっと高そうです。
日本はこのままでいいのか。
答えは明らかです。本気でデジタル国際社会の競争力を取りに行くなら、中途半端な見直しではなく、誰が見ても分かりやすく、使いやすい税制へ変える必要があります。
今年の税制改正の国会審議は要チェックです

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