大阪万博に出展する唯一の暗号資産オオカミコインは詐欺か?
今月2025年5月、大阪・関西万博の会場に一風変わったブースが登場します。その名も「オオカミプロジェクト」。私の知る限り、大阪万博に出展する暗号資産プロジェクトはオオカミプロジェクト(オオカミコイン)だけです。

しかし今、このプロジェクトをめぐってネットでは「詐欺では?」という声も多いです。いったい何が起きているのでしょうか?
調査しました🔍
オオカミプロジェクトとは
オオカミプロジェクトは、情報商材屋の望月こうせいという人物が主導している日本の暗号資産プロジェクトです。プロジェクトのPR動画では、以下の人物、団体に支援されることで「世界的プロジェクト」になったとアピールしています。
・UAE(アラブ首長国連邦)の王族
・三菱UFJ銀行の元代表取締役・長田忠千代氏
・渋沢栄一の子孫かつ三菱商事創業者の孫・木内正胤氏
・日本の株式上場企業GFA
ただし、これらの人物がどこまで実際に関与しているのか、公式資料で明確な証明はありません。GFAはオオカミプロジェクトへの支援を発表しています。

オオカミカードとは
オオカミプロジェクトは、「オオカミカード」という暗号資産決済機能がついたVISAクレジットカードを発行していることを売りにしています。
オオカミカードを持つことで、世界中のショッピングで暗号資産による支払いができるようになり、ATMで現金を引き出すこともできるし、スマホでのキャッシュレス決済にも対応しているといいます。さらに、決済手数料の一部は動物保護団体に寄付される仕組みになっていて、社会貢献にもつながるカードです。
このように、オオカミカードは夢のような多機能カードです。
このカードの決済手数料の支払いに使われるのがオオカミコインで、コイン1枚0.00011ドルのトークンセールが日本人相手に実施され、高齢者を中心に多くの人が購入しました。

上場して95%暴落
2025年2月、オオカミコインは海外取引所MEXCに上場し、現在価格はICO価格の-94.8%というショッキングな暴落が続いています。
しかも、大半のICO購入者はオオカミウォレットからオオカミコインを出金できず、ただ暴落していくコインを眺めるだけの悲惨な状況に陥っています。

続出するトラブル報告
オオカミコインには、すでに数々の不審な点・トラブル報告が多数上がっています。
- オオカミカードは2024年9月から順次発送と言っていたのに未だに届かない
- ICOで購入したオオカミコインがオオカミウォレットから出金できない
- オオカミウォレットに送金した暗号資産が消えた
- 公式サイトにカードの発行会社の情報が一切記載されていない
しかし、あるユーザーにはオオカミカードが届いたらしく、届いたカードを使ってセブンイレブンのATMから現金を引き出した動画を2025年4月24日にSNSに投稿しました。以下がその動画です。
オオカミカード持って、セブンイレブン行って現金引き出してきたよ🤑
— いきいきくん|ニャンとオオカミに全ツッパ🐈🐺 (@ikiikikunkun) April 24, 2025
控えに言ってめちゃくちゃ便利ですこれ!
ちゃんとウォレットと連動して、引き出した分反映されとりました👍#オオカミコイン#オオカミカード#OKM#オオカミサイコー#じゃじゃーん#ほれ見たことか pic.twitter.com/h1Q5wjauSa
この動画には1点変な点があります。それはATMに表示された以下の画面です。

1 USD = 134.0787 JPY
4.00 % conversion fee included(4.00 %の外貨両替手数料が含まれる)
外貨両替手数料の4%を引いたドル円レートは128.9円
ドル円の為替レートを確認すると、2年前の2023年5月以降134円以下になったことは一度もなく、140円を割ったこともほとんどありません。
このことから、この動画はカードの現物が出回っているように見せかけるために、過去の動画を転用した可能性があります。

クレジットカードという主張は本当か?
オオカミプロジェクトはオオカミカードを「クレジットカード」として大々的に宣伝していますが、その実態はデビットカードかプリペイドカードの可能性が高いです。
理由は、クレジットカードを発行するには与信審査や割賦販売法の遵守など、厳しい法規制に準拠する必要があるからです。そのため、全ての暗号資産系カード(たとえばCrypto.comやWirex)は、クレジットカードではなくプリペイド型のVISAカードとして提供する、与信を伴わない仕組みが採用されています。
また、「暗号資産を法定通貨に換金→カード残高にチャージ→ATMから現金引き出し」というスキームを実現するには、駆け出しのオオカミプロジェクトが単独でいきなり実現することはほぼ不可能で、Crypto.comやWirexのような高度な金融基盤と規制対応をしている企業との提携が不可欠ですが、世界でもこのスキームを提供できている企業は数えるほどしか存在せず、オオカミプロジェクトがそのうちの一社と提携している証拠は見当たりません。
そのため、もしカードが存在しているとすれば、正体不明の第三国(規制の緩い国)のカード発行会社と提携している可能性があり、そうなると極めて危険です。
過去の暗号資産系カード事件の事例
過去にも暗号資産系のカードプロジェクトで問題が発生した事例をいつくか挙げておくと、2018年にアメリカで発生した暗号資産デビットカードプロジェクト「Centra」の詐欺事件です。
Centraは俳優フロイド・メイウェザーが宣伝して話題になり、トークンセールで3200万ドルを集めましたが、実際にはVISAやMastercardとの提携が存在せず、集めた資金を持ち逃げしました。その後、SECにより詐欺として告発され、創業者は実刑判決を受けました。
もう1つ挙げておくと、2017年にシンガポールで発生したTenXの事件です。
TenXは「暗号資産でリアルタイム決済が可能なカード」として注目されましたが、カード発行パートナーとの契約打ち切りが相次ぎ、カードを使えなくなる事態に陥りました。
これらの事例に共通するのは、発行体の透明性が不十分で、パートナー契約やライセンスに虚偽があったことです。
オオカミプロジェクトもカード発行会社を明確にしていない点を踏まえると、過去の暗号資産系カード事件と同様のリスクが潜んでいる可能性は否定できません。
大阪万博の出展内容
オオカミコインは出金できず、価格は暴落、カードは届かない状況のなか、オオカミプロジェクトは万博の「オフィシャルパートナー」となり、今月5月に万博に出展します。

5月27日のブーステーマは「大阪市における保護犬、保護猫の取り組み」
え?オオカミコインの話じゃないの?😲
オオカミコインを正面からアピールすることにビビったのでしょうか?5月27日は、動物愛護にすることでイメージ戦略をとるようです。

判定
大阪万博の趣旨の1つは「最先端技術など世界の英知が結集し、新たなアイデアを創造・発信すること」
万博のNFT代表は、AptosとHashport開発の公式ウォレットを使ったNFT獲得体験イベントが開催されます。これはまさに最先端。
では、FT代表、暗号資産代表は?
不審なクレジットカードを発行し、詐欺疑惑の声も出ているオオカミコインだけ?🐺
これはさすがに、日本の暗号資産業界にとって由々しき状況ではないでしょうか。
日本暗号資産取引業協会(JVCEA)や日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)が万博のパートナーになっていない現状を見ると、
何してんねん
以上のように、オオカミプロジェクトは、動物保護やSDGsに取り組む姿勢をアピールしながら、実態のわからないカードビジネスと暗号資産販売を行っています。
現状は詐欺確定ではありませんが、届かないカード、出金できないウォレット、不透明な発行会社など、疑問が多いのも事実であり、万が一、このままカードが届かずに終わったり、カードが届いてもATMで現金を出金できないとか、決済で使えないという結末になった場合は詐欺確定です。
感動ストーリーで投資家を騙し、詐欺をくわだてるプロジェクトは沢山います。
投資を検討している人は、まずオオカミプロジェクトにクレジットカードの発行会社を明確に開示させ、その企業の信用性を十分に調べたうえで、冷静な投資判断をすることをおすすめします。
【追記】この記事には第2話があります。