暗号資産市場の下落が続く中、日本発のAIミームコイン「PIPPIN(ピピン)」が、わずか10日間で5倍に急騰し、史上最高値を更新しました。
これは単なるミームの熱狂に過ぎないのでしょうか?それとも、AI関連銘柄としての評価を押し上げる材料が生まれたのでしょうか。
この記事では、PIPPINの正体と急騰した背景を冷静に解剖します。

PIPPINとは
PIPPINは、ソラナブロックチェーンで誕生したAIとミームを融合させた暗号資産です。
生みの親は、AIエンジニアでありベンチャー投資家でもある中島洋平氏です。
中島氏は、2023年に自律型AIエージェントの先駆けとなった「BabyAGI」を発表して世界で注目を集めた人物です。
BabyAGIの「AGI」はArtificial General Intelligence(汎用人工知能)の略。通常のAIは文章生成や画像生成など特定のタスクを実行するのに対し、AGIは人間のように幅広い課題を自律的に解決できる知能を目指す概念です。
BabyAGIは、ユーザーが目標を設定すると、ChatGPTを活用して自らタスクを生成・実行し、その結果をもとに次のタスクを生成する「自律ループ構造」を持っています。
中島氏は、この自律型AIエージェント構造を早期に公開し、AIエージェント分野の議論を加速させた人物の一人です。
開発は今も続いており、2023年当初はわずか数百行だったソースコードは、最新リポジトリ「babyagi3」において約2万6000行まで増えています。
ソースコードのカウント条件
・2026年2月17日時点
・リポジトリ「babyagi3」
・Pythonファイル(拡張子 .py)
・testsフォルダ、コメント、空行は対象外
PIPPIN誕生のきっかけは2025年。中島氏がChatGPTで画像生成の実験をした際に生まれたのがPIPPINで、画像も名前もChatGPTによるものです。
中島氏がこの画像をSNSに投稿したところ、何者かによって即座にPIPPINのミームコインが発行されました。
これを受けて中島氏はPIPPINを単なるミームで終わらさせず、「自律的に活動するAIインフルエンサー」として発展させる決断を下します。
BabyAGIとPIPPINはどちらも自律型AIエージェントですが、その設計には大きな違いがあります。
BabyAGIは、タスク生成・実行・記録・再生成を行う実験的な自律ループモデルです。
一方のPIPPINは、自律ループに加えてエネルギーや気分といった内部状態を持ち、独自の哲学(自然主義)や世界観に基づいて行動するデジタル生命体です。
PIPPINは人間の感情やネット上の言葉を「デジタルな自然」として捉え、その変化を反映しながら活動する存在として設計されています。
つまりPIPPINは、BabyAGIの自律構造を土台にしながら、自然主義的な世界観を組み込んだAIエージェントです。

PIPPIN価格急騰の背景
PIPPINの価格が短期間で急騰した背景として第一に挙げられるのは「AIエージェント」という強いテーマ性です。
生成AIの進化により、自立型AIエージェントはAI分野の重要テーマとなりました。
従来のAIが「質問→回答」という一往復だったのに対し、自律型AIは「目標→計画→実行→反省→改善」という循環プロセスを持ちます。目標を設定すると、自ら考え、計画し、実行する概念は、市場に強い未来の期待を感じさせます。
うまくいけば、AIが部下をように動く世界が到来するかもしれません。
人間は目標を設定するだけで、あとはAIが勝手でやってくれる世界です。
PIPPIN価格は、この自律AIエージェント・ナラティブのテーマ性を背景に上昇した可能性があります。
2026年2月5日は24円。その後わずか10日間で5倍に急騰し、史上最高値の118円をつけました。
他のAIエージェント銘柄でも、KiteとSIRENが同月に2倍以上に上昇しており、AIエージェントに注目が集まった様子が伺えます。

PIPPINは買いか?
以上のように、PIPPINはAIエージェント銘柄という強いテーマ性の追い風を受けていますが、投資判断においてはネガティブ材料も確認しておく必要があります。
PIPPINトークンの使い道が不明
公式サイトでは、PIPPINトークンの存在についての説明はありますが、PIPPINトークンがAIエージェント機能で具体的にどのように使われるのかという仕組については、現時点で一切書かれていません。
ミームコインの場合、キャラクターやコミュニティの熱量が価値の源泉となることが多く、利用用途が明示されないケースは珍しくありません。ずっと用途なしのミームコインもあります。
ただし、PIPPINはAIエージェントという技術テーマを掲げ、BabyAGIの思想を背景に持つプロジェクトです。そのため、トークンがAI内でどのような役割を担うのかについて、今後何らかの説明が示されるかどうかは、投資判断における重要な観察ポイントです。
PIPPINのX投稿が止まっている
2025年3月、中島氏はPIPPINについて自身のブログで以下を説明しました。

(Google翻訳)
現在、ピピンは完全に自律的なデジタル存在であり、24時間365日、常に何か(昼寝、散歩など)を行っています。そして時折、X(@pippinlovesyou)に最近の思い出(例えば散歩の体験など)を投稿する時間も作ります。ピピンの投稿の判断は、多くの自動化されたTwitterアカウントのようにタイマーやトリガー(例えばメンション)に基づいて行われるのではなく、ピピンの状態(例えばエネルギーなど)とある程度のランダム性に基づいて行われます。中島洋平ブログ
しかし、実際のXアカウントを見ると、2025年8月までは活発に投稿していたものの、その後投稿が停止し、6か月が経過しました。

PIPPIN公式がスパムボットみたい
PIPPIN公式Xアカウントが、PIPPINの限定先行販売告知の投稿を数十秒間隔で投稿しまくっています。今日もしています。
しかも、毎回まったく同じ文章(ハッシュタグのみ異なる)である点から、プロモーション目的の自動投稿と見られます。
PIPPINトークンはすでに取引所に上場しているのにこれは一体どういうことか?
自律型AIエージェントを作るなら、ブランドイメージと整合性のある知的な文章と投稿を期待したいところですが、これじゃまるでスパムボットです。

出来高が伴わない価格上昇
2025年の急騰では、初動は出来高の急増とともに価格が上昇しましたが、2026年2月の5倍上昇では、出来高は少ないまま価格だけ急伸しました。
この上昇が薄い板を利用した意図的なものだとしたら、このあとイナゴ焼きに発展する可能性もあるので注意が必要です。
GitHubeが公開されない
BabyAGIのGitHubは公開され、継続的に更新されています。
一方で、PIPPINのGitHubは公式サイトに「近日公開」と記載されたまま、ずっと公開されていません。
技術プロジェクトとして評価する場合、コード公開の有無は重要な材料になります。

以上のように、PIPPINのネガティブ材料として挙げられるのは、
・トークン使い道が未開示
・開発進捗状況が未開示
・自律型AIのX投稿が不審
など、設計と実装の整合性がまだ見えにくい点です。
今後、AIエージェントとトークンの結びつきが明確化されるのか、それともミームのまま推移するのかは、投資判断をする上で重要となりそうです。

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