2025年の日本政府の暗号資産の税制改正方針まとめ
12月27日に、金融庁が「令和7年度の税制改正大綱」に対する意見をまとめた資料を公開し、その資料の文章に暗号資産取引の税制について金融庁の意見と思われる内容が記載されていました。
下記赤線がその文章です。

暗号資産取引に係る課税上の取扱いについては、暗号資産を国民の投資対象となるべき金融資産として取り扱うかなどの観点を踏まえ、検討を行っていく必要。
金融庁「令和7(2025)年度税制改正について」
なんか、どこかで聞いたことあるようなセリフです。
最近の政府関係者の発言をもとに、2025年の日本政府の暗号資産税制変更方針をまとめます。
以下の動画は、2024年12月の石破内閣総理大臣の発言です。
①暗号資産を株と同じ税制にすることについて
ご指摘のように、暗号資産を税法上上場株式等に同等、同様に扱うことにつきましては、給与等の所得には最大55%の税率が適用されます。一方、暗号資産による所得には20%の税率を適用することに国民のご理解が得られるか?家計が暗号資産を購入することを国として投資家保護規制が整備されている株式や投資信託のように推奨することは妥当なのか?などの課題があり、丁寧な検討が必要と考えております。②暗号資産をETFの対象とすることについて
暗号資産を国民にとって投資を容易にすることが必要な資産とすべきかどうかを踏まえ、検討する必要があると考えております。
以下の動画は、2024年12月のデジタル庁の平将明大臣の発言です。
暗号資産に関する制度及び税制の在り方については、デジタル庁の所管外であるため、お答えすることは困難でありますが、自民党のWeb3PTの提言も受けて、今、金融庁において外部有識者による勉強会を開催し、議論を重ねていると承知をしております。
暗号資産に係る税制との関係では、例えば上場株式などと同等と扱うことになると、高所得者にとっては税率が下がりますが、一方で、投資家保護等のためにトークン全般に金融の規制を適用することとなり、金融の厳しい規制がかえってWeb3スタートアップのイノベーションを阻害するのではないかという論点もあり、丁寧な検討が必要であると指摘をされています。
いずれにしても、このような論点も含め、国民民主党さんのWeb3政策提言全般については、デジタル大臣として丁寧に検討させていただきたいと考えております。
以下は、「令和7年度税制改正大綱(2024年12月公表)」に盛り込まれた暗号資産の税制変更に関する記述です。

第三 検討事項
3 暗号資産取引に係る課税については、一定の暗号資産を広く国民の資産形成に資する金融商品として業法の中で位置づけ、上場株式等をはじめとした課税の特例が設けられている他の金融商品と同等の投資家保護のための説明義務や適合性等の規制などの必要な法整備をするとともに、取引業者等による取引内容の税務当局への報告義務の整備等をすることを前提に、その見直しを検討する。
「見直す」ではなく「見直すことを検討する」ときました。
下表は、暗号資産が誕生したあと、税制改正大綱に記載された暗号資産の内容です。
2025年は「見直しを検討する」ことになるので実際に税制が変更される年は早くても2026年以降と考えられますが、課税関係の見直しについて記載されたのは実に8年ぶりです。

以下は暗号資産の税制変更に関する参議院予算委員会の意見です。

4.おわりに
暗号資産は国内外で取引が広がり続けており、金融庁が令和7年度税制改正要望において暗号資産取引に係る課税制度に言及したことも、こうした背景があると思われる。また、米国では今般の大統領選挙において暗号資産への理解があるとされるトランプ前大統領29が勝利したことから、今後一段と暗号資産が普及するとの見方も強い。一方で、暗号資産に対しては、詐欺などに利用されることが多いことや価値の裏付けがないことなどから、懐疑的な見方も多いところである。先述のとおり、投機的な動きが強いことや、取引所からの不正流出が多数発生していることなどからも、国民の資産として推奨されるべきか否か更なる議論が求められよう。
今後、暗号資産取引に係る所得税制について動きがあるのか、その動向を注視したい。
上記の意見すべてに共通していることは「暗号資産の税制変更はまだまだ慎重に丁寧に検討する必要がある」で、日本政府の暗号資産の税制変更に前向きではない気持ちがとてもよく伝わってきます。
暗号資産の税制を申告分離課税にするのは止めた方がいい理由として挙げていることをまとめると、
給与の税金は最大55%なのに、暗号資産を株と同じ20%にすることは国民の理解を得られない可能性があるから。
暗号資産を株と同じ申告分離課税にすると税率は20%に下がるけど、それがかえってWeb3のイノベーションを阻害してしまう可能性があるから。
その他、暗号資産は詐欺などに利用されることが多い。価値の裏付けがない。投機的な動きが強い。取引所からの不正流出が多数発生している。
そこで来年2025年の日本政府の暗号資産税制変更方針は、まずは、そもそも暗号資産は国が投資対象とすべき金融資産なのか?国が国民に推奨することは妥当なのか?という観点から、丁寧に検討することになりました。