韓国大統領選で暗号資産ETF誕生決定。ビットコイン爆上げるか
2025年6月3日、韓国で大統領選挙が行われます。立候補者は7名ですが、イ・ジェミョン氏(共に民主党)とキム・ムンス氏(国民の力)による事実上の一騎打ちです。
両者ともに暗号資産の公約を掲げたので、内容を比較しつつ、ビットコイン価格への影響を予想します。
イ・ジェミョン氏の暗号資産公約

2025年5月6日、イ・ジェミョン氏(共に民主党)は自身のFacebookで次のように発表しました。

“가상자산 현물 ETF를 도입하고, 통합감시시스템을 구축해 안전한 가상자산 투자 환경을 조성하겠습니다. 거래 수수료 인하도 유도하겠습니다."
(訳)暗号資産の現物ETFを導入し、統合監視システムを構築して、安全な暗号資産投資環境を整えます。取引手数料の引き下げも誘導します。
この発言は、ETFに慎重な姿勢をとってきた政党としては意外性のあるもので、注目を集めました。
ちなみに、暗号資産の現物ETFとは、暗号資産の現物を保管して発行する上場投資信託(Exchange Traded Fund)のことで、略してETFといいます。
株式市場で暗号資産を売買できるようになるイメージです。
イ・ジェミョン氏は暗号資産ETF導入を公約に掲げましたが、中央選挙管理委員会に提出された正式な選挙公約書には、「ETF」という単語は一切登場していません。
唯一、関連があるとすれば次の一文のみです。

디지털자산 생태계 정비를 통한 산업육성기반 마련
(訳)デジタル資産エコシステムの整備を通じた産業育成基盤の構築
つまり、ETF導入の意思はSNSでのみ表明されており、「本気度はやや不透明」と見る向きもあります。
イ・ジェミョン氏が属する「共に民主党」は、過去にICO(仮想通貨による資金調達)を全面禁止するなど、暗号資産に対しては慎重な姿勢を取ってきました。近年は制度整備に軸足を移しつつありますが、依然として「投機性の排除」や「投資家保護」を重視する姿勢が根強く残っています。
その他、イ・ジェミョン氏が公約に挙げた「統合監視システム」については、具体的な仕様は言及していませんが、文脈から判断すると、暗号資産の取引をリアルタイムに監視して、価格操作、マネーロンダリング、違法資金などを検出するようなシステムと推測されます。
「取引手数料の引き下げを誘導する」については、直接的な規制ではなく、例えば、ETF市場の導入によって現物市場は顧客維持のため自発的に手数料を下げる圧力が強まるなど、政策的誘導や市場競争の促進によって実現を目指すものと考えられます。
キム・ムンス氏の暗号資産公約

2025年4月28日、キム・ムンス氏は「国民の力」の非常対策会議で「暗号資産現物ETFの年内解禁」を発表しました。
その後、5月12日に発表した選挙公約書に以下を記載しました。

디지털자산육성기본법’ 제정으로 공정 투명한 가상자산 시장 제도화
(訳)デジタル資産育成基本法を制定し、公正かつ透明な仮想資産市場を制度化
가상자산 현물 상장지수펀드(ETF) 허용
(訳)暗号資産の現物ETFの導入を許可
キム・ムンス氏が所属する「国民の力」は、過去の政権で暗号資産取引の税率0%の延期や法整備を進めるなど、比較的育成志向が強く、Web3や金融商品への展開にも前向きです。党の政策全体としても「革新」「新産業の支援」がキーワードになっていて、ETF導入はその一環と考えられます。
以上のように、6月に実施される韓国の大統領選挙はイ・ジェミョン氏(共に民主党)とキム・ムンス氏(国民の力)の事実上の一騎打ちであり、両者とも暗号資産現物ETFの導入を掲げたので、どちらが大統領になったとしても、公約を果たせば韓国でビットコインETFが誕生することになります。
韓国ビットコインETFは実現するのか?
現在、韓国では暗号資産の現物ETFだけでなく、先物ETFも承認されていません。
理由は、韓国金融委員会(FSC)が、暗号資産は価格変動が激しく、価格操作のリスクがあり、制度が未整備で投資家保護も不十分であると判断しているためです。
つまり、信頼できる法制度と監視体制が整わなければ、承認しないという立場です。
韓国の大統領には、FSCに「ETFを承認しろ」と直接命令する法的権限はありません。
なら一見、誰が大統領になってもビットコインETFは実現しないように思えますが、大統領はFSC委員長を任命する権限を持ち、政策方針の指示や閣議決定を通じて行政全体に影響を与えることができます。また、与党と連携することで法整備を主導することも可能です。
よって、大統領が本気でETF導入に取り組めば、実現する可能性は十分にあります。
イ・ジェミョン氏とキム・ムンス氏のどちらが大統領になった方が韓国で暗号資産ETFが実現する可能性が高いかは、キム・ムンス氏の方が先に暗号資産ETF導入を掲げ、選挙公約書に暗号資産ETF導入を明記したのと、「国民の力」の育成の方針や、課税猶予などの実績を考慮すると、キム・ムンス氏が大統領選に勝利した方がETFの実現可能性は高いでしょう。
韓国ビットコインETFが価格に与える影響
韓国は暗号資産の取引が非常に活発な国です。
取引所Upbitは世界で4番目に多い出来高を誇り、2024年末時点で韓国内の暗号資産口座数は1559万件に達しています。成人人口4486万人に対して非常に高い普及率を示しており、暗号資産が社会に浸透していることが分かります。さらに、現在のところ暗号資産取引は税率0%の非課税で、これも取引活発化の一因となっています。

こうした背景から、ETFが導入されれば年配層や保守的な投資家も参入し、韓国の暗号資産市場がより活発化する可能性があります。
「キムチプレミアム」とは、韓国国内の仮想通貨価格が海外より高くなる現象で、ETF導入によって再び国内需要が過熱すれば、同様のプレミアムが再発することも考えられます。
2024年1月にアメリカでビットコイン現物ETFが承認されたときは、ブラックロックなど大手運用会社が相次いでETFを上場し、ビットコインの価格は半年以内に過去最高値を更新しました。
香港では2024年4月に現物ETFが導入されましたが、取引規模は限定的でした。
日本では現時点で現物ETFは未承認、暗号資産の税率は最大55%で世界一、国家ビットコイン準備金は検討しないと表明しています。
そんななか、韓国がETFを導入すれば、アジアで最大規模の暗号資産ETF市場となる可能性があり、地域的にも注目度が高い展開となり、暗号資産の信頼性向上と、アジア全体の規制緩和ムードを後押しする波及効果によって、ビットコインに価格に大きなポジティブの影響を与えることは間違いありません。
まとめ
- 6月に韓国大統領選が行われ、両候補ともに「暗号資産の現物ETF導入」を公約に掲げた。
- 韓国大統領の権限を用いて、本気でETF導入に取り組めば、実現する可能性は十分にある。
- 暗号資産に関する公約内容、党の方針をもとにするとキム・ムンス氏が大統領になった方がETFの実現可能性は高い。
- 暗号資産取引高世界トップクラスの韓国がETFを導入すると、アジアで最大規模の暗号資産ETF市場となる可能性があり、韓国市場の活性化とアジア全体の規制緩和ムードによってビットコイン価格に大きなポジティブな影響を与える。
今後の展開も注目します。