移動平均線のクロスをエントリーポイントとするのは有効かを検証
本記事では、ビットコイン投資において、移動平均線のゴールデンクロス、または、デッドクロスの直後にエントリーするのはどれくらい効果があるのかを検証します。
移動平均線とは、一定期間の終値の平均をグラフにしたものです。投資のチャートで使われる移動平均線には、単純移動平均線、加重移動平均線、指数平滑移動平均線があります。それぞれの線について詳しくは次の記事を読んで下さい。
⇒「移動平均線とは」
ゴールデンクロスとは、短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に突き抜けることで、主に買いポイントとして用いられます。
なぜ、ゴールデンクロスが買いになるのかは、価格を人気としてとらえると分かりやすいと思います。最近の人気が今までの人気を超えてきたということは、「最近調子いいね、これからも伸びるよ!」という感覚になるため買いです。芸能人がブレイクし始めたときの状況に似てますね。
一方、デッドクロスとは、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に突き抜けることをいい、売りのポイントとして用いられます。「最近調子悪くなってきたね、もう落ち目かな」という感覚です。
チャートを見ると、確かにゴールデンクロスのあとは価格が上がっていき、デッドクロスのあとは下がっていくものが多いように見えます。
1つ思うのは、ゴールデンクロスで買い、デッドクロスで売りという単純なテクニックで利益が出せるなら世界中の人が取引するということです。FXの世界では負ける人も必ずいるので、ゴールデンクロスとデッドクロスからのエントリーは必勝の戦略では無いことは明らかです。
かといって、ゴールデンクロスとデッドクロスが参考になる指標であることは間違いありません。気になるのは、どのくらい参考になるのかという点です。
そこで、今回の検証では、ゴールデンクロス、または、デッドクロスを見たら、何も考えずにすぐにポジションを取ればどのくらいの確率で利益を上げれるのかを過去のチャートから集計しました。
結果の信憑性を高めるために、移動平均線の集計期間は多くのトレーダーが使っている本数にするのが望ましいです。bitFlyer Lightningの平滑移動平均のデフォルト設定は「10」、「21」、「100」です。設定を変えずに使っている人も多いと思うので、検証ではデフォルト設定の「21」と「100」を使います。
つまり、21本移動平均線と100本移動平均線のゴールデンクロス、デッドクロスが発生してからの価格の動きを見ます。
検証方法は、まず、21本移動平均線と100本移動平均線がクロスしている箇所を探します。2つの線がちょうど重なっている箇所ではなく、下図黄枠のように、線が突き抜けて上下が入れ替わった箇所です。
そして、その次の②のローソク足の最安値と最高値のあいだでビットコインを買ったと仮定します。そして10本あとのローソク足が②のローソク足の上、下どちらにあるかを記録します。
つまり、ゴールデンクロス直後のローソク足より10本あとのローソク足が上にあれば買い成功、下にあれば失敗としてカウントしていくということです(デッドクロスは逆)。カウントした結果、成功が多ければ、クロスだけを頼りに売買しても利益を出せる可能性が高いという結論になります。
下表は、ローソク足の種類ごとの集計結果です。bitFlyer Lightningで参照できる過去のローソク足の本数には制限があるので、標本はあまり多くないことを了承下さい。
6時間足
成功 | 失敗 | |
---|---|---|
ゴールデンクロス | 1回 | 0回 |
デッドクロス | 1回 | 0回 |
4時間足
成功 | 失敗 | |
---|---|---|
ゴールデンクロス | 2回 | 1回 |
デッドクロス | 0回 | 2回 |
2時間足
成功 | 失敗 | |
---|---|---|
ゴールデンクロス | 2回 | 2回 |
デッドクロス | 3回 | 0回 |
1時間足
成功 | 失敗 | |
---|---|---|
ゴールデンクロス | 2回 | 1回 |
デッドクロス | 1回 | 1回 |
30分足
成功 | 失敗 | |
---|---|---|
ゴールデンクロス | 1回 | 0回 |
デッドクロス | 0回 | 0回 |
15分足
成功 | 失敗 | |
---|---|---|
ゴールデンクロス | 3回 | 3回 |
デッドクロス | 1回 | 5回 |
5分足
成功 | 失敗 | |
---|---|---|
ゴールデンクロス | 2回 | 1回 |
デッドクロス | 1回 | 2回 |
3分足
成功 | 失敗 | |
---|---|---|
ゴールデンクロス | 1回 | 2回 |
デッドクロス | 1回 | 2回 |
全種類のローソク足の結果を合計すると以下になります。
成功 | 失敗 | |
---|---|---|
ゴールデンクロス | 14回 | 10回 |
デッドクロス | 8回 | 12回 |
合計 | 22回 | 22回 |
成功と失敗の回数が同じになりました。もっと標本の数を増やさないと確実なことは言えませんが、今回の検証結果では、単純にゴールデンクロスで買い、デッドクロスで売りでエントリーしても10本先のローソク足で含み益になっているかどうかは、何も見ないでエントリーしたのと変わらないという結論になります。
クロス発生時に想定する方向に価格が動いているのは確かですが、クロスを確認してからエントリーしたときにはすでに価格が大きく振れてしまっていることが多いです。
次回記事は、移動平均線の集計期間を21本より短くした場合はどうなのか、移動平均線のクロスの角度がクロス後の動きに影響しているかについて検証します。