仮想通貨協会「block hiveトークン」は100%損をしないICO

2019年1月1日

2018年6月12日、仮想通貨協会から仮想通貨投資案件の紹介動画が公開されました。

主催者の中川正人氏は内容を叩かれることも歓迎しているようなので、本記事では内容を論理的に叩こうと思います。
⇒Youtubeチャンネル「仮想通貨は今すぐやめろ!【仮想通貨協会】

人格を否定するわけではないので、仮想通貨協会ファンの方もぜひ参考にして下さい。また、仮想通貨業界の健全化のために、仮想通貨協会の方々も参考にしていただけると幸いです。

 

この記事は、投資案件への参加、不参加を強制することを目的としたものではないので、他のサイトの情報や家族、友人の意見も参考にして、ご自身の判断のもと投資するかどうかを決めて下さい。

本記事で使用している画像と動画は、検証を目的として公開されているものを引用しています。また、仮想通貨協会で使われている動画は著作権フリーであると中川正人氏が説明していたので活用させて頂きます。

今回の動画は仮想通貨協会のLINE@読者限定です。すべての内容を確認したい方はLINE@に登録して視聴して下さい。

なお、投資先のプロジェクトは6月13日現在はまだ公開されていないため、この記事はプロジェクトの内容については触れていません。

 

まず最初に、中川正人氏はICO(Initial Coin Offering)の発音について以下の動画のように言いました。

 

「イニチアル・コイン・オファリング」と発音しているように聴こえますが、Initial の発音は「イニチアル」ではなく、「iníʃəl(イニシャル)」です。憶えておきましょう。

それはさておき、今回の動画で一番重要な発言は以下です。

 

仕組み上「100%損をしない」と言っています。

 

この「100%損をしない」という話は嘘です。その理由を順を追って説明します。

今回の投資案件はICOではなく、ILPという新しい資金調達法が使われるそうです。ILPはInitial Loan Procurementの略で、借入金として資金を調達することをいいます。

つまり、満期がきたら返金することを約束する証書を発行し、事業を行うための資金を仮想通貨で借りるということです。この資金調達方法は何かに似てると思った人、ナイス直感です。

そうです。債券です。

ICOは株と似ていますが、ILPは社債に似ています。社債とは、証書を発行して、出資者に債務を負う資金調達方法の一つです。

社債もILPも元本を返金する約束が交わされるので、いっけん出資者は損をしないように思えますが、損をする可能性は十分にあります。

具体例で説明します。

ある会社の開発チームがILPの出資者を募りました。約束は「10年後に元本を返す。利息は半年ごとに出資金の0.1%を仮想通貨で払う。」です。

それを聞いた投資家たちは開発チームにイーサリアムを送金し、開発チームは4万ETHの資金調達に成功しました。

 

開発チームは調達した資金を使って、開発チーム増員、開発機器購入、マーケティングに2万ETHを使い、プロジェクトがスタートしました。

半年後、開発チームは出資金の0.1%を出資者に配当しました。この段階では、まだ製品は完成していないので利益は発生していませんでした。

 

それから、製品に重大な欠陥が見つかったり、情報漏洩や社員の不祥事によって会社の資金繰りが悪化しはじめました。結果、調達した資金もすべて食い尽くし、倒産してしまいました。

この状況になったとき、出資者の出資金はどうなるか考えてみて下さい。

 

そうです。会社が潰れ、会社の資産も残ってないので、開発チームは投資家に元本を返すことはできません。もちろん配当もできません。

このような、債務者が債権を履行できなくなるリスクのことを「信用リスク」といいます。実際に、社債に出資したあとに元本を回収できなかった人は相場の歴史でごまんといます。会社が倒産しなくても、事業がうまくいかずに大赤字の状況でも元本返金や配当が行われなくなることもあります。

ちなみに、社債には信用リスクの他にも、流動性リスクや為替リスクなども存在します。

仮に、投資家たちから集めた資金を使わずに、大切に保管しておくというなら100%損をしないといえるかも知れませんが、銀行でもないのに、使わないお金を借りて配当まで行う会社はいません。

よって、中川正人氏の今回の投資案件に関する発言「100%損をしません。」は信用リスクを隠した嘘ということになります。

中川正人氏は、2018年5月にゴールドマンサックスを騙った瀬野恵子氏の160倍確定案件について、「確定なんて使っちゃだめだよね」と説教をしましたが、中川正人氏も100%損をしないという嘘をつきました。

なぜ嘘をついたのでしょうか。

私の予想になりますが、それは「たくさん売りたいから(予想)」です。

どうしてたくさん売りたいのか、それは「たくさん売れば自分が儲かるから(予想)」です。

中川正人氏は、下図のように「今回の案件についてアフィリ報酬や手数料をもらう事はありません」と説明しました。言い換えると、いくら沢山売れようが中川正人氏には何の見返りもないということです。

何の見返りもないということは、売れても、売れなくても中川正人氏には関係ない。であれば、このプロジェクトのリスクについてもきちんと説明したあとに、投資するかどうかを視聴者に判断させるのが普通です。

しかし、中川正人氏はリスクを隠し、良い所だけを見せて売り込みしてきました。このことから、購入者の数が増えると、中川正人氏に何らかのメリットがあることが予想できます。

 

中川正人氏は、手数料を乗せていない証拠について以下の動画のように言いました。

 

公式サイトのレートと中川正人氏の販売レートが同じなので手数料をのせていないことが分かると説明しています。確かに、レートに関しては上乗せされていないことはこれで証明できますが、アフィリ報酬をもらっていないという証拠にはなりません。

例えば、「1名につき報酬0.2 ETH」という契約をプロジェクト側と結んでおいて、あとで出資金の中から中川正人氏に報酬が支払われるというのも十分に考えられます。

というか、エストニアに行って直接プロジェクトチームからの話を聞き、日本に戻って顧客を連れてきてくれる人に何の報酬もあたえないプロジェクトがなど存在しません。本当にエストニアに行ってプロジェクトチームとこの案件について話し合ったのなら、中川正人氏に報酬が用意されていることは間違いないでしょう。

 

次に、今回の案件について中川正人氏は以下の動画のように説明しました。

 

「日本居住者は購入できない。私の特別なルートで購入することができるようになりました。」と言っていますが、日本居住者が購入できない理由の説明がありません。

国の規制によって日本居住者に売ることができないのであれば、中川正人氏が販売代理をすることは違法にはならないのか。国民を保護するために国が規制をかけているものを中川正人氏が代わりに販売するのは道理的にどうなのか。といった観点での説明が必要です。

2018年4月に「O2O PAY」という仮想通貨投資案件で、「日本人は購入できないけど私の特別ルートからなら買える」と言いながら数多くのユーチューバーが一斉に売り込みを行って、数多くの日本人が購入した事象がありました。それと似た空気を感じます。

また、今までのICOでは投資したお金が持ち逃げされる詐欺事件が数多く発生しています。中川正人氏が持ち逃げすると決めつけるわけではありませんが、中川正人氏はボイスチェンジャーで声を変え、顔を出さず、会社の所在地、電話番号などを明らかにせずに、仮想通貨の販売代理をしようとしています。

これは投資家にとっては大きなリスクになるので、投資家の皆が安心して投資できるように、公開できる情報をすべて公開して自分が絶対に逃げないことを明らかにしておく必要があります。

これは信用できない人は買わなければいいという話ではなく、販売業者としての義務です。

 

今回の動画ですが、詐欺プロジェクトの紹介の流れに近いものを感じます。流れを見てみましょう。

①自分の商材が本物だと言って話を始める。

 

以下の動画は、自由億プロジェクトの「本物宣言」のシーンです。

 

②詐欺師を批判して自分が味方であると思わせる。

 

以下の動画は、1 MILLIONS PROJECTの詐欺師を批判するシーンです。

 

 

③商品を説明する。

 

④自分以外の情報をシャットアウトするように指導する。

 

以下の動画は、NEXT LIFE PROJECTの「情報のシャットアウト」を指導するシーンです。

 

⑤動画を最低3回見るように指導する。

 

以下の動画は、NEXT LIFE PROJECTの動画を最低3回観ることを指導するシーンです。

 

 

⑥コメントを求める。

 

LINE@の買い煽りのメッセージの流れも、業界の臭いを感じさせます。下図左側は2018年4月の詐欺プロジェクト「NEXT LIFE PROJECT」のLINE@メッセージです。

 

自身が業界関係者ではなく、今回の投資案件が詐欺ではないのなら、詐欺プロジェクトと差別化するために詐欺師がよく使う話の流れは可能な限り避けようと考えてほしいものです。特に、詐欺師を批判したあとに自分の商品の説明に持って行く流れや、最後に動画を3回見るように指導するなどは気を付けるべきでしょう。

詐欺師のやり方に嫌気がさしている人も多く、2018年6月現在では「動画を3回」と聞いただけで「あ、詐欺」と思う人が多いことを認識しなければなりません。

以上、仮想通貨協会が紹介するILP案件の検証結果です。

宣言どおりに参加者全員を100%損をすることなく稼がせてもらいたいですが、その前に100%損をしない話が間違いで、リスクについての説明が必要です。

なお、筆者は仮想通貨協会のことが嫌いなのではなく、詐欺被害者を減らすために真実を語る頼もしいチャンネルの1つだったと考えています。投資家が安全に投資先を選択できるように、誇大な表現、嘘をついた箇所をしっかりと説明し、信頼を回復した上で今後も活躍して頂きたいと思う所存です。

ちなみに、Initial Loan Procurement の Procurementの発音は「プロピチュアメント」ではなく、「proukjúərmənt(プロキュアメント)」です。