韓国のゲーム特化型暗号資産が日本初上場。買いか?

2023年10月8日

アンゴロウ

10月11日に、韓国のゲーム特化型ブロックチェーンMARBLEX(マーブレックス)の暗号資産「MBXトークン」が日本の取引所に初上場します。

韓国のゲーム特化型暗号資産が日本の取引所に上場するのは史上初です。

引用元:Twitter @zaifdotjp

日本のゲーム特化型ブロックチェーンといえばOasys(オアシス)で、オアシスは今年4月に韓国の大手取引所ビッサムに上場しています。

仮想通貨アイドルユニットのブロックチェーンゲーム「コインムスメ」は6月にオアシスと提携し、9月にマーブレックスと提携しました。

彼氏乗り換え?

引用元:PRTIMES

マーブレックスは、韓国の大手ゲーム会社ネットマーブルの子会社が開発しています。

ネットマーブルは2000年に設立された会社で、オンラインゲーム市場の急成長の波に乗って韓国最大規模のゲーム会社に上り詰めました。

下図はネットマーブルのIR情報です。

引用元:netmarble公式

2022年に営業収益が過去最高の2兆6730億ウォン(約2718億円)を記録しました。

営業利益の過去最高は2020年につけた2720億ウォンです。

下図は、日本のゲーム業界の売上高トップ5です。

引用元:Geekly Media

ネットマーブルの営業収益は約2718億円なので、ネットマーブルが日本のゲーム会社と肩を並べる大手ゲーム会社であることが分かります。

しかし、2022年のネットマーブルの営業利益は-1090億ウォン、純利益は-8860億ウォンのマイナスになっています。

下図はネットマーブルの株価チャートです。

2017年に韓国の証券取引所に上場し、2020年9月に最高値をつけました。

その後は営業利益の低下とともに株価も下落していき、2023年10月5日に最安値をつけました。

最高値から-80.4%

下図は今年の営業収益です。

引用元:netmarble公式

2023年度はQ1、Q2ともに6030億ウォンで去年より低い収益が続いているので、Q3以降も同じくらいの収益になった場合、2022年度の収益を下回ります。

このように、ネットマーブルは2022年度の利益がマイナスになったものの、韓国大手のゲーム会社として健在で、ブロックチェーンゲームの分野に活躍の幅を広げてきました。

次に、マーブレックスの仕様をもとにMBXトークンが今が買いなのかを考察します。

下図はマーブレックスのブロックチェーン構成図です。

引用元:MARBLEX White Paper

マーブレックスのブロックチェーンは1つではなく、パブリックチェーンが1つ、ブリッジチェーンが1つ、サービスチェーンが複数という3種類のブロックチェーンで構成されています。

今回上場するMBXトークンは、パブリックチェーンに発行されているトークンで、投資家は取引所で自由に売買できます。

サービスチェーンはゲームごとに作られるブロックチェーンで、ゲーム開発者はこのチェーン上に独自のゲーム内トークンを発行し、ゲームプレイヤーに報酬として配布します。

すべてのサービスチェーンはブリッジチェーンに接続されていて、ブリッジチェーン上に発行されているMBXLトークンを介してMBXトークンに換金できます。

つまり、プレイヤーはゲームをプレイしてゲーム内トークンを稼ぎ、それをMBXトークンに換金し、取引所で売却して現金化するという流れです。

マーブレックスのエコシステムはすでにリリースされています。

例えば、The King of Fighters ARENAという格闘ゲームでは、対戦に勝つとFM(ファイトマネー)というゲーム内通貨が貰え、それをFCTトークン⇒MBXLトークン⇒MBXトークンの順で両替し、取引所に送金して売却します。

引用元:電撃オンライン

二ノ国:Cross Worldsというロールプレイングゲームでは、冒険で手に入れたアイテムをNKTトークン⇒MBXLトークン⇒MBXトークンの順で両替し、取引所に送金して売却します。

二ノ国はジブリが制作に関わっていることで話題になりました。

下図はMBXトークンの日足チャートです。

2022年5月中旬までの値動きを抜きにすると、

最高値をつけた日は、2022年5月24日

最安値をつけた日は、2023年10月4日

最高値から-97.0%

現在価格は最高値から-96.6%

下図はMBXトークンの今年の日足チャートです。

今年前半は上昇トレンドで、3月に年初来高値をつけました。

その後大きく下落して元旦初値を割り、7月からはダダ下がりが続いて、日本の取引所のZaifがMBXトークンの上場日を発表した日に最安値の804ウォンをつけました。

日本初上場のファンダの影響なのか、発表のあと900ウォン台まで回復しています。

下図はMBXトークンの分布です。

発行上限10億枚のうち7億5000万枚がエコシステム、コミュニティのために使用されます。

引用元:MARBLEX White Paper

下図はMBXトークンの配布スケジュールです。

2026年までに2億7000万枚~2億8000万枚が配布される予定になっています。

引用元:MARBLEX公式Medium

下図はMBXトークンの流通枚数と予想インフレ率です。

予想インフレ率は、1ヶ月分のトークンの増加ペースをもとに、その増加ペースが続いた場合1年後に何%流通枚数が増えているのかを見積もった数値です。

2022年10月の流通枚数は3610万枚

2023年4月から8月までは平均47%の予想インフレ率で流通枚数が増加し、9月に急増して642%という記録を叩き出しました。

2023年10月現在の流通枚数は9119万枚

現在は2022年5月から17ヶ月が経過し、配布スケジュールの17ヶ月後は9000万枚前後なので、スケジュール通りに見えます。

下図は、日本上場コインの取引金額占有率の30日平均です。

現在1位はビットコイン42.6%、2位はイーサリアム32.9%、3位はXRP3.4%

MBXトークンは66個のうち59位で取引金額の少なさが目立っています。

ちなみに競合のオアシスのOASトークンは60位でMBXトークンと接戦しています。

下図は、MBXトークンとOASトークンの取引金額占有率です。

出だしはOASトークンの方が勢いがあり、現在は拮抗しています。

以上を参考に、MBXトークンは今が買いなのかを考察すると、

ゲーム系コインの投資判断で一番重要なのは、Play to Earnゲームで稼げる暗号資産の大半がプレイヤーの収益確定の売り圧に耐え切れずに暴落モードに変わっていることです。

プレイヤーの課金を使って配当コインを買い支えることで価格の下落を抑止するゲームがありますが、配当を受け取るプレイヤーが徐々に増え、新規プレイヤーの増加の勢いはいずれ頭打ちになるため、遅かれ早かれ、課金だけでは配当コインの売り圧に対抗できなくなり暴落モードに変わっています。

トークンをバーンして希少性を高めることで価格の下落を抑止するプロジェクトもありますが、バーンしても買い圧が直接高まるわけではありません。

マーブレックスのPlay to Earnゲームで稼いだゲーム内トークンを現金化するには、必ずMBXトークンに交換して取引所で売却する流れになっているので、収益確定の売り圧はMBXトークンの売り圧に直結しています。

MBXトークンのホワイトペーパーを読んだ限りでは、収益確定売りと運営の資金調達売りの対抗となりうる買い圧を生み出す仕様が見当たらなかったので、他のPlay to Earnゲームと同様にMBXトークンの価格は低迷する可能性が高いと考えらえます。

現在のMBXトークンの取引金額は少なく、最安値更新が続いているので、今後のヒット作に期待して底を狙いたいところではあるものの、収益確定売りのネガティブファンダを考慮すると長期目線で「今はまだ買いではない」という結論になりました。

しかし、韓国最大規模のゲーム会社であるネットマーブルが、ダダ下がり暗号資産のままでいいと考えているはずはなく、現在の問題点をもとにトークンの仕様を大幅に変更する可能性もあるので、そのあたりの変化は要チェックし、何か変化を見つけたら報告します。