【T’s ビットコラム】イーサリアムイノベーション

2023年7月6日

TERURON

「イーサリアムは宝です」

かつてそう呟いたZaif民がいた。

イーサ価格がまだ1万円台を彷徨っていた頃だった。

「いや、ゴミだ」

誰かがそう返した。

「宝です」

「ゴミだ!」

その言い争いは暫くの間、とどまることを知らなかった。

かくして3年後、それは紛れもなく宝となった。

でも未来なんて誰がわかる? 1990年代インターネット初期に一斉を風靡したウェブブラウザ・Netscapeは姿を消し、Microsoft 社の Internet Explorerはサポートを終了した。10数年後、暗号資産の中核をなしているイーサリアムプラットフォームがどうなっているのか誰も知るすべはない。

科学技術のイノベーションというのはいつだって、人々の日常とはかけ離れたところで起こり、ある日突然台風のようにやってくる。

果たしてイーサリアムは本物なのか。

 

巨大ブロックチェーンの中核

イーサリアムは巨大ネットワークのプラットフォームであり、金のような価値保存手段(デジタル・ゴールド)として投資対象とされるビットコインとは根本的に性質が異なる。ビットコインを金(ゴールド)に喩えるなら、イーサリアムはスマートフォンで使われるAndroidやiOSのような存在と言える。イーサリアムの特長として、第三者を介さずブロックチェーン上で契約を自動的に実行できるスマートコントラクトを実装していること。また透明性の高いオープンソースなプラットフォームを基盤とし、様々なサービスを作ったり使ったりすることも可能だ。

イーサリアムベースのプラットフォームはICO(Initial Coin Offering/新規通貨公開)銘柄やオリジナルコイン、ブロックチェーンゲームで使われており、ブロックチェーンの血脈と表現しても過言ではない。現状の懸念点としては、GAS Fee(ガス代)と呼ばれるネットワーク手数料が高騰しており、トランザクション性能(処理性能)が秒間数十と遅いことが挙げられる。喩えるなら、一車線しかない道路で交通渋滞が起きている状態といったところか。

それらの観点から一部では“イーサリアムキラー”と呼ばれるソラナ、アバランチ、ポルカドット、カルダノ、コスモスといったプラットフォームにその地位を奪われる可能性も示唆されている。また、世界最大の取引所であるバイナンスには処理速度の高い独自のプラットフォーム、バイナンススマートチェーンが存在するわけで、将来的にはイーサリアムに集中している資金が “イーサリアムキラー”に分散する可能性も否定できない。しかしイーサリアムはすでに非中央集権化しており、その信頼性はブロックチェーンにおいて替えがたいものになっていると言える。また、一時期話題となったDeFi(Decentralized Finance/分散型金融)と呼ばれる銀行のような金融サービスのプラットフォーム上でガソリンのような役割を果たしているのは、通貨として知られるイーサなのである。

イーサリアムは世界中の多くのエンジニアにより長い時間をかけて構築されたプラットフォームであり、暗号資産の歴史に裏打ちされている。そして現在はGAS Fee(ガス代)やトランザクション性能の問題を解決すべく、ETH2.0へのアップデートを実行中だ。ビットコインやイーサはマイニングによる膨大な電力消費が問題視されている側面もある。イーサリアムはこのアップデートを経て、現在の「PoW」より電力消費が少ないコンセンサスアルゴリズム「PoS」へ移行することも提唱した。今後の地球環境問題を考慮した場合、この思想が多くのエコロジー企業に評価されるポイントになるかもしれない。

 

変貌するクリプト市場の中で、囁かれるBTCとのフリッピング

今、暗号資産市場は大きく変貌を遂げようとしている。IT企業のMicroStrategy、電子決済サービス企業のPayPal やSquare、電気自動車メーカーのTeslaなど米大手企業がビットコインを購入。また、EC大手のeBayや日本のフリマサイト・メルカリも暗号資産事業への参入を表明した。近い将来、GAFAMなどの巨大IT企業もビットコイン、イーサをポートフォリオに組み込むのではないかと見る有識者や専門家もいる。

2021年に入りイーサはATH(ALL TIME HIGH/過去最高値)を更新し続けており、今後も価格を伸ばしていくと見られている。一部の投資家の間ではビットコインとイーサの時価総額がいずれフリッピング(逆転)する可能性も指摘されており、ウォール街の投資調査会社FundStratはイーサ価格が1万ドルに到達するとの予測も立てている。

また、イーサの流通量・供給量を見ると減少傾向にあり、昨年に比べて希少性が増し格段に購入しづらい状況が生まれている。クジラと呼ばれる一部の大口保有者においては、イーサを取引所から個人のコールドウォレットに移す動きも見られ、長期保有の傾向が伺える。ステーキングやDeFiへの資金流入もさらに期待されることから、今後もより価格が上昇すると予想されている。

とはいえ、年始からのチャートの動きで極端な調整や下落局面も見られるので、大きな金額をまとめて投入する際は慎重に判断すべきである。価格変動が激しい暗号資産市場では「ドルコスト平均法」での投資が有効とされている。近年は投資商品として政府の推奨する“積立ニーサ”が注目を集めているが、来たる2022年は“積立イーサ”も検討してみてはいかがだろうか?