暗号資産の送金制限はすでに始まっている?
暗号資産で今後話題になるかも知れないのが「送金制限」
暗号資産の送金制限は、中央集権の暗号資産取引所からユーザーが暗号資産を送金しようとしたときに、特定のアドレスに対する送金を拒否(または枚数を制限)することをいいます。
今年2021年10月13日の金融審議会(資金決済ワーキング・グループ)で暗号資産の送金について以下の提案がされてジワジワと話題になり始めました。
3点目に、暗号資産に関する問題です。現在、マッチングアプリ等で知り合った相手から勧められて、暗号資産取引に引き込まれ、投資資金が返金されないという事案がかなり多数発生しております。
金融審議会「資金決済ワーキング・グループ」(第1回)議事録
デジタル化の中で、効率的に詐欺取引が仕掛けられているという面があろうかと思います。
トラベルルール等の体制整備が進められているということは承知しておりますが、現状においても、国内の暗号資産交換業者において、一般の個人から海外のサイトや暗号資産交換業者の管理しないウォレットへの送金を適切に制限するなどの対応が検討されるべきではないかと考えます。
一人が提案しただけなら、総意ではないので心配する必要はありませんが、翌月11月11日の金融審議会の説明資料の冒頭に以下の説明が記載されました。
暗号資産の項目には、送金制限の指摘のみ記載です。
このことから、今後の暗号資産の議題に送金制限が出てきやすくなる可能性があります。
検討が始まったばかりで実施はまだ先と思っていたところ、
最近、出金アドレスが勝手に削除されたり、海外取引所やメタマスクに送金しようとしたら拒否られたという話を見かけるようになる事態になっています。
ビットコインの出金先アドレスが「審査の結果」勝手に削除された。どういうことですかねぇ……。金融庁のホワイトリストにないアドレスは削除ですか?え? pic.twitter.com/RKKS1VvDbg
— びりある@クリプトグラファー (@visvirial) December 14, 2021
送金制限を実施している取引所は、GMOコインとDMMビットコインの2社です。
それ以外の取引所は今のところ(2021年12月21日現在)、アドレス削除や出金拒否の報告は見かけません。
具体的には以下のメールが送られてきます。
いつもGMOコインをご利用いただき、誠にありがとうございます。
GMOコイン案内メール
審査の結果、以下のアドレスは宛先リストから削除いたしました。
【銘柄】ビットコイン(BTC)
なお、審査の内容・基準につきましては開示しておりませんので、ご了承ください。
今後ともGMOコインをよろしくお願い申し上げます。
以下の案内もあります。
いつもGMOコインをご利用いただき、誠にありがとうございます。
GMOコイン 案内メール
この度、お客様のお取引状況を精査いたしましたところ、
当社のご利用規約(基本約款21条)への抵触が判明したため、
お客様の口座につき、以下の取引規制を実施いたしました。
なお詳細につきましては、開示しておりませんのでご了承下さい。
基本約款第21条を読んでみたところ、内容は取引所がユーザーの取引を規制、または解約する条件の規約で、主に違法行為、暴力団、外国PEPsなどに対する措置となっています。
善良な一般人が悪い事をせずに普通に取引所を利用していて規約に当てはまる可能性がある項目は(8)だと思います。
第21条(取引の規制・解約等)
GMOコインサービス基本約款
…中略…
2 当社は、お客様が次の各号に定める事由のいずれかに該当する場合には、事前の通知、催告等を要することなく、またお客様に対して何ら責任を負うことなく、お客様に対する本サービスの提供の全部若しくは一部の停止若しくは制限をし、又は本サービスを解約することができるものとします。
…中略…
(8)お客様からの情報や当社が入手した情報に基づき、お客様の口座が、マネー・ロンダリング、テロ資金供与、又は経済制裁関係法令等に抵触する取引に利用されていることが判明し、又はそれらの疑いがあることと判断した場合その他マネー・ロンダリング及びテロ資金供与の観点から取引を継続することが適当でないと当社が合理的に判断した場合
DMMビットコインは今年2021年6月に以下のお知らせを掲載し、最近になって送金できなくなった話を見かけるようになりました。
いつもDMM Bitcoinをご利用いただき、誠にありがとうございます。
DMM Bitcoin「暗号資産(仮想通貨)の入出庫依頼についてのお知らせ」
当社では、お客様に安心してお取引を行っていただけるよう、お客様からの暗号資産(仮想通貨)に関する入出庫依頼につきまして、入庫元・出庫先の暗号資産(仮想通貨)アドレスの安全性を確認したうえで対応させていただいております。
お客様の資産保全のため、以下のような場合には入出庫依頼について保留あるいは取消させていただき、お電話にてご事情をお伺いする場合がございます。
暗号資産(仮想通貨)の入出庫が保留あるいは取消となる場合
・日本国内で暗号資産交換業者として登録されていないにもかかわらず、日本語で勧誘を行っている無登録業者に係る入出庫
・十分な取引時確認を行っていない等、当社の判断によりコンプライアンスリスクが高いと判断した取引所等のアドレスに係る入出庫
なぜ送金制限をし始めたのか?
金融庁に忖度して、先んじて送金制限をすることに決めたのか?
それとも、金融庁に指導されて送金制限の導入を緩やかに始めることにしたのか?
憶測が飛び交うところですが、2つの取引所の共通点で重要そうなことに「送金手数料が無料」があります。
手数料が無料を言い換えると、トランザクション手数料を取引所がユーザーの代わりに払ってくれている。
特にGMOコインには取引所があるため、ユーザーは手数料を抑えながらコインを買って無料で送金できるので、海外取引所やメタマスクに送金するために利用している人も多いと思います。
GMOコインでトレードをせずに、海外取引所でトレードするためにGMOコインを送金専用として使うユーザーが大半になるのは、GMOコインにとっては送金手数料を無料にすることが。。
送金制限を始めた理由は、そのあたりの事情もあるのかも知れませんね。
ちなみに韓国では、来月2022年3月のトラベルルールの導入から、KYC(本人確認)をしていないウォレットの送金を禁止する可能性を示唆した記事が話題になりました。
Korean Gov: I’m going to prohibit withdrawals from Korean exchanges to non-KYC’d wallets like Metamask by March 2022.
— Ki Young Ju 주기영 (@ki_young_ju) December 10, 2021
Degens: So no more DeFi, NFT, DAO for Koreans? 😞
Korean Gov: No exceptions. Every blockchain wallet must be KYC’d.
Nice job Korea!https://t.co/i4Hicr9pEO
12月17日に行われた金融審議会「資金決済ワーキング・グループ」(第4回)の説明資料には暗号資産の送金制限に関する記述はありませんでした。